中2日&中3日の3連戦という過密日程を考慮して、リカは前節湘南戦からスタメン9名を入れ替える大胆なターンオーバーを仕掛け、案の定序盤はぐだぐだ模様。しかし時間の経過と共に調子を上げる毎度毎度の差し馬体質で、終わってみれば状態が非常に悪い柏相手に完勝でした。
《スタメン》
・浦和は前節湘南戦から中2日、さらに中3日で福岡戦が続く過密日程のため、前節から岩波と敦樹を除くスタメン9人を一気に入れ替え。奇しくもスタメンは敦樹以外は全員昨年から在籍している選手でした。
・前節ミス連発の彩艶はなんと一気にベンチ外に。これについては様々な憶測が流れましたが、実はリカの判断でもなんでもなく、「クラブからJリーグに必要なエントリー申請が行われていなかった」という手続き上の瑕疵によるものだったことが試合後に判明。しかもその瑕疵が判ったのが試合直前の15時くらいだったそうで、西川はともかく急遽呼び寄せられた塩田は「お疲れさまでした」としか言いようがないかと。
・柏は前節広島戦から中3日ですが広島からの長距離移動付きなのでとコンディション面では浦和よりやや有利といった程度でこちらも過密日程のはずですが、スタメンは神谷→シノヅカと一人入れ替えただけ。と思ったら、アップ中に仲間が故障して急遽瀬川をスタメン起用したので結果的にスタメン2名入れ替えに。
・浦和移籍の噂が立った江坂は今節もベンチ外(苦笑)。

《試合展開》
・柏の布陣は意外にもルヴァン杯で試行した3-4-2-1ではなく4-4-2でした(FWは縦並びに近く、見ようによっては4-2-3-1)。リカも試合後「相手の立ち位置などを見ながら、想定していたものとは違ったところがありました」と語っていましたが、やはり柏の出方はリカにとっても予想外だったのかも。
・また立ち上がり早々柏は前から厳しくプレッシャーをかけにきて、2分宇賀神が深い位置から繋ごうとしてヒシャルジソンにカットされ、クリスティアーノに枠内シュートを撃たれてヒヤリ。
・ただその後はあまり前から厳しくは追って来ず、基本的に自陣高めの位置に4-4-2の守備ブロックを敷いてカウンター狙いに徹した感じ。10分にはドッジ→クスティアーノ→シノヅカと手早く縦に繋いで良い形を作るもシュートは枠外。
・もともとビルドアップに難がある柏はともかく、序盤は浦和のビルドアップも壊滅的で、双方攻めては簡単にボールを失ってしまう実に低レベルの試合内容に終始。
・ところがこのぐだぐだ模様を給水タイムで終わらせるのがリカの真骨頂。試合後の記者会見で「前半は相手のブロックの外に選手が降りてボールを受けようとして捕まるような場面が多かった。もう少し前で我慢できるようになるとより良くなると感じたが?」という質問が飛んでいましたが、端的に言えば興梠がわざわざ中盤に降りてくるのを止めさせたのか奏功したようで、給水タイム後はようやく浦和が安定的にボールを保持し出し、柏を自陣に押し込んで一方的に攻撃。
・28分デンの縦パスを受けた武藤から柏最終ライン裏へ浮き球パス→裏抜けしかかった興梠がヒールパス→後方から汰木ボックス内へ突入というこの試合初の決定機を作りましたが、汰木のシュート精度がががが。
・38分敦樹が自陣深い位置でヒシャルジソンを押し倒すような形でボールを奪ってそのままドリブルで長い距離を走り、いったん武藤に預けてさらにボックス内へ突入して武藤からの折り返しを自らシュート。
・デン→山中への大きなサイドチェンジからの攻撃の形も何度か作り、44分山中クロスをGK佐々木が弾き切れず、武藤がどフリーでボレーシュートを試みるも上手くミート出来ず。
・後半に入っても浦和ペースで試合は進み、50分デンのスルーパスで興梠が裏抜けに成功するもシュートは枠を捉えきれず。
・決定機は何度も作るものの1点が遠いという状況に痺れを切らしたかのようにリカはとうとう61分興梠→ユンカー、武藤→小泉の2枚替え。投入直後の小泉→敦樹→ユンカーの決定機こそ逃しましたが、64分山中のクロスが大南に当たってファーの関根の元へ。関根が溜めたところで後方から宇賀神が見事なコントロールショットを決めて浦和がようやく先制。
・前半給水タイム以降殴られっぱなしの戦況にネルシーニョも全くの無為無策ではなく3-4-2-1への転換を準備していたようですが、運が悪いというか何というか、アンジェロッティに代えて山下を投入したのはなんと失点直後。さらに一挙に2枚替えではなく4分遅れてシノヅカに代えて細谷を投入するという、絵に描いたような戦力の逐次投入ぶり。
・浦和は柏のフォーメーション変更で守備に混乱が見られそうになったところで運よく給水タイムに。77分デンのクリアミスをバイタルエリアで瀬川に拾われる危ない場面がありましたが、瀬川のシュートをデンがブロックする自作自演(苦笑)。その直後のCKで大南にヘッドを許すも西川がキャッチ。
・フォーメーション変更後も基本的に柏の攻撃は最前線へのロングボール攻撃に終始しており、浦和両CBが難なく対応。とにかくアクシデントによる失点だけが怖いという状況下でリカは80分汰木→明本、敦樹→金子と代えて運動量を補充。
・そして81分山中CKをニアの金子が上手く方向を変えたのが奏功したのか、ファーでどフリーの柴戸へ通り、柴戸が「ふかさないようにゴール方向に飛ばすことだけを考えて打ちました」という言葉通りに地面に叩きつけるかのようなシュートを決めて試合を決定づける2点目を奪取。
・柏は反撃らしい反撃もできず、浦和はGK佐々木が目の前の小泉へプレゼントパスしてしまったことからユンカーに絶好機がありましたが、これをユンカーはなぜか決められずに試合終了。

《総評》
・試合内容では相手をボコボコにしたも同然だったにも関わらず、自爆ボタン連打で下位の湘南にまさかの敗戦。今節もまた下位チームとの対戦なので取りこぼしは許されない状況でしたが、残念ながら湘南戦から中2日と厳しい日程。さらに中3日で次節福岡戦が続くという過密日程ゆえ選手の大幅な入れ替えは避けられない。
・メンバーを大幅に入れ替えると必然的にチームのクォリティーは格段に下がってしまう。しかも小泉がいないとビルドアップにたちまち窮してしまうのは過去何度も実証済み。
・よってリカは「チームのクオリティーが落ちるのは承知の上で、大幅に入れ替えたメンバーで勝ち点3を奪取する」という難しい課題に挑み、その課題を見事に達成した以上、リカが「すごくいい試合ができたと思います」「全員がすごくいい試合をしてくれたと思っています」と手放しで喜ぶのも当然でしょう。
・序盤は「小泉抜き」のチームにありがちなビルドアップが壊滅的なぐだぐだ模様でしたが、それも給水タイムまで。その後は小泉抜きでも決定機を何度も作り、ただただ1点だけが遠いという4月までの「ユンカー抜き」の状況まで持って行けたのは何より。リーグ戦のみならず、ルヴァン杯&天皇杯の勝ち抜けによって生じる過密日程をこなすためにも選手層の厚みを増しておくのはとにかく大事。この試合ではリーグ戦での出番が減っている宇賀神・山中、リーグ戦初出場のデンがリカに良いアピールが出来たかと。
・もっとも柏の状態が相当酷くて助けられた側面も。とにかく攻撃が酷すぎ。1年間もオルンガ目掛けて蹴っ飛ばせばなんとかなるサッカーをやっていると、オルンガ離脱後はこうなってしまう。ビルドアップという概念すらなさげ。
・守備も2トップがあまり守備しないので、2トップの脇からデンはもちろん岩波にすらボールを持ち運ばれてしまう。こうなると後ろの選手はたまったものではないでしょう。
・広島戦もそんな感じでしたが、柏は相手に一方的にボールを支配されるのが常態化していて、カウンター狙いと言いながらも思うようにボールを狩れないから、時間の経過と共にメンタルが削られてゆくのでしょう。そして何かの拍子に先制されるとぽっきり心が折れ、反撃らしい反撃も出来ないまま試合終了。選手どころか日立台の雰囲気を含めて、そんな印象を受けました。
・試合後の瀬川のコメントがなかなか凄まじくて「この前の広島戦に関しては、前の選手が歩いていることが多くて、あんなに押し込まれたけど、後ろの選手が70分過ぎまで0で抑えてくれていた一方で、セカンドボールとかを全然拾えていなくてバラバラ、人任せだと感じていました。」とチームの惨状を思わず吐露。
・もう柏はネルシーニョを諦めるしか打つ手はないと思いますが、なんと御年70歳のネルシーニョと2025年までの長期契約を結んでいるので違約金がバカ高くて更迭したくても出来ないとの噂が。なんかJALを潰す一因になった11年にも及ぶ先物為替予約を思い出させるようなフロントの不手際・・・
・なおアウェーでの柏戦での勝利は2016年以来なんだとか。引き分けがあったり、そもそも柏降格で対戦がなかったりしたので鳥栖ほど苦手意識は無かったけど。

《選手評等》
・ルヴァン杯&天皇杯での試運転を重ね、ついに今年リーグ戦初出場にこぎつけたデン。自分で持ち運んでFWを一枚剥がして縦パスを入れる能力はやっぱり今のCBではダントツ。50分の興梠へのスルーパスなんて、あんな芸当が出来るCBは遠藤以来かと。でも縦パスが通らずにカウンターの契機となるリスクも抱えていますし、また大きくクリアせずに繋ごうとする意識も高いのでそこでやらかすこともあります。そんなリスクをリカはどこまで許容するかが今後の見どころ。
・西がいる上に酒井も加わって右SBは控えでベンチ入りすることもおいおい難しくなると危惧された宇賀神。ルヴァン杯でもあまり良いところを見せられずじまいでしたが、なんだかんだと言われながらもずっと浦和で生き残ってきた宇賀神の適用能力は伊達ではありませんでした。山中も相手を押し込み続けている=あまり守らなくていい状況ならめっちゃ活き活き。というかボコボコにされている峻希がもう哀れで・・・
・彩艶がクラブの不手際で急遽ベンチ外になったため、リーグ戦で久しぶりにスタメン出場の西川。ルヴァン杯&天皇杯で出場したばかりなので試合勘がない恐れもなく、湘南戦でミスを連発した彩艶から正GKの座を奪回すべく頑張ってくれるだろう!!と思ったのですが、やはりルヴァン杯同様盤石の出来とは言い難い様子。40分ロングボールをキャッチし損ねた場面は相当ヤバイかと。
・武藤は試合勘を完全に失っているのか、肝心なところでボールが足につかない場面がチラホラ。興梠もボールキープ能力やシュート体勢に持って行く能力が微妙に落ちているような・・・ FW陣では杉本が何かと槍玉に上げられ続けていますが、この二人も現状杉本と大差はないかと。

---興梠--武藤---
汰木--------関根
---敦樹--柴戸---
山中-岩波-デン-宇賀神
-----西川-----
(得点)
64分 宇賀神
81分 柴戸
(交代)
61分 武藤→小泉
61分 興梠→ユンカー
80分 汰木→明本
80分 伊藤敦→金子
90+1分 関根→田中
---アンジェ--シノヅカ--
瀬川-------クリスチアノ
---ドッジ--ヒシャルジ--
古賀-大南-高橋祐-峻希
-----佐々木----
(交代)
64分 アンジェロッティ→山下
68分 シノヅカ→細谷
74分 ドッジ→戸嶋
※写真は試合とは全く関係ありません。