【観戦記】21年第29節:浦和 2-0 C大阪 ~ 汰木の抱き枕はまだか!!
コンディション面で大差があったせいかもしれませんが、それ以前に更地から半年以上かけて絶賛再建中の浦和と、ある程度完成していたものをわざわざぶち壊して廃墟にしたばかりのC大阪との凄まじい格差を感じた試合でした。
《スタメン》
・浦和は週央に試合がなくて中6日なのに対し、C大阪は水曜日にACL浦項戦を闘っての中2日と日程面では浦和がかなり有利な一戦。
・浦和のスタメンは前節横浜C戦から敦樹→平野の入れ替えのみ。日程も緩くなってきたので怪我でもなければ無理にターンオーバーする必要はなくなり、ルヴァン杯準々決勝で川崎相手に良い内容で勝ち抜いたことを契機に「勝っているチームは弄らない」とリカは腹を括ったのでしょう。コンディションが良くなった西がベンチに復帰し、宇賀神と金子がベンチ外に。
・C大阪は中2日と厳しい日程を受けてタガート→加藤、原川→西川、チアゴ→瀬古、鳥海→西尾と4名入れ替え。故障でACLを欠場していた坂元がベンチ入り。清武は依然故障中。
《試合展開》
・C大阪は高い位置に4-4-2のコンパクトな守備陣を敷き、かつ若い2トップが時折激しく前から追って来ましたが有効とは言い難く、浦和はC大阪の前プレを簡単に交わして楽々ビルドアップ。この試合、最初は明本を高く押し出しての左肩上がりビルドアップでしたが、途中から平野が最終ラインに降りる形に変更していたような。
・そして6分には早くも汰木&明本のワン・ツーで汰木が左サイドを突破。汰木の折り返しを江坂も小泉も撃ち切れませんでしたが、ふり返ってみればこれが「魅惑の汰木ショー」の始まりでした。
・10分、最終ラインに落ちた平野→センターサークル横で受けた関根がスルーパス→小泉スルー→江坂が追いすがる松田陸を振り切ってボックス内に突入していきなり先制。
・13分には平野が瀬古の縦パスをカットしたのを契機に右サイドから小泉クロス→江坂ヘッドの決定機を作りましたが、ここはGKキム・ジンヒョンが辛うじてセーブ。25分には平野のサイドチェンジを受けて左サイドを疾走した汰木からの折り返し→アーク付近で平野に決定機があるもこれはGK正面。
・ボール支配率こそ両者に大差はありませんでしたが、C大阪は浦和の厳しい前プレに妨げられてビルドアップがままならず、なんとか両SHまでボールを運ぶもそこで詰まって最終ラインへ戻すの繰り返し。2トップは共にボールが収まるタイプではなく、いきなりFWへ縦パスを入れてもあまり意味がないせいかもしれませんが、とにかく後半半ば辺りまでC大阪のビルドアップの稚拙さが目に余りました。C大阪のチャンスらしいチャンスはATにFW西川左サイドからのクロスをGK西川がパンチングした場面だけかな?
・47分には前半から再三繰り返していた浦和の前ハメがついに決定機として結実。鋭く詰めてきた小泉が気になったのか、ジンヒョンが瀬古へ繋ごうとしたパスがあまりにも緩すぎて関根がカット。関根はがら空きのゴールに流し込むだけだったのにシュートはなんと枠外・・・角度がやや厳しいとはいえ、これは残念。
・しかし浦和優勢の流れはなんら変わることなく、59分岩波のロングフィードを受けて裏抜けに成功した汰木が瀬古に押されて倒れながらもGKの股を抜いてボールをゴールに流し込む、ある意味汰木に相応しくない泥臭い形で追加点。
・小菊監督は2点ビハインドになってから乾→中島、加藤→タガート、西川→大久保、山田→坂元と前目4枚を一気に入れ替え。これで勢いづいたC大阪はようやく浦和を押し込み出しましたがただそれだけで、依然決定機は作れず。
・一方リカはボールを奪いに行った際にちょっと傷んだ平野を64分敦樹に代えたのを皮切りに、70分関根→ユンカー、汰木→大久保、77分小泉→達也と代えて露骨なカウンター狙いに。そしてその狙い通りに82分深い位置から敦樹スルーパス→達也裏抜け、87分CKからの流れでショルツクロス→敦樹どフリーでヘッド、90+3分右サイドで達也縦パス→酒井クロス→ユンカーと決定機を量産するものの3点目は奪えず。
・4-0ないし5-0で終わって然るべき試合内容で、得失点差を一気に稼げるボーナスステージをフイにした感は否めませんが、ルヴァン杯を契機にチーム状態が明らかに好転していることが再確認できた完勝すぎる完勝でした。
《総評》
・C大阪のシュートは公式記録では4本、DAZNでは9本と大差がありますが、C大阪のシュートはブロックされているものが非常に多くて、それをカウントしたかどうかの差でしょう。西川の守備機会なんてほとんどなく、今季一番の楽勝だったと思います。
・C大阪は「誰もがダメだろうと思っていたら案の定ダメだった」クルピ監督を8/26に更迭して小菊監督が就任したばかり。「シーズンの2/3をドブに捨て、しかも中2日で埼スタにノコノコやって来たチームに負けたらアカンな」と思っていたら、C大阪は予想以上に弱くて大笑いでした。厳しい日程で小菊監督は選手のやり繰りが大変だったでしょうが、J2でも通用するかどうか怪しい2トップで今やムキムキ状態の浦和守備陣と対峙するのはかなり無理がありました。
・C大阪はもうロティーナの遺産なんて跡形もなし。特にビルドアップに苦しんでいるようで、試合後奥埜が「チームの中でも、ここ2試合、立ち上がりに相手の圧を受けてしまう場面も多かったので、そこはチームとして改善しようという声は掛けていました。しかし、今日も圧力を受けてしまう形になりました」と率直に認めていました。
・当然小菊監督は試合後「私が監督になってから、ビルドアップのところは立ち位置を含めて、選手たちには常に要求しているところです。」と改善に着手しているようですが、その成果がすぐに表れることはないでしょう。昨年の浦和がそうであったように。
・また守ってはC大阪は盛んに前からハメに行っていましたが、これが全然ハマらない。前から追っても全然ボールは取れない上に、そうこうしているうちに陣形が崩れて中盤で浮いてる選手に縦パスを通され、そこからスルーパス出されまくるorカウンター喰らいまくるって守っている側としては屈辱的でしょうなあ、たぶん。
・一方大量得点が取れなかったことだけが反省材料の浦和。それでも今シーズンをふり返ると
初期:流れの中では点が取れない
中断前:カウンター主体で結局ユンカー頼み
中断後:ポゼッションから不特定の選手が点を取る
と浦和はリカの理想形に沿って着実に進歩しています。この試合はC大阪の前プレをショートパスで掻い潜って相手を自陣に押し込むのは結果的に全部撒き餌で、やたら前に出てくる相手を仕留めるのは結局のところ深い位置からの縦パスでの裏狙い。攻撃のオプションを徐々に増やして守備側の迷いを誘う。巧みなポジション取りで相手を迷わせるだけでなく、手口の多様さでも相手を迷わせる。リカの仕込みが着々と実を結びつつあることがよく判った快勝でした。
・なおこの勝利で浦和の勝ち点は51となり、残り9試合で17位との勝ち点差が28あるので浦和はJ1残留決定!!いや「理不尽な勝ち点没収」の可能性が常に付きまとうクラブなので最後まで油断はできませんが、残留が現実的な目標にしか思えなかったシーズン序盤をふり返ると感慨深いものがあります。
《選手評等》
・この日の汰木はとにかくキレキレでした! 59分の泥臭いゴールはそもそも岩波からパスが来るのを信じて動き出しているのが何より良い!!もともと悪い意味でのドリブラーらしい「ボールをもらってから動き出しがち」なタイプだっただけに、ここまで変わるとは!!
・しょぼいC大阪攻撃陣相手にもはや「一人要塞」「一人万里の長城」と化しているショルツ。あまりにも相手がしょぼいせいか、CBなのにたまに攻撃参加。44分CKからの流れで左サイドから突然ドリブルで突進し始め、対応に困った相手を割って進んでシュートまで撃ったのには度肝を抜かれました!87分の敦樹へのクロス精度を見てもショルツの攻撃能力はCBのレベルを突き抜けていて、おいおいショルツの攻撃参加が有力なオプションになるのでしょう。スピードがないのでSBはちょっと辛いかもしれませんが。
・岩波は加入直後の酒井にハッパかけられたのが効いたのか、もともと得意だったロングパスだけではなく、グラウンダーの中距離パスもズバズバと。惜しくもフィニッシュには繋がりませんでしたが、38分相手の2列目と最終ライン前で浮いている汰木へズバッと通したパスなんてちょっと前まではありえないレベル。横のショルツが良い手本なのでしょう。とにかく岩波の長足の進歩には刮目すべきものがあります!!
・達也は深くまで突き進まずにアーリー気味にクロスを入れるのは苦手なのかな? 右サイドで長い距離を走った決定機が2回あり、特に2回目の決定機はファーで江坂が「早くここへ出してくれ!!」と言わんばかりに前方に指を差していましたが、結局2回とも深く縦に入ってのクロスは誰にも合わず。
・この日はなぜかキックが長短とも超不安定だったGKキム・ジンヒョン。全然ファウルを取らない系かと思えば、変なところで止める主審に対して流暢すぎる関西弁で文句を言っていたのが個人的にはツボでしたw
・台風が迫る中での一戦となりましたが、雨も風もさしたることはなく試合にはあまり影響がなかったかと。ただ風がスタジアムの中を巻くように吹いて霧雨がバックスタンドの中ほどまで吹き込んでくるのには参りました。でも勝てば細かいことはどうでも良くなるのだ!!
-----江坂-----
汰木---小泉---関根
---柴戸--平野---
明本-ショルツ--岩波-酒井
-----西川-----
(得点)
10分 江坂
59分 汰木
(交代)
64分 平野→伊藤敦
70分 関根→ユンカー(ユンカーがCF、江坂が右SHへ)
70分 汰木→大久保
77分 小泉→田中(江坂がトップ下、田中が右SHへ)
---加藤--西川---
乾---------山田
---藤田--奥埜---
丸橋-瀬古-西尾-松田陸
-----ジンヒョン----
(交代)
62分 乾→中島
62分 加藤→タガート
62分 西川→大久保
62分 山田→坂元
77分 奥埜→原川
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