前日のリーグ戦での対戦時と比べると浦和の決定機は少なかった一方、G大阪の決定機は遥かに多くて、この試合の方が90分では引き分けに終わる可能性はずっと高かったかと。でもカップ戦は勝てば良かろうなのだ!!
《スタメン》
・リーグ戦柏戦から中4日の浦和は柏戦と全く同じスタメン。リーグ戦次節川崎戦まで中6日ですし、ベンチメンバーまで含めて柏戦の大勝をそのまんま反映したものでしょう。
・一方リーグ戦鳥栖戦から中3日のG大阪は福田→ウエリントン、倉田→小野瀬、高尾→柳沢、山本→奥野、ヨングォン→佐藤、藤春→黒川となんとスタメンを6名も入れ替え。CBキム・ヨングォンが鳥栖戦で故障した上に、今のチームスタイルは体力の消耗が激しいためなのかも。
・なおキム・ヨングォンのみらなず、三浦・昌子と実績十分のCBが軒並み故障欠場。さらにFW小野、FWレアンドロ・ペレイラも故障中。
《試合展開》
・吹田スタジアムは日没後&全くの無風だったにも関わらず、なぜかG大阪はコートチェンジを選択して浦和ボールでキックオフ。
・G大阪は戦前に予想したほど前から追って来ず、浦和がハーフラインを超えた辺りからがっつり詰めてくるような守備。前回対戦時のような「漫然と前に出て、ボールを奪えないのでやむなくズルズルと下がる」状態よりG大阪の守備はずっと良くなっていましたが、やはり立ち上がりからボールは浦和が支配。
・7分カウンターから西川ロングキックを受けて左サイドを汰木が単騎駆け上がってボックス内でシュートを放つものの、ここは菅沼が簡単にブロック。しかし10分東口ゴールキック→パトリックが落としたボールを拾った平野浮き球スルーパス一発→裏抜けに成功したしたユンカーの超高精度シュートがATフィールド東口を見事にぶち破って浦和先制。前回対戦時ではユンカー不在が祟ってアホほど合った決定機を全く決められませんでしたが、自分にとって最初の決定機をいきなりモノにする辺りはさすがユンカー様。
・さらに13分平野左サイドへ展開→山中がどフリーでアーリークロス→中に関根が飛び込んでわずかに合わずも、柏戦に続いてこの試合でも山中のクロスが相手に脅威を与え続けました。
・しかし、15分くらい辺りからG大阪は一転して前から厳しく追ってくるようになり、相手の出方の変化に浦和は混乱したのか随所でビルドアップのミスが続出。23分にはウエリントン→小野瀬スルーパスで酒井の後ろを黒川に深々と破られてしまいましたが、黒川の折り返しは柴戸がスライディングでなんとかクリア。
・40分には深い位置での宇佐美FK→ニアで菅沼ヘッドも西川の好守でなんとか凌ぎ、41分にはパトリックがボックス内で浮き球をヘッドで折り返し→ウエリントンの低い枠内シュートも西川ががっちりキャッチ。
・明らかにG大阪に傾きかけてた流れを見事に断ち切ったのが42分の追加点。山中どフリーでアーリークロス→ボックス内で江坂がどフリーでヘディングで折り返し、後方から忍び寄って来た関根が左脚一閃!! G大阪は前ハメに行っている時こそ実に威勢が良いのですが、きっちり守備ブロックをセットしないと行けない時の緩さは如何ともしようがないようで・・・
・2点ビハインドになったG大阪はハーフタイムを挟んで(と思っていたらどうも前半の終わりごろに入れ替えた模様)なぜか小野瀬とウエリントンの左右を入れ替え、かつ「何点取られても一緒や!!」と言わんばかりに超前がかりになってカップ戦らしい捨て身の反撃。
・56分ショルツの縦パスが奥野にカットされ、アーク付近でフリーで宇佐美にシュートを撃たれてしまう大ピンチがありましたが、シュートはなぜか宇佐美らしくなく枠内にすら飛ばずにバーの上。
・さらに57分パトリックのポストプレーを活かしてウエリントンがボックス内に突入。こぼれ玉を拾ったパトリックのシュートは西川が左足で辛うじてセーブ!!
・またしても苦しい時間帯を何とか凌いだところで、リカは58分先制点を取ったもののその後の出来は芳しくないユンカーを早めに諦めて小泉を投入してゼロトップ化。これでG大阪の捨て身の前ハメに苦しんでいた浦和のボールの回りは良くなり、さらに浦和の前プレも効き出して浦和以上に前ハメに弱いG大阪が逆にビルドアップに苦労することに。
・そして66分江坂CKからの流れで山中クロスに岩波&酒井が飛び込むもわずかに合わず。さらに67分江坂CKの流れで山中が今後は無回転シュートを試みるも枠を捉えきれず。
・好機を一回も決められずに失速気味になったところで、松波監督は68分黒川→藤春、小野瀬→倉田、ウエリントン→チアゴと一挙に3選手交代。消耗の激しい選手を代えたつもりなのでしょうが、少なくともウエリントンに代えてチアゴアウベスを入れたのが謎。チアゴは気まぐれにしか動かないので運動量の補充にも何にもなっておらず、次第にG大阪の前ハメは空回り状態に。81分柳澤→髙尾、奥野→チュセジョンの交代も全く効果なし。
・リカも関根が足を攣ったのを見てか、76分関根→達也、汰木→大久保と定番の交代を敢行。85分山中アーリークロス→ボックス内で江坂ポスト→小泉が左足を振りぬいて決定的な3点目!!と思いきや、江坂がわずかにオフサイド。最後は山中→宇賀神、平野→敦樹と代え、さしたる見所はないものの危なげもなく、ボールを回しに回してそのまま試合終了。
《総評》
・シュート数は浦和9、G大阪11(うちパトリック6(笑))とG大阪のほうが多く、CKも共に4。また宇佐美やパトリックに決まっていても不思議はない決定機がありましたから、内容では完全にG大阪をボコボコにしたにも関わらずなぜかドローで終わった前回対戦時に比べるとこの試合ののほうが90分ではタイスコアで終わってもなんら不思議はない試合だったと思います。前回対戦時とは対照的に東口には見せ場がなく、西川の好セーブばかりが目立つ試合でしたし。
・しかし前回対戦時と違って浦和は決めるべきところをきっちり決めて完勝。G大阪の出来は前回対戦時よりは遥かにマシでしたが、失点時のあんまりな守備の緩さを見ると、90分ではタイスコアで終わる可能性はあったかもしれないが「勝てた」と言えるほどではなかったかと。
・この試合で面白かったのは決定力の差で浦和が2点リードで折り返した後半、両監督の采配でさらに両チームに差がついたこと。リカがユンカーを早めに諦めて小泉を投入したのが大いに奏功した一方、松波監督の選手交代は何の効果もありませんでした。
・浦和はユンカーがいる時といない時とで違った顔を見せてくれました。その辺についてリカは試合後「その中でもカウンターという攻撃を、キャスパー ユンカーがまだピッチにいたころは一つの武器として出せたかなと思います。その後に入った小泉も、ボールを握るのに非常にいい役割を果たしてくれたと思っています。守る時間を短くするために、ボールを握るために、彼はすごくいい引き出し方をしたと思います。」と上手くそれぞれの良さを評価しています。
・一点目の縦パス一本での裏抜けなんてユンカーがいなかったらまず成り立たないゴール場面でしょう。ユンカー加入当初にしょっちゅう見られた形で、やたら前からハメてくる相手には一番効き目があります。おまけにG大阪のCBは鈍足だった模様。平野の縦パスは「正直、キャスパーのことはまったく見えてなかった」というのには驚きましたが、これぞ特徴がよく判っているもの同士の阿吽の呼吸がなせる技。
・また2点目と幻の3点目が全く同じ形(=山中アーリークロス→ボックス内で江坂ポスト→2列目がシュート)だったのを見ると、ユンカーがいない時、さらにはユンカーを囮にしての攻撃の形をリカは周到に仕込みつつあるようです。ユンカー不在時というかゼロトップシステムのほうがボールは良く回りますし、前ハメも効きやすい。その代わりに誰が点を取るのかが判然としなかった難点を解消すべくリカが動いたのでしょう。
・一方松波監督の采配は謎だらけ。後半頭からSHの左右を入れ替えた件について、松波監督は試合後「前回のリーグ戦でもウェリントンのところ、酒井選手とのマッチアップのところで少し対応に苦しんでいたかなということも感じましたし、左サイドでフリーで持つサイドバックの黒川がボールを運んでという場面では前に行く、背後へのランというのが少なかったので、その面では小野瀬の方がランを出来るし、逆に右サイドでマッチアップした時のクオリティを出せれば、右サイドも活性化出来るんじゃないかなということで途中で変えました。」と説明していますが、23分に黒川が左サイドを深々と破ったような場面はその後ついに作れず。
・それ以上に謎だったのが68分ウエリントンに代えてチアゴアウベスを投入したこと。ウエリントンは誰とも噛み合わなそうな球離れの悪い選手ですが、それなりに運動量はあって個人能力も高いので守備側には厄介なことは厄介。でもチアゴアウベスはただただ一発があるだけで、気まぐれにしか動かない選手だから「前からハメてナンボ」な今のG大阪のスタイルには全く合わないような・・・そして実際あの選手交代以降G大阪は全く決定機を作れなくなってしまいました。
・準決勝の相手はC大阪に決定。しかも会場はなんと埼スタ。小菊監督はリーグ戦で内容でボコボコにされたことを踏まえ、ルヴァン杯では見事に浦和対策を練ってリベンジを果たしましたが、今度はリカがC大阪対策を練る番。もともと相手なりの修正、後出しジャンケンが得意なリカなのできっと何かやってくれることでしょう。
《選手評等》
・惜しくもオフサイドで得点ならずでしたが、小泉に点を取る意欲が垣間見られたのは今日の良かった探し。一列後ろの平野ですら得点への意欲を見せているんだから、トップ下の小泉がパス出し小僧に甘んじてたらいかんわな。
・柏戦では「鱗滝さんのところで修業してきたんか!!!」と感じるくらいに難しいシュートを決めまくっていた汰木でした、この試合ではまた元に戻っていたのは悲しかった(つД`)
・期待値高すぎなのかもしれませんが、今日の酒井は良くなかったと思いました。ちょっとお疲れ臭いかと。後先考えずに黒川が後方から突っ込んでくるのにかなり苦戦していましたし、逆に縦に突破できそうで出来なかったりと。
・早めに交代させられたユンカーは序盤に相手と交錯した際に西村主審にファウルを取ってもらえなかったあたりからちょっとナーバスになったかも。後半カウンターの好機でボールをこねまくった挙句にボールロストした辺りでリカは交代を決断したかな?
・1点も取れませんでしたがこの日のパトリックはとにかく脅威でした。ハイボールに対する競り合いでショルツが苦戦してたのをJリーグで初めて見たかも。日本国籍取得はまだなのかなぁ・・・どう見ても今の大迫よりは頼り甲斐のあるCFではないかと。
・また井出口もボール奪取だけはかなり良い時期に近づいてるみたいで。
・天皇杯なので吹田スタジアムといえども名目上は中立地であることにいいことに、赤者がサイドスタンドのみならずビジター寄りのメイン&バックSA席までビニールシートで真っ赤に染め上げて選手達を鼓舞!! 浦和座席ビジュアルの凄いところは、設営こそ精鋭の尽力の賜物ですが片付けは一般の方も自主的にワラワラ参加するのであっという間に終わるところ。でもこれを事実上の敵地でやるとは!
-----ユンカー-----
汰木---江坂---関根
---柴戸--平野---
山中-ショルツ--岩波-酒井
-----西川-----
(得点)
10分 ユンカー
42分 関根
(交代)
58分 ユンカー→小泉
76分 関根→田中
76分 汰木→大久保
90分 山中→宇賀神
90分 平野→伊藤敦
--宇佐美--パトリック--
ウエリントン------小野瀬
---奥野--井手口--
黒川-菅沼--佐藤-柳澤
-----東口-----
(交代)
68分 黒川→藤春
68分 小野瀬→倉田
68分 ウエリントン→チアゴ
81分 柳澤→髙尾
81分 奥野→チュ セジョン