興梠慎三選手 北海道コンサドーレ札幌へ期限付き移籍
・昨日(12/29)、興梠慎三選手の北海道コンサドーレ札幌への期限付き移籍が公表されました。西野TDのコメント付きという異例の形で。
・札幌が興梠獲得に動いているという話は天皇杯決勝翌日から早々と表面化。その後も断続的に「獲得オファーを正式に出した」「札幌に移籍することが濃厚となった」と続報があり、20日には”機関紙”スポニチから「獲得することが決定的になった」と報じられたので半ば以上覚悟はしていましたが、それから一週間以上経ってついに公式発表の運びとなってしまいました。
・今年の興梠は残念ながらリーグ戦20試合(うちスタメン3)の出場に留まり、カップ戦を合わせても出場時間が1000分に満たないという、2013年浦和加入後一貫して主力中の主力として活躍し、リーグ戦でコンスタントに10点以上取ってきた実績からすれば信じ難いくらい低調な出来に終始しました。
・興梠の運命が一変したのは昨年最終節札幌戦での負傷。右腓骨筋腱脱臼で全治約3ヵ月間と診断され、新監督を迎えた沖縄キャンプをリハビリに費やす羽目になってしまいました。3/10の横浜C戦で一応実戦に復帰したものの、リカもこの時点では「もう少し時間がかかるかな」と完全復帰には慎重な構えを見せ、実際その後の興梠はリーグ戦では後半途中からの出場止まりでほぼカップ戦要員になってしまいました。
・傍目にもはっきりとした太目残りの興梠。コンディションは一向に上がらず、超得意の鬼キープはままならず、決定機では微妙にコントロールが乱れてシュートは枠に飛ばず。そして致命的だったのは全然走れないこと。真夏の西京極で江坂に代わっての途中投入にも関わらず江坂以上に動けない興梠の姿には心底がっかりさせられました。
・興梠は「試合に出ながらコンディションを上げてゆくタイプ」なのでしょうし、不動のエースだったこれまではそれでも良かったのかもしれませんが、逆に言えばベンチスタートが当たり前になった時のコンディション管理が苦手なのかもしれません。その辺はベンチ暮らしを多々経験して「いつでも出られるように準備をしておくのが当然」という心境に達した宇賀神に遠く及びませんでした。
・出番が少なくなった興梠に対して、CFアンデルソン・ロペスを失った札幌が7月に正式オファー。この際浦和フロントは全力で興梠を慰留し、その甲斐あってか興梠は残留を決断しましたが、興梠の立場は好転するどころか膝の問題で8月末から10月一杯までベンチ外に。11月に入ってようやくリーグ戦4試合に終盤短時間出場して鬼キープ復活の兆しを見せたものの、天皇杯準決勝ではベンチ止まり、決勝ではベンチ外になってしまいました。
・過去8年間にわたって浦和の大エースとして君臨し、最後は興梠抜きには全く攻撃が成り立たない「興梠FC」とまで揶揄されるくらいの存在だった選手がたった一年で事実上戦力外的な位置づけになってしまうとは!!
・そして自分より遥かに試合に出ていた宇賀神や槙野が契約満了を告げられ、試合になかなか出られなくなった大ベテランの阿部はついに引退を決断。興梠が「今年はなかなか試合に出場できない時期が続き、自分自身このまま引退ということも考え」たのも無理はなかろうと思います。
・「出番が激減した高年棒のベテラン」という意味では興梠は宇賀神や槙野と全く同じ立場。それでも浦和フロントが興梠だけ契約満了としなかった(さすがに年齢的に複数年契約が残っていたとは考えづらい)のは、非常にえげつない言い方をすれば「単にCFの頭数が足りないから」だけだと思います。またベテランの阿部と興梠を一挙に失うのはチームへの衝撃がでかすぎることを考慮したのかもしれません。
・そんな状況で浦和に残留し、多少コンディションが良くなったとしても来年もユンカーや江坂、下手をするとFW転用された明本より下の位置付けに甘んじてしまうかもしれない。そんな中で「自分を必要としてくれるクラブからオファーをいただき、もう一度真剣にサッカーと向き合い、もう一度もがいてみようと思いました」「またミシャとサッカーが出来ること大変うれしく思います。」と興梠の心が揺れたのはこれまた無理もなかろうと思います。
・興梠は契約満了で札幌へ完全移籍でも特に不思議はないのですが、大ベテランにも関わらず「期限付き移籍」の形を取った(=おそらく浦和との契約を再締結して期限付き移籍)のは、「最後は浦和在籍で選手生活を終えたい」という興梠なりの浦和への誠意だと思います。契約上興梠がいる札幌が浦和と対戦することはない。興梠が恩義あるミシャの下で再生を図りたいのは山々だが浦和にも多大な思い入れがあり、西野TDと共に落としどころを探った結果が「期限付き移籍」なのでしょう。
・北の大地で興梠のコンディションがどこまで戻るか。戻ったとしても興梠に残された時間はそんなに長くはない。「また必ず」と言い残して浦和を去った興梠の心境やいかに。
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