セットプレーを含めて名古屋のほうが決定機が多く、浦和は2度あった決定機を決められなかった以上、引き分け御の字でしょう。ただACLを睨んだと思しき松崎投入が完全に裏目に出るとはなぁ・・・
《スタメン》
・共にルヴァン杯から中3日。浦和のスタメンは直近のリーグ戦と全く同じで、伊藤だけがルヴァン杯込みで3連闘。
・但しベンチメンバーをリンセン→カンテ、シャルク→松崎、平野→柴戸と入れ替え。
・スコルジャは記者会見の度に「今はACL決勝へ向けてスタメンを固定して連携を深めている最中」と話しており、その反動で控え組に不満が溜まりやすいのはスコルジャも良く判っているようで、試合前の会見では「大きな野心を持った良い選手がこんなにたくさんそろっていると、ロッカールームの雰囲気が難しいものになることもあります」と語っていました。大畑が長らくベンチにも入れなかったのは練習での態度が芳しくなかったようで・・・
・よって、今回のベンチメンバーの入れ替えは「ACL決勝へ向けてスタメン固定なのは正直スマンと思っとるけど、控え組の出来不出来は普段の練習試合やルヴァン杯でちゃんと見とるで!!」と言っているようなものかと。具体的にはルヴァン杯の出来を見てリンセンもシャルクもACLでは期待できそうにないから、カンテに一抹の望みをかけてみた感じでしょうか。
・ルヴァン杯ですらベンチ外になったモーベルグは「メディカル的な問題が少しありましたが、もうプレーできる状態になっています」とのことでしたが、ACLの外国人枠に入れる見込みはないので代わりのサイドアタッカーとして松崎を諦めずにベンチに入れたのかも。
・名古屋もスタメンは直近のリーグ戦と全く同じ。こちらは稲垣・藤井・野上が3連闘。

《試合内容》
・浦和は5分にいきなり決定機。大久保が右サイドからカットインしてボックス内に突入。股抜きで相手をかわして中へ折り返し、伊藤がシュートを放つもGK正面。
・しかし、序盤の浦和の見せ場はこれ一回こっ切りでその後は名古屋ペース。名古屋はお世辞にもビルドアップが巧いチームではないので浦和は前からハメに行くと予想したのですが、その予想に反して序盤の浦和はたいして前から行かず。前節新潟戦を見た感じだと、名古屋は思い切りよく前からハメにくる新潟に苦戦していきなり失点していただけに、浦和の消極的な試合の入りには少々失望しました。
・試合後スコルジャは「前半、戦術的な規律はよく守られていたと思いますが、もう少しハイプレスの回数を多くするつもりでした。しかし、名古屋のようなチームと対戦するときは、背後へのボールに気をつけないといけません。名古屋はそういったプレーを得意としています。それを警戒して相手をリスペクトし過ぎた部分が、前半にはあったと思います。」と語っており、カウンターを食らう怖さ、縦ポン一発で裏を取られる怖さから前から行きたくても行けなかったようで。概して名古屋のカウンターを警戒し過ぎて少々腰が引けており、球際でもやや劣勢な印象を受けました。特に中盤は米本にやられっぱなしだったかも。
・でもその割には序盤から何度もカウンターを食らって浦和は苦戦。10分永井のパスカットから永井→森下→永井のコンビネーションプレーで永井の抜け出しを許してしまった(シュートは枠外)他、名古屋の5-4-1の守備ブロックを攻めきれずにカウンターを食らったり、あろうことか名古屋に前ハメされてショートカウンターを浴びたりと散々。いずれもDF陣がシュートブロックして事なきを得ましたが。
・また19分、20分と立て続けにセットプレーで決定機を許してヒヤリ。特に20分マテウスCK→稲垣ボレーシュート→内田が頭でコースを変えた場面では西川の好守が光りました。
・前半半ばから浦和はようやく前からの圧力を強めだしましたが、名古屋が自陣に敷いた5-4-1の守備ブロックを攻めあぐねて最終ラインでボールを回している時間が長く、ただただボールを持たされてる印象。何度かボックス内に入る場面もありましたが、相手を崩しきれずにシュートはブロックされておしまい。
・後半も最初に決定機を掴んだのは名古屋。55分野上の縦パス一本で永井の単騎抜け出しを許すも、追いかけてくる酒井が気になったのか永井のシュートは枠外。
・一方後半立ち上がりから徐々に攻めの形が出来つつあった浦和は58分に決定機。ショルツの縦パスを契機にパスを細かく繋いで右サイドから名古屋守備ブロックを崩し、伊藤のグラウンダーのクロスがゴール前に走り込んだ小泉に繋がりましたが、小泉のシュートはまさかの枠外・・・
・さらにスコルジャが小泉に代えて安居投入を準備していたところで酒井にアクシデントがあり、やむなく荻原を投入して明本を右SBへ。しかも興梠の電池切れの時間帯と重なったため浦和は急激に劣勢に陥り、72分にはセンターサークル付近での競り合いに敗れた挙句にマテウスに決定機を許してしまいましたが、幸いにもシュートは枠外。
・スコルジャは76分関根→松崎、興梠→カンテと勝負手を放ちましたがなおも浦和の劣勢は続き、84分にはCKからの流れでこの日一日消えていたユンカーについに決定機。しかしここも西川がセーブ。
・そして最後の最後で浦和に訪れた決定機。90+3分カンテが最前線で粘って左のオープンスペースに展開。激走する大久保が中へ折り返し、どフリーでボックス内に突入した松崎に繋がったものの、松崎はトラップが流れてシュートに持ち込めずorz
《総評》
・シュート13対7、CK11対2。枠内シュートもボックス内からのシュートも名古屋のほうが多く、気休めにしかならないことで悪名高い「ゴール期待値」も1.23対0.64とほぼダブルスコア。スタッツ通り名古屋が優勢な試合でした。
・浦和もノーチャンスだった訳ではありませんが、肝心なところで2列目の得点力不足といういつもの課題が噴出。2回の決定機でフィニッシャーが共に「J2オールスターズ」だったのに泣かされるハメに。しかも酒井の故障で勝ち目は非常に薄くなったにも関わらず、守備陣が奮戦してアウェーでなんとか勝ち点1をもぎ取ったことを前向きに評価すべきでしょう。
・この試合でサブに松崎を入れ、その松崎が最後の最後で決定機をフイにしただけでなく、投入されてからずっと攻守とも消えていたため、松崎本人は当然ながらスコルジャの選手起用にも批判が集まっているようです。スコルジャは「ここ一週間くらいは非常に良くなっていると感じていましたので、YBCルヴァンカップ、そして今日の試合でチャンスを与えることにしました」と試合後語っていましたが、残念ながらその結果は完全に裏目に。
・スタメン選考のところでも触れましたが、松崎起用はACL決勝を睨んでと考えればやむを得ないのかも。ACLは外国人枠が3つしかなく、しかもアウェーの第1戦で大量失点したら終わりなことを考えるとCB二人は鉄板。また興梠がフルで使えないことを考えると残り1枠はCFになりうるリンセンかカンテしかなく、故障がちなモーベルグの出目はほぼなし。
・よって途中で一仕事できるサイドアタッカーとして松崎の覚醒にスコルジャは賭けたのでしょうが、残念ながらその期待は完全に裏切られました。
・もっとも肝心なところで点が取れないのは何も松崎だけでなく、関根も小泉も大久保も同じ。この辺のしょっぱい2列目はACL決勝が終わったら順次外国人選手と入れ替えになると思います。ショルツ以外の外国人選手が揃いも揃って故障がちだった昨年と違って今年はモーベルグが故障がちな他は物理的には皆稼働中。フィジカルスタッフ増員が効いたのかもしれませんが、その成果を受けてスコルジャもリーグ戦は「ACL明けから本気を出す!!」ことでしょう。
・逆に言えば松崎どころかシオシオ2列目に残されてる時間はそんなにないかと。続く札幌戦&川崎戦でなんとか結果を出して欲しいものです。
・終始劣勢な試合の中での収穫はカンテが短時間なら使える目途が立ったこと。結構ボールは収まりますし、周りも見えている様子。またカンテとマルちゃんはやたらピッチで寝転がっているところはそっくり。寝ころびながらもボールに執着しているかどうかが全然違うだけで!!!
・ただチーム全体がカンテの最適な使い方に慣れておらず、カンテに点を取らせる仕組みが未実装なせいか、カンテのシュートはゼロ。また現時点で興梠の稼働可能時間+カンテの稼働可能時間が90分に満たないのがスコルジャの現時点での悩みかと。残り3週間で「興梠の稼働可能時間+カンテの稼働可能時間>90分」になるかどうか。

《選手評等》
・荻原はキジェの下で「突貫小僧」「死なば諸共」ぶりが悪化したかも!!と思っていたら、案外粘り強い守備が出来るようになっていて実に頼もしかった。実にポジティブサプライズ。でも荻原は都内の方とは合わないみたいで。やっぱ北関東連合・・・・
・酒井は代表免除になっても怪我がちなのは変わらないみたい。故障は「全体的に、ハムストリングであるという話は聞いていますが、現時点でどこなのか、というのを特定することはできません。」とのこと。ACL決勝へ向けてスタメン固定でやっているので、酒井みたいな大駒をアクシデントで失うと途端にチームがガタガタになるのは実に辛い。
・ユンカーはこの試合を通じてほぼ消えていて、最後にやっと巡ってきた決定機も決められず。スタメンで出られる上に、ほぼ守備を免除してくれるチームへ行って本人は大満足なんでしょうけど、個人的にはユンカーってほぼ「イケメンのレオナルド」という印象が強まるだけでした。得点能力は高いけど非常に使いづらいとか、使わないとすぐにブーたれるとか。監督からすれば厄介な存在でしかないでしょうに。この試合の出来なら終始はマイナスでしょうし。
・そして永井やマテウスにユンカーの分まで守備負担がかかっていることを考えると、彼らが決定機を逃したのは偶然ではないと思うけどなぁ・・・
・名古屋って攻守分業どころか個人単位で役割がはっきり分かれていて、それが今日のスタメンで最適化されているので、あとは選手を代えれば代えるほど悪くなる。後半も酒井負傷退場以降名古屋がずっと押していたので選手を代えるに代えられずに最後の押しが足りずに試合終了。あれが名古屋の限界と思ったけどなぁ。でも「ボール獲ったで!!!あとはよろしくな!!」とタスクを単純化してもらってめっちゃ輝いている米本を見ると、選手個々人としてはあれはあれで楽しいのかも。
・アウェー名古屋戦と言えば昨年はラフプレー連発で怪我人が続出しましたが、この試合では局面のバトルこそ相変わらず激しかったものの、ラフプレーと感じる場面はなくて実に好印象。名古屋戦はいつもこうあって欲しいものです。
-----興梠-----
関根---小泉--大久保
---岩尾--伊藤---
明本-マリウス--ショルツ-酒井
-----西川-----
(交代)
68分 小泉→安居
68分 酒井→荻原(荻原左SB、明本右SBへ)
76分 関根→松崎(松崎右SH、大久保左SHへ)
76分 興梠→カンテ
86分 伊藤→柴戸
-----ユンカー-----
--永井----マテウス--
森下-米本--稲垣-内田
-藤井--中谷--野上-
-----ランゲラック----
(交代)
82分 永井→酒井
89分 ユンカー→ターレス(ターレス右シャドー、マテウスCFへ)
※写真は試合とは全く関係ありません