【観戦記】ACL2022準決勝 全北現代 2-2(PK1-3)浦和 ~ 西川に神が舞い降りた!!
90分で決着を付けられず、あろうことか延長後半に逆転を許してしまうも、終了間際にユンカーが起死回生の同点ゴール。そして西川に舞い降りた神と魔境埼玉スタジアムの力でPK戦を制して浦和が決勝の舞台へ!!
《スタメン》
・浦和は中2日での3連戦の最終日でしたが、スタメンはなんとパトゥム戦と全く同じ。サブに大久保が戻って宮本がベンチ外に。
・全北はラウンド16→準々決勝の間は中3日で浦和より好条件なものの、ラウンド16&準々決勝とも暑さの残る16時キックオフの試合で延長戦まで闘っていて身体的なダメージがきついのか、11番(バロウ)をベンチスタートにして9番(グスタボ)をスタメンにした他、15・29・97をスタメンにして5・7・13がサブと計4名を入れ替え。
《試合展開》
・全北の選手登録はDFが3人だったので「3バックで臨んでくるのか?」と思いましたが、蓋を開けてみれば準々決勝と同じ4-2-3-1で、守備時は両SHが下がって4-4-1-1という感じ。しかも全北の前プレはきついとは言い難く、ニュートラルな位置でリトリート主体の守備からスタートしました。
・そんな相手に対し浦和は3分酒井→モーベルグの決定機を作り、11分にはモーベルグのスローインから伊藤→モーベルグスルーパス→酒井が右サイドを深く抉っての低いクロスに松尾が飛び込んで早々と先制。
・試合開始当初の全北はひたすらグスタボへロングボールを蹴っていましたが、グスタボと言えどもそう簡単にはボールが収まらないためか、20分くらいからボールをしっかり繋ぐ方針に転換。しかし、浦和の前プレがきつくて思うように前進出来ず、後方でボールを回している時間がやたら長かったかと。
・浦和も浦和で、明らかに前からの圧力を強めた全北に対して悪く言えば思うようにボールを前に進められず、良く言えば勝っているのでボールを奪っても無理には攻めない様子で、決定機らしい決定機は30分に小泉の縦パスを受けた伊藤のシュートが枠内に飛んだ場面だけ。
・膠着した戦況を見て全北は後半投入を予定して温存していたであろう11番(バロウ)を34分に早くも投入。38分浦和は酒井から松尾へのパスを23番(キムジンス)にカットされてカウンターを食らい、そのままバロウに長い距離を運ばれてしまう最も許してはいけない形を許してしまいましたが、21番のシュートをショルツがブロックしてなんとかCKに逃れて安堵。
・ビハインドのまま後半に突入した全北は頭から29番に代えて13番(キムボギョン)を投入。これが効いたのか後半立ち上がりから全北が浦和を自陣に押し込み続け、52分バロウからの縦パスをボックス内で受けようとした21番(ソンミンギュ)を大畑が後方から倒した格好となりPKに。VARの介入&オンフィールドレビューでもその判定は覆らず。55分PKを8番(ペクスンホ)が決めて同点に。
・浦和の苦戦は続き、60分CKからカウンターを食らってバロウの独走を許す大惨事。しかし、バロウの折り返しを小泉がカットして窮地を脱しました。
・リカは62分関根に代えて大久保を投入した辺りからようやくボールを握る時間が増え始め、66分モーベルグのクロスをCB4番がクリアし損ねてあわやオウンゴールに。78分にはモーベルグのスルーパス→小泉がボックス内右深くに侵入する良い形を作りましたが、折り返しをGKに阻まれて得点ならず。
・その直後にリカは大畑→明本、小泉→江坂、松尾→ユンカーと一挙3人を交代する勝負手を放ちましたが、80分またしてもCKからカウンターを食らう大ピンチ。しかし21番(ソンミンギュ)のシュートはわずかに枠を逸れて事なきを得ました。
・3選手交代後、浦和が初めて掴んだ決定機は82分大久保スルーパスがユンカーに通るもユンカーのシュートはバーの遥か上。90分岩波ロングフィード→最前線でユンカーが溜めてモーベルグへ折り返すも、モーベルグの左足は枠を捉えきれず。
・ATには浦和が怒涛の猛攻。90+4分には明本クロスを相手DFがクリアし損ねたボールが江坂の前に転がるも江坂のシュートはまさかの枠外。90+5分ロングカウンターで江坂→ユンカーと繋がるもユンカーのシュートは角度が厳しくてGKがセーブ。90+6分明本→江坂スルーパスでボックス内で放ったユンカーのシュートはポストを直撃。こぼれ球を拾った江坂のシュートはゴール寸前でGKがクリアされて延長戦に突入。
・全北は終盤完全に足が止まってドン引きに陥り、厳しい競り合いで傷む選手も続出。戦術的変更ではなく、単に傷んだ選手を代えるくらいのことしか出来ず。しかし、浦和も浦和で終盤の猛攻で勝ち越せなかったのが響いてか延長戦はすっかり足が止まってしまい、全北の守備ブロックの周りでボールを回すだけの、まるで今季前半の全く点が取れなかったことを思い出させるような低調な展開に。
・そのまま何事も起こらないままPK戦突入の気配が漂いだしたところで、115分23番クロス→ファーで折り返されて、最後は髪の毛が不自然な27番(ムンソンミン)に決定機。ここはなんとかショルツがブロックして凌いだものの、116分全北のショートコーナーに対して浦和の対応が遅れ、14番のクロスにニアで飛び込んだ7番のゴールを許してしまいました。
・残り時間はわずか5分程度。しかし浦和の選手達、そしてスタジアムに詰めかけた23,000人余は誰一人として諦めることなくすぐさま態勢を立て直して反撃開始。埼玉スタジアムの屋根に反響する声また声、そして拍手に次ぐ拍手が頭上から降り注ぐ中で、120分酒井が「諦めないということはこういうことなんだ!!!」と言わんばかりの渾身のタックルが炸裂。
・モーベルグ→酒井のクロスはいったんクリアされたものの、大久保ボレーシュートの当たり損ねを明本がヘッド。GKが弾いたこぼれ玉をユンカーが利き足ではない右足でわずかに空いた隙間をぶち抜いて起死回生の同点ゴール。
・PK戦はまさに2007年準決勝城南一和戦の再現。北ゴール裏に集結した無数の大旗がウネウネする異様な光景を前にPKを蹴るのは経験豊富な全北の選手もやりづらかったのか、またそれ以上にミレッGKコーチと共に積み重ねてきた西川の研鑽が勝ったのか、1本目、2本目と立て続けにPKを阻止したところで半ば勝負あり。全北4本目はなんとポストを直撃して外へ。浦和は3本目のモーベルグこそ阻止されたものの、4本目を江坂が決めてPK戦に勝利。2019年以来の決勝の舞台へと駒を進めました。
《総評》
・PK勝ちだろうがなんだろうが、結果が全て。なんとか東地区の頂点に登り詰めた選手達、そして監督やスタッフ達を率直に讃えたいと思います。
・それにしても全北は強かった。韓国のチームといえばやたら荒っぽいイメージがありますが、全北現代は最初にグスタボがクロスに対して遅れて突っ込んで西川や酒井と交錯して自分も傷んだのが危なかったくらいで、激しい競り合いは何度もありましたが、汚いと思えるプレーはほとんどなくフツーに強いチームでした。中立地開催とは名ばかりの圧倒的な浦和のホームでこれですから、通常のH&Aだったら浦和の勝ち抜けは難しかったかもしれません。
・おまけに韓国の田舎クラブにありがちな負けた後のご乱行もなし。PK戦に敗れて引き上げる全北に対してスタジアムから少なからずの拍手も巻き起こっていましたが、まさにリスペクトに値するチームでした。
・今年のACLは昨年に続いてコロナ禍を受けてグループステージ、ノックアウトステージも集中開催という短期決戦。コロナ対応が一際厳しい中国勢は全くやる気がなく、浦和は豪州勢との対戦もなかったので正直ACLらしいACLは最後の準決勝だけだったかも。
・そしてリカや選手の大半がACLの経験がないことが準決勝の苦戦の一因だったのは間違いないでしょう。通常のH&Aによる長丁場での闘いなら、闘っているうちにACLに向いている選手、向いてない選手の見極めが出来て、それなりのローテーションを組むものですが、今年は如何せん短期決戦。
・リカがノックアウトアウトステージ3試合をほぼ固定メンバー(=Jリーグ仕様そのまんま)で試合に臨み、その辺の見極めをしないまま、出来ないまま最後の最後でACLらしいACLの闘いの場を迎えて危うく死にかかりました。
・端的に言えば左SB大畑は明らかにミスチョイス。前半にも競り負けてボックス内で後方からのタックルでなんとか逃れる場面がありましたし、PKを与えたファウルも起こるべくして起こったようなもの。60分の激ヤバカウンターを食らった場面でもバロウに弾き飛ばされてしまいましたし。フィジカルが強い明本をラウンド16&準々決勝とベンチスタートにしたのは準決勝での出場を睨んでのものと思い込んでいましたが、「勝っているチームは弄らない」ことが裏目に出た気も少々。
・途中投入の大久保もイマイチ。まぁこちらは準々決勝をコンディション不良でベンチ外になったくらいなので、こちらはACLに向き不向き以前の問題かも。
・そして浦和のCKは全く決定機にならず、あろうことがバロウを起点に二回もヤバいカウンターを食らうって、どう考えても負けパターンでしょう、あれは。最後のショートコーナーでやられた場面もそうですが、浦和はCK絡みの細かいところでちょこちょこっと全北に遅れを取っていました。そして全北はその細かいところを突いて浦和をねじ伏せるだけの力がありました。
・今年のACLは何ともマヌケなスケジュールで、決勝は来年の2月19日(アウェー)&26日(ホーム)に開催。おまけに西地区のノックアウトステージは2月に入ったからバタバタと始まり、浦和の相手が決まるのはなんと2月10日になってから。
・決勝はまだ半年近く先の話で、その頃には選手も若干入れ替わっていることでしょう。西地区のチームは完全に出来上がっている状態なのに対し、浦和はチームが始動してまもない時期に決勝を闘う羽目になって何かと難しいでしょうが、決勝の舞台では準決勝での大苦戦を糧にして欲しいものです。
《選手評等》
・ATの決定機を逃し、延長戦では「スペースがないと活きない」「ドン引きされると辛い」という難点をずっと引きずっていたように見えたユンカーが、最後の最後で正確無比のシュート精度で相手ゴールをぶち抜いてすべてを帳消しにするとは!!! これぞストライカー。
・国際試合で頼りになったのはやはり歴戦の勇士酒井。試合後酒井は「昨年の夏にマルセイユからレッズに移籍してきて、当時は家族も代理人も含めて誰一人、この移籍に賛成の人はいませんでした。ただ、この移籍が成功だったかどうかは僕自身が証明するしかないと思っていましたし、そのためにはこの大会を獲ることが非常に必要だと思っています。」とACL優勝に賭ける熱い思いを明らかに。小破を押してグループステージに出場し、ステージ突破を見届けてから手術となったのはこういう思いが下敷きにあったのだと納得。
・PK阻止に関しては全くと言っていいほど実績がなかった西川がこの大舞台で2本も止めるとは!! 試合後のコメントを見る限りやはりミレッコーチとの出会いが大きいようで、PK戦にもメカニズムちうかやり方というものがあるそうで。ベテランになっても成長する。いやはや恐れ入りました。そして彩艶の前の壁は依然高い。
・一方試合後の会見によると全北はPK戦に弱いという話も。奇しくもキムサンシク監督は2007年に城南一和の選手としてPK戦を経験しており、あの埼スタの異様な雰囲気も知っていたそうで。
・試合終了後浦和の選手達が全員ピッチに整列してユンカーのインタビューが終わるのと待っていたところ、なぜかベンチから呼ばれる岩尾。てっきり岩尾もインタビューに呼ばれたのかと思っていたところ、ベンチから出てきた岩尾の両手には大量のペットボトルが!!! 無事に事件が解決して、最後に石原裕次郎が水を運んでくるのが浦和版西部警察・・・オシムさんも「リアル水を運ぶ男」の爆誕に目を細めているかもしれんなぁ・・・ 岩尾の姿を見て小泉や彩艶が申し訳なさげに慌てている姿にほっこり。
-----松尾-----
関根---小泉--モーベルグ
---岩尾--伊藤---
大畑-ショルツ--岩波-酒井
-----西川-----
(得点
11分 松尾
120分 ユンカー
(交代)
62分 関根→大久保
79分 小泉→江坂
79分 松尾→ユンカー
79分 大畑→明本
111分 伊藤→柴戸(足が攣ったため)
-----9------
21---97----8
---28--29---
23--4--15-95
-----1------
(得点)
55分 8(PK)
116分 7
(交代)
34分 97→11
HT 29→13(13がトップ下、8がCHへ)
90+4分 21→27
延前開始 8→14
97分 28→25
104分 9→7
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