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2021.04.26

【観戦記】21年第11節:浦和 3-2 大分 ~ 絶妙の選手交代で辛うじて再逆転勝ち!!

 超早い時間帯に先制したもののその後の試合運びは芳しくなく、前半のうちに逆転されるテイタラク。しかし後半にリカが繰り出した交代策がハマリにハマって一気に再逆転。ATの大ピンチの連続も西川の好守で凌ぎまくって辛勝。同じ辛勝でも内容では大分に完敗していた昨年と比べれば今年は内容も互角。名将片野坂監督相手に昨年より確実にチーム力が上がっているのを実感した一戦でした。

《スタメン》

・共にルヴァン杯から中3日。浦和はルヴァン杯から岩波と杉本を除く9名スタメン入れ替え。もっともリーグ戦前節C大阪戦と比べると、敦樹に代えて杉本を入れ替えただけ。ベンチに万一の時にはCBも出来る阿部が戻って来たためか、ユースの工藤はようやくお役御免。

・大分はルヴァン杯から香川、小林裕、小出、ホープを除く7名スタメン入れ替え。またリーグ戦前節柏戦との比較でも4名入れ替わっており、特にGKポープを抜擢したのが目を惹きました。ポープは昨年岡山の正GKで、大分ではこれがリーグ戦初出場。

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《試合展開》

・浦和の布陣は徳島戦武田の負傷を受けて急遽採用し、しかも全く機能しなかった4-1-4-1ではなく、割とはっきりした武藤&杉本の2トップによる4-4-2だと思ったのですが、試合後のリカのコメントでは「杉本健勇をよりFWに近い、シャドーで起用しましたけれども」とあって4-4-1-1のイメージだったのかも。

・一方大分は例によって基本3-4-2-1、守備時5-4-1。

・試合は相手の出方を見定める暇もなく、3分いきなり浦和が先制。小泉からのロングボールをボックス内で杉本が落とし、山中のクロスに対して後方から西が走り込んでボレーシュートという美しい形でのゴールでした。

・ところが誠に残念なことに前半良かったのはこれだけ。その後5分くらいは浦和がボールを支配していたものの、10分くらいから逆に大分がボールを握り始めて徐々に試合は大分ペースに。

・浦和は盛んに前からプレスをかけるものの全くと言っていいほどハマらず、大分は楽々と浦和のプレスを交わしてビルドアップ。ロングボールを蹴ってCF伊佐に浦和最終ライン裏を狙わせ、伊佐がキープしたところから山中の裏をシャドー等に突かせる「カタノサッカー」っぽい攻撃も垣間見られました。

・一方浦和は最後尾からビルドアップしようにも大分の厳しい前プレに妨げられて四苦八苦。なんとかサイドにボールを持ち出した頃には大分がすっかり5-4-1の堅陣を築き上げていてどうにもならず。無理に縦パスを入れたらそこは大分のボールの狩り処と化す始末で、ビルドアップ能力(特にCB)は徳島どころか大分にも及ばないことを痛感。武藤も杉本も巧くボールを引き出すわけでもなく、逆に相手最終ラインの裏を脅かすわけでもなし。

・球際でも大分に完敗。リカは試合後「先制点が入ったことによってリラックスが出てしまった、少し緩んでしまったところがあるのかなと思いました」とボヤき、小泉も「チーム全体としても個人としても緩さみたいなものが出てしまって」と語っていて、その辺りが球際の弱さに表れたのかも。

・24分の失点は左右から波状攻撃を食らったところから。最後は町田のシュートが槙野に当たってコースが変わってしまう不運といえば不運なものでしたが、小林成の浮き球パスを伊佐と競り合った槙野が弾き返せず、さらにそのこぼれ玉への浦和の選手達の反応も鈍く、この辺りも「緩さ」の表れなのかも。

・その後も浦和はただボールを持っているだけでなんら攻め手を見出せず、試合はやや大分ペースのまま時間が徒過。41分の失点は結局のところ浦和のトホホすぎるビルドアップ能力が招いたもので、大分の鋭い前プレに抗しきれずに槙野がぽーーんと縦に蹴ったボールをCB坂が難なく回収したところから。CH下田はどフリーで縦パス。その縦パスを槙野がカットしたもののコントロールしきれずに町田に奪われて町田がズドン。

・DAZNのスタッツでは前半の浦和のボール支配率は59%もあったようですが、試合を支配しているのが明らかに大分。試合前の記者会見でリカは「私たちがボールを持てば彼らはポゼッションできません。どちらがボールを保持するのかというところが試合のポイントになってくると思います」と語っていましたが、こういう形でボールを保持する羽目になるとは思わなかったでしょうに。

・そこでリカは先制場面以外では全く機能していない杉本を前半だけで諦めて敦樹を入れ、小泉をトップ下に入れた4-2-3-1へ布陣変更(リカのコメントでは4-4-1-1のシャドーを入れ替えたみたいですが)。これは中盤でボールを繋げる人数を増やしてひとまずビルドアップを安定させたいという意図でしょう、たぶん。

・びっくりしたのはリカが60分に山中を下げて汰木を入れ、明本を左SBへコンバートしたこと。山中は前半からその裏を狙われ続けた上に、さらに57分にタッチ際で松本にボールを奪われて大ピンチの契機となってしまったのがリカに交代を決意させたのでしょうが、ちょっと前までは山中が浦和の攻撃の軸であり、頼みの綱だったはず。ビハインドなのにその山中を外せるようになるとは!!

・片野坂も58分、65分とイエローをもらったCB小出を含めて4選手を交代。序盤からハイプレスで疲弊した選手を入れ替えて運動量を補充した意図と思われますが、それでも大分の運動量低下は否めず、浦和は徐々に高い位置でボールを回せるようになりました。そこでリカはさらに69分武藤→興梠、関根→達也と2枚替えでさらに攻勢。依然運動量こそ物足りないものの、ボールの引き出し&キープが巧い興梠投入で浦和の攻撃は一段と勢いを増しましたが、なおも決定機には至らず。

・同点弾は意外な形から。75分小泉FKの流れから。岩波のふんわりクロスはいったんGKポープに弾かれたものの、こぼれ玉を拾った小泉がこれまたふんわりクロス。これがファーにいた槙野にピタリと合い、槙野が倒れこみながらも角度が無いところから見事ゴールゲット!!

・こうなると浦和が俄然押せ押せ。埼スタは太鼓と拍手しかないのに異様な盛り上がり。こんなに盛り上がる埼スタって久しぶりだよなぁと思わず遠い目になりそうな中で飛び出したのが82分の達也の逆転ゴール。

・浦和が自陣でのパス回しから速攻を披露。槙野の縦パスを汰木が相手を背負いながらタッチ際を激走する明本へフリック。長い距離を走った明本の折り返しを小泉は撃ち切れなかったものの、これまた長い距離を走った達也がこぼれ玉に詰めてゴール!! 皮肉なことに「相手を自陣に引き込んでからのカウンター」というカタノサッカーっぽい形でのゴールで、最後に詰めたのが大分でブレイクした達也だったのは偶然ではないでしょう。

・こうなると後半は浦和が良い形で大分からボールを取り上げている以上、浦和の勝利は揺るがないと思ったのですが、大分が同点に追いつかれた直後に投入した長身CF長沢目掛けての単純極まりないロングボール攻撃が効きに効いてATに3度も大ピンチ。90+3分には長沢が落としたボールに井上が反応するも西川が間合いを詰めてセーブ。

・リカはたまらず90+6分に小泉に代えて阿部を投入して「背の高さ」を補充するも、なおもGKをも加えた大分のパワープレーの脅威に悩まされ続け、90+6分には大分CKから長沢ヘッドが枠を襲うも西川がなんとか左手一本でセーブ。さらにそこで得た大分CKから最後は長沢が左足を振りぬくもシュートは無情にも西川の正面。こぼれ玉を西川ががっちりキャッチして直後に試合終了。後半はエンターテイメントとして最高の出来と評しても差し支えないでしょう。

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《総評》

・超早い時間帯に先制したもののその後の試合運びは非常に低調で、ちょっとした不運も手伝って逆転されてしまった浦和。しかし、その悪い流れを後半頭からの相次ぐ選手交代で見事に断ち切って再逆転に成功したリカ将。いやはや誠に恐れ入りました。

・リカに好感が持てるのはエリートリーグなりルヴァン杯なりでの活躍を評価し、続くリーグ戦でその評価を「選手起用」という誰にでも判る形で表に出してくるところ。こんなに判りやすい監督はいそうでなかなかいない。この試合では杉本スタメンこそ大失敗に終わりましたが、達也も汰木も試合の流れを変え、さらに3点目に絡む形で監督の期待に見事に応えました。負けているのに交代枠余りまくりで終わったC大阪戦を思えば、続くルヴァン杯横浜C戦で汰木&達也が使える手応えを得たのが大きかったのでしょう。

・こうなると今はリーグ戦での出番がない選手達も腐りようがなく、与えられた出番で目一杯頑張らざるを得ない。今の浦和は層が厚いとは言い難い陣容ですが、競争が激化するのは非常にいいことです。

・また先述のようにちょっと前までは攻撃面で絶対的な存在だった山中を、この試合では「攻撃面でのプラス寄与<<守備面でのマイナス寄与」と判断したかのようにあっさり見切ったのが見事でした。そして明本を左SBへ配転。これもルヴァン杯柏戦での試行が活きており、明本は見事3点目に大きく貢献。

・一方前半の出来が低調だったのも確か。リカは試合後「狙いとしては、使っていきたいスペースを有効に使えていけなかったという部分で前半に難しさがあった」「ただ、相手の形が普段と違うこともありますし」と語っていますが、具体的にどの辺を指しているのか理解しかねるのでこの辺は野良の戦術くんに委ねます。とにかく負けたC大阪戦とは対照的に良い形でボールが握れず、「相手に何もやらせない」姿にはほど遠かったのは確か。

・リカはJ2時代に「カタノサッカー」を経験済み。前半のあんまりな出来を見るとひょっとして「カタノサッカー」が苦手だったのかなと思って調べたところ、意外なことに2017~18年の4度の対戦で全部完封勝ち。大分は2018年に2位でJ1に再昇格しているのでかなり強かったはず。うーん、実に不思議。

・逆に大分はなんで降格圏にいるのかさっぱり判らない、実に手強い相手でした。昨オフに岩田、鈴木、そして達也等々と主力をごっそり抜かれはしたものの長年取り組んできた「カタノサッカー」は全く色褪せず。ただATに3度もあった決定機を一つも決められないのが今の苦境を招いているのでしょう。もっとも「決定機はアホほど作るがなかなか決まらない」のは昨年も同様で、さらに言えばCF藤本を失ってからずっとそんな感じなのかも。

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《選手評等》

・MOMは文句なく小泉。3得点に絡んでいる上に、終盤に魅せた両足を巧みに使ってくるくる回りながらの鬼キープには痺れました。もはや小泉は「超廉価版イニエスタ」。激安な上にイニエスタと違ってやたら走り、しかもイケメン!! またこの試合ではわずかに出し先と呼吸が合わない、あるいは相手に引っかかってしまうラストパスを連発していましたが、あれがバシバシ通るようになるともう別格の存在になるでしょう。おそらく来年は背番号10でしょうな、本人が嫌がらなければ。

・やたら走る小泉とは対照的に西の走行距離は相変わらずCBと大差がないのですが、だからといって仕事をしていない訳ではないどころか、肝心なところには必ずいます。走行距離は凄いけれども実質的にほぼ消えている選手が昔新潟にいたような記憶がありますが、あれと好対照。まさにサッカー脳の差。

・終盤浦和がボールを握れるようになると、西がCHっぽい位置にいて、往々にして柴戸が右サイドを埋めていました。攻撃能力からすればそれが正しい役割分担で、このコンビはめっちゃ面白い。性格的には正反対っぽいのですが(苦笑)。

・強風のためか、珍しくロングキックが直接タッチを割る場面が二度あった西川でしたが、ATに神がかった大活躍。ルヴァン杯横浜C戦で彩艶のビルドアップ能力を見ると、ひょっとするとリカの嗜好から西川と立場が逆転する日は案外近いかも?と思ったのですが、このビッグセーブ連発を見せられるとリカは良い意味で悩ましいでしょうなぁ。

・3点目、どう見ても興梠のほうが達也よりこぼれ玉へ詰める距離が短いのに、達也に追い抜かれてしまう(つД`)

・長沢ってG大阪時代も仙台時代も面倒なことは面倒なもののあんまりやられた記憶がないのですが、この試合では思いのほか脅威でした。でも結局のところ「面倒なことは面倒だがやられてはいない」といういつも通りの結果に。

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---武藤--杉本---
明本--------関根
---小泉--柴戸---
山中-槙野--岩波--西
-----西川-----

(得点)
3分 西
75分 槙野
82分 田中

(交代)
HT 杉本→伊藤敦
60分 山中→汰木(汰木が左SH、明本が左SBへ)
69分 武藤→興梠
69分 関根→田中
90+6分 小泉→阿部

-----伊佐-----
--小林成---町田--
香川-下田-小林裕-松本
-三竿--坂---小出-
-----ポープ-----

(得点)
24分 町田
41分 町田

(交代)
58分 伊佐→髙澤
58分 小出→刀根
65分 松本→井上
65分 香川→高畑
76分 小林成→長沢

 

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