【観戦記】21年第9節:浦和 1-0 徳島 ~ 手強すぎる自分の遺産の弱点を突いての辛勝
リカが4年をかけて作り上げてきたチームは今の浦和には手強すぎた上に、試合開始早々武田負傷のアクシデントも重なって前半は苦戦。しかし西川のスーパーセーブでなんとか苦境を凌ぎ、後半徳島の弱点=セットプレー一発で先制した後はそのまま難なく逃げ切り勝ち。苦しい試合展開、試合内容で文字通りの辛勝でした。
《スタメン》
・共に前節から中3日。但し、浦和はその次の試合まで中6日あるのに対し、徳島は中2日でリーグ戦C大阪戦を控えており、この差がスタメン選考に影響したかも。
・浦和は前節から柴戸→敦樹とスタメン一人だけ入れ替え。試合後の記者会見によれば、柴戸は「この試合に出られる状態かどうか、ギリギリのところでした」だったようです。
・徳島はCB田向→鈴木大、CH岩尾→藤田とスタメン二人入れ替え。チームの中核たる岩尾をベンチスタートにしたのは驚きました。
・徳島との対戦は2014年以来7年ぶり。「さすがにこの時に対戦した選手は誰も残ってないやろ」と思っていましたが、今はサブGKの長谷川がこの頃は正GKとして出場してきました!! なお岩尾が徳島に来たのは2016年で、滅茶苦茶昔から徳島にいた訳ではなくほぼリカチルドレンでした。
・浦和は最後の徳島戦から西川・槙野・宇賀神・興梠と4人残存していて、うち二人が今なおスタメン出場(苦笑)。
《試合展開》
・立ち上がりはどちらがボールを握っているとも言えない五分五分の内容でしたが、7分武田にアクシデント。ボールを奪い返そうと後方から左SBジエゴに絡みにいった際に左足を捻ってしまった模様。
・武田は担架に乗ったまま退場となったものの、あまりにも早い時間帯でのアクシデントだったためか浦和は交代選手の準備に時間がかかり、杉本が投入されたのは11分になってから。その間浦和は4-4-1の守備ブロックで我慢しようとしてはいましたが、その間に渡井にアーク付近から際どいシュートを撃たれてヒヤリ。
・杉本投入後、浦和は杉本1トップ&武藤IHの4-1-4-1に戻したようですが、これがまるで機能せず。今の4-1-4-1はエリートリーグ札幌戦での「武藤ゼロトップ戦術の発見」を契機に出来たシステムなので、そもそも急に投入された杉本に武藤のような動きを求めるほうが無理があるというか、杉本1トップの4-1-4-1の練習をやる時間もなかったような・・・
・よって記者会見でも質問があったように「敦樹をIHに上げてアンカーに柴戸を入れる」ほうがベターだと誰もが思ったでしょうが、そこで痛手だったのが試合後に明らかになった「そもそも柴戸は長時間使える状態ではなかった」こと。悪い時には悪いことが重なるものです。となると、杉本&武藤の2トップ+小泉&敦樹の2ボランチで4-4-2が次善の策だったという気もしますし、実際途中からその形に変更したようですが、すべては後の祭り。
・浦和は前からボールを奪いに行っても簡単に交わされ、やむなく4-4-2の守備ブロックを敷いて深い位置でなんとかボールを奪い返してもそこからのビルドアップがうまくいかない。特に右サイドからのビルドアップはすぐに相手に引っかかってしまったように見受けられました。端的に言えば徳島は岩波にボールを持たせるように追い込んで、岩波をボールの奪いどころに設定していたような感がありあり。
・34分には自陣奥深いところで岩波から武藤への縦パスが藤田にカットされたところから絶体絶命級のショートカウンターを食らってしまいましたが、どフリーでボックス内に飛び込んだ宮代のシュートを西川がビッグセーブ!!
・さらに39分にはロングカウンターで浦和右サイドでいとも簡単に徳島にボールを運ばれ、最後は藤原のシュートを浴びてヒヤリ。しかし、ここも西川がセーブ。
・ショートパスが上手く繋がらないせいか、浦和は途中からロングボールを多用し出したように見受けられましたが、杉本が落としたボールを味方が拾えないので、これまたなんら問題解決に繋がらず。
・ところが不思議なもので、前半も残り5分足らずになってから浦和が突如徳島を自陣深くに押し込んで大反撃。43分山中の高い位置でのパスカットから西がクロス→飛び込んだ武藤ヘッドがバーを直撃!!45分には関根のクロス→ファーで明本ヘッド。さらにATにはCKの流れから武藤シュートのこぼれ玉を拾った明本に決定機がありましたが、ここはGK上福元が好セーブ。この大攻勢の時間帯は西が珍しく高い位置に張り続け、代わって小泉が後方に下がっている場面が目立ちましたが、相手の出方を見てなんらかの修正が入ったのかも。
・徳島は後半頭から垣田→河田、鈴木大→岩尾と2枚替え(岩尾がCH、藤田がCBへ)。垣田を下げたのはこの後中2日でC大阪戦を控えているため試合展開には無関係な予定通りの交代だと思ったのですが、実際は「前半に接触があって、少し違和感があるということで交代」だった模様。
・後半に入ると浦和のプレスや球際での強度が目に見えて上がり、それでも徳島から高い位置でボールを奪うには至りませんでしたが、前半ほど徳島に自由にボールを保持される場面はなくなり、浦和がボールを持つ時間も増え始めました。ただ56分右サイドで岩波があっさり河田に入れ替わられ、逆サイドの渡井に展開されてしまう危ない場面も。
・五分五分ないし浦和やや劣勢の戦況を一変させたのはセットプレー。60分小泉ショートコーナーから山中のクロス→関根ヘッドという形でしたが、試合後の関根会見によればこれは練習通りだったとのこと。マンマークで守る徳島に対して槙野・岩波・杉本と高さがある選手は誰もクロスに飛び込まないどころかボックスから遠ざかるように動き、小さい選手に狙わせるとは!! 関根のマークの外し方も見事でしたし、さらにもちょっと後ろに下がりながらヘッドを決める辺りもさすが。そういえば鹿島戦の幻のゴールもヘッドでした。
・先制された徳島は63分藤原→杉森、72分鈴木徳→小西(負傷による交代)、81分渡井→浜下と矢継ぎ早に選手を代えたものの、浦和も激しい、激しすぎるプレッシング&プレスバック、さらには一対一での厳しい、厳しすぎる当たりでなんとか対抗。カウンターを食らいそうになった場面ではスライディングタックルで難を逃れる場面も。82分敦樹のタックルにはスタジアムから万雷の拍手が。
・終盤は自陣で守備ブロックを築いて防戦一方。西が珍しくイージーなトラップミスを犯すなど疲労の色が濃い選手も散見されましたが、リカが動いたのはなんと85分になってから。浦和の前プレを交わされて、浮いた位置にいるFWへ深い位置からズバッと縦パスを通されてしまう場面が目立ちました。CBに入ったはずの藤田がなぜかちょろちょろ前方に進出してくるのも厄介でしたが、浦和は押し込まれてからの守備が実に粘り強く、危なそうな場面もシュートブロックしまくりで、先制後はなんだかんだと徳島に決定機を与えず、そのまま逃げ切り勝ち。
《総評》
・いやぁ、さすがにリカが4年間かけてじっくり練り上げてきたチームは、チーム始動から半年足らずの浦和には手強すぎました。しかも試合開始早々武田のアクシデントで、最近手応えを得たばかりの「武藤ゼロトップ」システムを諦めざるを得なくなって、浦和は一層劣勢に。34分の決定機を宮代が決めていたら浦和はそのまま負けていた可能性は極めて高かったと思います。
・ところがハーフタイムを待たずに修正して前半終了間際に猛攻を仕掛け、後半セットプレーで先制した後は徳島にさしたる決定機を与えずそのまま逃げ切り勝ち。前後半を通じて徳島にボールを握られた上に、先制後浦和に追加点を取るチャンスもなかったので、リカが思い描く理想図とはほど遠い試合内容でしたが、たとえ不出来であろうともなんとか勝利をもぎ取れるようになった辺りは率直に評価して差し支えないでしょう。
・徳島は守備陣の強度が足りないので、徳島にボールを握られるのを全く苦にせずにハイボールを多用して力任せにゴリゴリ押してくるチームが案外苦手。J2優勝した昨年も福岡にダブルを食らった上に今年も負けています。ゆえにパワー系の外国人FWがいない浦和といえどもセットプレーはチャンスだろうと予想していましたが、当然ながらその弱点をリカは熟知しており、スタッフの手助けもあって事前に仕込んだ形で見事にゴールゲット! しかも相手の意表を突いて小さい関根に決めさせるとは。
・また「優位なポジションの取り合い」みたいな綺麗ごとを延々と繰り広げていても全く埒が明かないどころか、徳島とは完成度の差がありすぎてジリ貧に陥るのは明らかなので、後半は強度勝負みたいなある意味泥臭い形に持ち込んで戦況を立て直したのも高評価。
・ただ急に武田を欠いて「武藤ゼロトップ」を放棄した後の機能不全が顕著すぎたは懸念材料。そこで今日のエリートリーグ水戸戦で負傷した武田の代わりになりうる選手の発見があるのか、あるいはまた別の戦術を試すのか。いずれにしても前回のエリートリーグ札幌戦で結果を出した面々が突然次のリーグ戦からスタメンに抜擢されて、そのまま結果を出し続けているだけに、現在出番を失っている選手達も奮起してくれることでしょう。
・前半優勢だった徳島はビルドアップこそ巧いのですが、良い形でFWにボールが入って前を向いてもそこから眼前に控える相手守備陣をぶち破れるだけの火力が欠けていました。特にその火力不足はビハインドに陥った後半顕著でした。ゆえに、徳島が相手にリスペクトされ、相手ががっちり守りから入るようになると勝ち点を延ばしにくくなるかもしれません。
・でもリカの遺産は実に強固。コロナ禍を受けてらポヤトス新監督の入国が遅れに遅れ、やむなく甲本ヘッドコーチが開幕から指揮を執っていますが、多少「リモート監督」の指示があるとはいえ甲本ヘッドコーチはものの見事にリカの遺産を活かしていました。一方ミシャの遺産をわざわざ木っ端微塵にした堀さんとはなんだったのか・・・
・また甲本ヘッドコーチが大善戦しているがゆえに、ボヤトス待望の新監督がかえって不安材料と化しているような気も(苦笑)。下手に自分の色を出して遺産をぶち壊す、あるいは上手く噛み合わないなんてことはよくある話ですし。
《選手評等》
・MOMは文句なしに西川。繰り返しになりますが、前半のビッグセーブがなかったらこの試合は負けていた可能性が高かったかと。終盤得意のロングフィードが高い位置にいた西に通る見せ場がありましたが、西が珍しくトラップミスして決定機に繋がらず。
・突然の早期投入で戸惑いもあったでしょうが、全く試合に入れずに浦和大迷走の主因になってしまった杉本。攻撃面では最後まで良いところがありませんでしたが、そこで「今日はインケツの日や!!」と悟ったかのように気持ちを切り替えて、後半猛烈な前プレ&プレスバックで守備面でなんとか貢献しようとした辺りは評価できます。リードしている以上それで十分。
・一方、最後まで興梠に出番がありませんでしたが、前節清水戦の出来を見ると興梠は未だコンディションが整っていないのか、強度が高いプレッシングが出来ない模様。それゆえリードしている局面での興梠は見送られたものと思われます。興梠もエリートリーグで90分出場してコンディションをを上げてほしいところ。、
・関根はもう26歳で結婚もしているのに、なんで終盤無意味に熱くなって藤田と小競り合いを起し、しかもその後逆サイドまでボールを追っかけていってイエローをもらうという謎の行動をとったのかなあ? 昨年も愚行を犯して大槻監督に懲罰的交代を命ぜられ、次の試合ではベンチ外になっていたような。
・一方もうATなのに明本が必死でドリブルで持ち上がり、しかも強靭な体幹で相手を吹き飛ばしながらさらに前へ進んで陣地と時間を稼ぐプレーって、実に浦和保守本流好み!!
・岩波も立ち上がりは珍しく長い距離を自ら持ち運ぶなど苦手なことをやろうとしていたんだよあ・・・周囲もミスを恐れずに岩波にチャレンジさせているようですし・・・ でもはっきりとした弱点なのも確か。CBからの縦パス精度は徳島と差があり過ぎて参りました。
-----武藤-----
明本-小泉--武田-関根
-----敦樹-----
山中-槙野--岩波--西
-----西川-----
(得点)
60分 関根
(交代)
11分 武田→杉本(負傷による交代)
85分 武藤→柴戸
90+5分 関根→宇賀神
-----垣田-----
藤原---渡井---宮代
--鈴木徳--藤田---
ジエゴ-福岡-鈴木大-岸本
-----上福元----
(交代)
HT 垣田→河田(負傷による交代)
HT 鈴木大→岩尾(岩尾がCH、藤田がCBへ)
63分 藤原→杉森
72分 鈴木徳→小西(負傷による交代)
81分 渡井→浜下
| 固定リンク