【観戦記】21年第24節:浦和 2-1 鳥栖 ~ 驚愕のスタメン構成で辛うじて掴み取った勝ち点3
浦和は予想のはるか斜め上どころか、もはや異次元としか言いようがないスタメンを組み、試合内容も決して褒められたものではありませんでしたが、前節と違ってとにかく動ける選手を揃えたのが奏功。最後は鳥栖のあんまりなファウルの多さが勝敗の分かれ目に。
《スタメン》
・共に前節から中4日。浦和は興梠→大久保、関根→達也、柴戸→平野、宇賀神→酒井と前節札幌戦からスタメン4名入れ替え。新加入の平野と酒井をいきなりスタメンで使って来た上にショルツもベンチ入り。また小泉どころかユンカーもベンチ外なのにはびっくり。なお小泉は「ちょっと出られる状態ではないコンディション」とリカが試合後明言。
・一方鳥栖は酒井→山下、福井→白崎とスタメン2名入れ替え。白崎も8/11にレンタルで獲得したばかり。おまけにこれまた獲得したばかりの岩崎&小泉慶がベンチ入り。
・なお浦和がリーグ戦のホームゲームを浦和駒場スタジアムで開催するのは2009年年6月25日の神戸戦以来12年ぶり。その時に試合に出ていた選手で今も浦和にいるのは阿部だけです。
《試合展開》
・浦和の試合の入りは芳しくなく、4分江坂が自陣深い位置でボールを失ったのを契機に浦和右サイドを強襲されて小屋松低いクロス→山下に決定機を許すもここは西川が辛うじてセーブ。
・また浦和は明本を先頭にGKパクまで盛んに前からプレスを掛け回るものの、これまたハマっているようには見えず。この試合を通じて前ハメから上手くショートカウンターに持ちこめたのは10分島川の縦パスを平野がカットし、すかさず前方の江坂へ送ってシュートで終わった場面だけかも。
・さらに浦和は後方からのビルドアップを諦めたかのようにロングボールを多用。達也や酒井を縦に走らせて攻めるも、対面のCB大畑が案外手強くて簡単にクロスを上げさせてくれず。浦和の出来は良いとは言い難いが、鳥栖もボールを持たされる羽目になることを全く予期していなかったのか、4分の決定機以降は攻撃の形を作れず。
・給水タイムを挟んでようやく浦和がボールを握る時間帯が長くなり出し、36分槙野の意図したロングフィードなのかクリアなのか微妙な縦パスを江坂が胸でフリック→拾った明本がボックス内に突入してそのままゴール!!
・しかも明本に対峙した際にCB島川が傷んだ模様で、40分にファン・ソッコとの交代を余儀なくされるアクシデントもあって一気に浦和優勢に転じるかと思いきや、前半終了間際に飯野アーリークロス→小屋松フリックであっさり左サイドを崩されて山下の同点ゴールを許してしまいました。飯野の前方進出に対して西・槙野がズレれて対応したがゆえに出来た穴を小屋松が突く。この辺の鳥栖の連係は見事。
・後半はまたしても浦和がビルドアップに苦しむ展開。51分浦和のロングカウンターで達也のクロスをファーで大久保が折り返し、中で江坂が合わせる決定機があったもののシュートはGKパクのほぼ正面。
・CHのフィルターが弱い浦和は押し込まれる展開になるとどうにも守備が怪しく、58分には仙頭・中野嘉・小屋松とバイタルエリアで簡単にボールを繋がれた挙句に山下が際どい一発(バーの上)。続けて飯野クロスを中で中野嘉が合わせるもシュートははるか上空へ。
・金監督はここを勝負どころと見たのか、59分白崎に代えて小泉慶を投入してアンカーに据え、樋口をIHへ配転。そして61分には小屋松のボックス内突入の折り返し&樋口が中で潰れたこぼれ玉を山下がシュートを放つ決定機を掴んだものの枠を捉えきれず。良い時間帯に攻めきれなかった鳥栖は70分3枚替えを敢行するもさしたる効果はなく、給水タイムを挟むと再び戦況は五分五分に。
・そして勝敗を分けたのは鳥栖のファウルの多さ。特に途中投入の小泉慶は試合勘が全くないのか、投入直後に大久保にドリブル突破されそうになって思わず引き倒してしまい、いきなりイエロー。79分にはやはり敦樹に抜け出された挙句にユニフォームを後方から引っ張って倒すもここはなぜかイエローが出ず。さらに80分またしても大久保に抜け出されそうになったところを露骨に足を出して止めているのにまたしてもイエローなし。
・ここで得たFKからの流れで、ボックス周辺で双方ヘッドで折り返しを繰り返した末、中野嘉がボックス内で明本を蹴り飛ばしてしまい、目の前で見ていた木村主審はとうとう見逃しきれずにPKを宣告。江坂が決めて浦和が突き放しに成功しました。
・いつになく交代が遅いリカでしたが、PKをもらう直前に汰木&柴戸を投入したのが結果的に守備固めとして機能。最後はショルツまで投入して5バックに転じてなんとか逃げ切り勝ち。
《総評》
・五輪による中断明け初戦の札幌戦はスコア以上の惨敗。個人的には「中断期間での積み上げがないどころか内容は後退し、さらにそもそも闘えるコンディションではない」という印象を受けましたが、あれほどの惨敗を喫すると次の試合のスタメンは思い切った見直しがしやすいのは理解できます。
・しかし、ここまで極端な見直しをしてくるとは予想のはるか斜め上どころか、もはや次元が違うというか言いようがありません。試合前の記者会見で酒井やショルツの起用について質問された際にはリカは口を濁していましたが、酒井はともかく獲得したばかりの平野をいきなりスタメン起用するとは誰一人として予想していなかったでしょう。
・札幌戦はとにかく球際でしょっちゅう競り負け、終盤には動けない選手が続出するなど、中断明け初戦にも関わらずコンディションに疑問符つきまくりの選手が目立ちました。この試合の終了後に小泉のコンディション不良が明かされましたが、一応大原に顔を出しているけれどもコンディションが良くない選手が他にもゴロゴロしているのでしょう、おそらく。
・そしてリカが試合後「前からプレスをかけられる組み合わせを考えました」と明かしている通り、比較的動ける選手を並べた結果がこのスタメン。なんとか動ける選手を揃えた浦和は立ち上がりから前からガンガンプレッシャーをかけに行きました。
・この前ハメにはリカも満足し、試合後のインタビューでは江坂も手応えを感じている風ですが、個人的には些か疑問。試合後会見で金監督が「ほぼほぼボールはロストしていませんし、彼らの思いどおりの形で奪われたシーンも無かったと思います」と語っている通り、浦和の前ハメは結局のところGKパク・イルギュの巧みすぎる足技に屈し、決定機に繋がることはほとんどなかったという印象を受けました。
・また後方からのビルドアップは相変わらず壊滅的。札幌戦で良くなかったものが新加入選手をスタメン起用して劇的に良くなるわけがなく、鳥栖のプレッシャーが厳しいことも相まって、浦和はビルドアップを諦めたかのようにロングボールを多用する時間帯が結構あったように見受けられました。明本の先制点は槙野の長い縦パスがいきなり江坂に入ったことから生じたものですし。
・この浦和のロングボール多用には金監督も「浦和さんが思いのほか、長いボールを多用してきたことでそこでちょっとイレギュラーが起きてしまったりもしました」と少々困惑した様子。鳥栖がボール支配率で浦和をやや上回り、パス数では浦和を圧倒している試合展開を予想する人なんてまずおらんでしょう。
・鳥栖は平均的にはボール支配率が低いわけではありませんが、やはりどちらかといえば相手にガツンと当たってからのショートカウンターに持ち味があるチーム。積極的にボールを握って相手を押し込んで崩す指向のチームではないので、「ボールを持たされる」というまさかの展開に戸惑ったかもしれません。チームの出来、完成度に大差があったにも関わらず、試合内容はほぼ互角ないし若干鳥栖優位で推移したのは浦和の持ち味が出た試合ではなかったが、相手の持ち味もあまり出させなかった試合展開になったがゆえだと思います。どこまでリカが意図したかどうかは定かでありませんが。
・とはいえ、ビルドアップが壊滅的な浦和は当然ながらチャンスも少なく、シュート数は6対10と劣勢。決定機は明らかに鳥栖のほうが多く、金監督が「勝ちに値するゲーム」と評するのも判らなくもありません。しかし、同時に金監督が「チャンスを作るというところはわれわれの狙いどおりで持っていけますけど、最後はどうしても選手の質というところに委ねる部分しかないところもあります」と嘆くように決定機でシュートが枠に飛ばない、あるいはGKの正面に飛んでしまうのが鳥栖の泣きどころ。特にFW山下(苦笑)。
・そして勝敗を分けたのは鳥栖のファウルの多さ。中野嘉がボックス内で明本を蹴り飛ばしている(ボールをクリアしようとしたら視界外から明本が入って来て結果的に蹴り飛ばしてしまったようなもので悪質ではないのですが)ので紛うことなきPKですが、そのPKも鳥栖の自陣でのファウルによるFKからの流れ。なんで退場者が出ないのか不思議で仕方がないくらい鳥栖は汚いファウルが多くて参りましたが、最後の最後で天罰が下ったのでしょう、たぶん。
・札幌戦よりはかなりマシとはいえ依然課題山積な試合内容でしたが、なんだかんだと勝ち点3をゲット。新加入選手を無理やり使うという、一歩間違えればチーム崩壊に繋がりかねない大博打は大吉とは言い切れないものの凶ではなく、反撃の足掛かりを掴んだ一勝と評価していいかと。連戦連戦ゆえまとまった練習時間が取れず「コンビネーション確立は実戦の場で」というリスキーな形になってしまいましたが、コンディション不良の選手が順次復帰して来れば案外早く形になるのかも。
《選手評等》
・明本のFW起用は大当たり。栃木ではFWがメインだったので本人は違和感全くないのでしょうが、運動量が凄まじい上に体幹が強いせいかDFの当たりに全く負けず、思った以上にボールが収まるのにはびっくり。おまけに数少ない決定機を見事に決めた上にPKまでゲットと個人的には満点の評価。当然MOM。逆に最後まで出番なしの興梠、これでは3番手に転落するかも・・・
・江坂は2試合目にして早くも1ゴール1アシスト。得点はPKでしたが、アシストの価値がでかかった。新加入の前目の選手は早めに結果が出るととにかく嬉しいもの。
・平野のスタメン起用は大博打中の大博打でした。J1のプレスのスピード&強度に不慣れなのが丸わかりでしたし、守備時は全くフィルターになってないのには参りました。その反面前を向いた時のパス精度、パスレンジ、そして出し先の目の付け所には光るものがあり、リカがこのタイプのCHを欲していたのも納得。時間の経過と共に鳥栖のプレッシングには慣れた風でしたし、J1で鳥栖よりプレス強度の高いチームはそんなにないので自信ついたかも。
・浦和で初披露目の酒井。立ち上がりいきなり酒井に対してファウルを犯した鳥栖の選手のほうが傷んでしまうという「名刺代わりの一発」でフィジカルモンスターぶりを発揮。終盤は明らかにお疲れで、かつ個人の出来はともかく連係はまだまだでしたが、無理やりすぎる浦和デビュー戦としては上出来でしょう。西川は橋岡以来久しぶりにロングキックのターゲットが出来てちょっと嬉しそう。
・また試合後に「タクが運んでくれることによって相手が食いついて、そこからどんどんスペースが生まれてきますので、そうしてくれと伝えました。実際にそうすることで試合運びは変わりましたし、しっかりと前につけてくれていましたので、良かったと思います」と岩波のあんまりなボールの運べなさに言及し、的確なアドバイスをしているのが実に頼もしい。遠藤が去ってから久しく浦和にいなかった「ピッチ上の監督」になる素質十分。
・酒井加入で左SBに回った西。西はもともと縦に突破してクロスとか深く抉るとかが持ち味のSBではなく、攻撃時は中に絞り気味のポジションで組み立てに寄与するタイプなので本人は左でもそんなに違和感はないのかもしれませんが、今の出来だと別に西でなくても良いような・・・札幌戦の宇賀神は明本、江坂と並んで比較的マシなほうだっただけに。
・最後にちょっとだけ顔見世のショルツ。髪が思ったより長くて、ちょっとザッペッラを思い出したのはナイショ
・木村主審はあんまりファウル取らない系のジャッジで一貫しており、相当鳥栖に有利に働いたと思いましたが、途中投入の小泉慶に2枚目のイエローを出さなかったことだけは納得できません!!! そして金監督が「少しアウェイのジャッジ」という認識なのにもびっくり!!! 普段どんだけ鳥栖有利の笛吹いてもらっとるんや・・・
-----明本------
大久保--江坂---達也
---敦樹--平野---
西--槙野--岩波-酒井
-----西川-----
(得点)
36分 明本
84分 江坂(PK)
(交代)
72分 田中→関根
81分 平野→柴戸
81分 大久保→汰木
90+3分 江坂→ショルツ(5バック化)
--小屋松--山下---
中野嘉-仙頭-白崎-飯野
-----樋口-----
-大畑--エドゥ-島川--
-----パク-----
(得点)
45+1分 山下
(交代)
40分 島川→ファン(故障による交代)
59分 白崎→小泉(小泉がアンカー、樋口がIHへ)
70分 仙頭→岩崎(岩崎がFW、小屋松がIHへ)
70分 大畑→中野伸
70分 山下→酒井
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