【観戦記】23年第8節:浦和 4-1 札幌 ~ 大迫力のモーゼ攻撃、ついに結実!!!
浦和が数的有利になった時間帯になんとか先制出来たのが全て。その後浦和にも退場者が出てしまいましたが、消耗が激しい上に攻守のバランスが崩壊している札幌を終盤ボコボコにしての完勝でした。
《スタメン》
浦和は前節名古屋戦で故障した酒井に代えて荻原がスタメンに入り、明本を右SB転用。名古屋戦で酒井故障後に試行済の形でした。
試合前の会見でスコルジャが「レッズのサイドバックは非常に攻撃的で守備のことを忘れてしまうことが時々あります」と語っていました。当初懸念された荻原は案外そうでもなくて、おそらく馬渡のことを指していると思いましたが、やっぱりリーグ戦で馬渡をスタメンで使うのは怖いみたいで馬渡はベンチスタート止まり。
前節決定機をフイにした松崎に代わってモーベルグがベンチに復帰。
札幌のスタメンは前節と全く同じ。故障で離脱していた駒井と宮澤がベンチに復帰。
札幌はいつも通りマンツーマンで前から嵌めに来ましたが、球際は浦和が概して優勢で危険な形でボールを失うことなく、序盤は浦和が押し気味に推移。10分に伊藤、16分に荻原が際どいシュートを放つもいずれも枠を捉えきれず。22分には荻原FKの流れで大久保クロス→岩尾ヘッドの決定機がありましたが、ここはGKクソンユンがセーブ。
札幌らしい幅を目いっぱい使った攻撃、サイドチェンジからWBを軸とした攻撃が見られたのは17分菅くらいで、それもシュートははるか上空へ。序盤の決定機は28分浅野くらい。浦和は右WB金子と対峙する荻原の守備が懸念されましたが、荻原は意外にも粘り強い金子に対応して大過なし。また浦和の前プレはそれなりに機能していて札幌に簡単にサイドチェンジをさせず。
また御厨主審は5分に荻原へいとも簡単にイエローを出したためか、一対一で負けると致命傷になりがちなマンツーマン守備の悲しさゆえにラフプレーがとにかく多い札幌は12分福森、22分菅とイエローをもらう羽目になり、主審の傾向はやや札幌に不利に働いたかもしれません。
試合が大きく動いたのは34分。関根が自陣深い位置でボールを奪い、小泉が前方へ大きく展開。ハーフライン手前から興梠がCB中村と競り合いながら前に進み、興梠が抜け出しかかったところで中村に倒されたところで御厨主審は何の躊躇もなくレッドカードを提示。非常に判りやすい決定機阻止なので、この判定は当然でしょう。
物理的にマンツーマン守備が成り立たなくなった札幌は、41分にキムゴンヒに代えて駒井を投入し、福森を最終ラインに下げて5-3-1のリトリート守備に切り替えましたが、不意に退場者が出て動揺している上にリトリート守備なんて不慣れなためか、立て続けに浦和に決定機。
42分にはマリウスの縦パスに反応して裏抜けに成功した大久保はGKと一対一になりながらもシュートをGKにぶち当て。こぼれ球を拾った伊藤のシュートも枠外。AT+1分には大久保が右サイドを深く抉ってからの折り返しから伊藤に決定機が生まれるも、伊藤のシュートはブロックされてしまいました。
後半の札幌は最終ラインに6、7人並んでいるように見えるくらい、やたら人数を割いてドン引きに陥っていましたが、そんな相手を攻め倦む浦和も相当しょっぱいのなんの。
スコルジャが64分小泉に代えてカンテを投入してはっきりした2トップに変更したものの、芳しくない戦況を打開したのはカンテではなくなんとショルツ。68分相手のパスをインターセプトしたショルツがそのままドリブルで持ち運び、関根とのワンツーでボックス内に突入。さらにGKの股を抜いてボールを流し込んで先制!! 昨年来何度も披露しながら一向に決定機に繋がらなかった「モーゼ攻撃」がついに結実しましたが、さすがに自分で点を取ってしまうところまでは予想出来ませんでした。
押せ押せになったところで70分には伊藤が前線へ浮き球のパス。興梠がDFともつれ合って潰れ、こぼれ玉を拾った関根がGKを交わしてゴール!!と思いきや、VAR判定の結果関根がオフサイドでノーゴール。
また76分にはGKクソンユンへ猛然と詰めたカンテが足裏で相手を蹴ってしまう格好になり、VAR判定の結果イエローがレッドに変更。この日の主審の傾向を考えれば不用意すぎるプレーでした。
しかし試合の流れは変わることなく、79分荻原クロス→興梠シュートが青木の広げた手(=手や腕で不自然に体を大きくした形で、かつその形は正当なものとは言い難い)に当たり、これまたVAR判定の結果ハンド=PKに。83分PKを興梠自ら決めて2点差に。
数的不利が解消されたためか、札幌は得意の殴り合いに持ち込むべく怒涛の攻撃を再開。88分には左サイドからの波状攻撃で単騎カットインした菅のシュートがショルツに当たったのが幸いして1点返したものの反撃もここまで。
スコルジャは89分に関根→モーベルグ、興梠→安居、90+3分荻原→馬渡と代えて試合を締めにかかり、結果的にはこの交代が既に消耗しきっていて、かつ攻守のバランスが崩壊している札幌には案外効いたようで。
90+5分には安居とのワンツーで右サイドからモーベルグが裏抜けに成功。ボックス内からの折り返しをCB田中駿が見事に押し込んでオウンゴール。ファーには大久保がいたのでこれは田中駿を責められません。
さらに90+8分馬渡FK→ファーでどフリーのマリウスヘッドが炸裂して4点目。4点も入ったけど、前目の選手は流れの中で誰も点をとってないという、今年の浦和らしい快勝でした(笑)
オールコートマンマークという超特殊なサッカーをやっている札幌相手にスコルジャがどういう手を打ってくるかが見ものでしたが、布陣といい、やり口といい、特に変わったところはなく実に普段通りのサッカーをやって、しかも札幌の逆転を着実に突いて快勝。早い時間帯に数的優位になった割には先制点を取るのに時間がかかったのが難ですが、それでも終わってみれば4得点。ミシャ退任以降どういう訳かホームゲームでの札幌戦の戦績は芳しくありませんでしたが、久しぶりの勝利は大勝でした。
前任のリカは札幌戦が特に苦手。相手守備陣が対応に困るところでボールを受けながら敵陣を攻略するのが好きなリカは、オールコートマンマークゆえ、守備陣から浮いているところでボールを受けるという事態が原理的に存在しない札幌を非常に苦手としていました。しかもラフプレー上等でガツガツ当たってくる札幌相手に球際で競り負ける場面も少なくありませんでした。
ところがスコルジャはリカとは対照的に球際での競り合いを非常に重視するタイプ。さらにこの試合では興梠が下がって2列目が飛び出すことに例示されるような縦のポジションを頻発し、背中にマークがべったり張り付いた状態で下がってくる選手に平気に縦パスを出す→受け手は少々当たられてもボールを失わずに後方に叩いて、前を向いている選手に繋ぐ。この連続で札幌のマンマークを交わしまくっていました。
また中盤に降りた選手に札幌CBが食いつきすぎる傾向を逆用して、最終ラインに出来た穴を後方からロングフィード一発で突く場面もしばしば見られました。細かいビルドアップ然り、ロングフィード一発で裏を突く攻撃然り、SHにサイドを抉らせる攻撃然り、普段やっていることの延長線上で特殊な戦術を繰り出す相手に完勝できるようになるとは!!
中村退場の場面はマンツーマン守備の弱点が露骨に出た格好。若い中村では老獪な興梠の相手はしんどかったということなのでしょう。
《選手評等》
OFRで主審が判定を下す前に興梠がPKスポットにボール置いて、その後札幌と揉めてたのは腹から笑いました。久しぶりに鹿島の血が蘇ったのかもw
でも浦和のPKキッカーはショルツに決まっていて、試合後ショルツは「興梠慎三に頼まれたら断れません(笑)」と語っていましたが、さすがにこの件で興梠は試合後監督に怒られたそうで。結果オーライではなく、締めるべきところは締める。実に優秀な監督です。
ただ興梠が札幌相手に志願してPKを蹴って、かつ見事に決めたことでスタジアムが沸き返ったのは確か。くっさいドラマ的に言えば、一年間お世話になった札幌への惜別、愛していた「ミシャサッカー」とは全然別物のサッカーをやっている札幌への思いをすぱっと断ち切るためのPK志願だったのでしょう。
この試合はプレースキッカーが岩尾ではなかった(最後の馬渡以外は全部荻原)ので、岩尾の決定的なヘッドという珍しいものが見れました。
興梠に代わって安居CFに投入された安居。ポジションはどんどん本職のCHから離れてゆきますが、もう試合に出られれば何でもいいと割り切っていることでしょう。安居はスコルジャ監督になって良かったなぁ、ホンマ。
リンセン=故障、カルロス=故障、カンテ=一発レッドと芸風は違えど、CFの「出落ちギャグ」が受け継がれるのってなんなん?
大久保はシュート撃つ時に下向いててGK見る余裕がないみたいで。あれじゃGKにシュートぶつけまくるのは当然。冷静にGKの股を抜いたショルツのほうがシュートが巧いかも・・・
現役時代槙野がしょっちゅうPKを取られたのはルールを良く判っていないからだったのか・・・NHKでの解説ぶりで確信。「支え手だから手に当たってもノーファウル」って認識が古すぎ。
この試合の入場者数は大雨にも関わらず40000人弱。駒場でのホーム開幕戦は好天だったにも関わらずソールドアウトしないどころかメインスタンドにまとまった空席があるという惨状だったのでこの試合の客足が案じられましたが、ビックマッチとは言い難い相手であり、かつ大雨だった割には良く入りました。大雨じゃなかったら40000人を超えていたことでしょう。やはりこの試合が事実上のホーム開幕戦と受け止めている方が多く、言い換えれば老朽化著しい駒場をありがたがる方はかなり減っていることの表れでしょう。
そして事実上のホーム開幕戦だったせいか、埼スタに初めて来たような感じの方も結構いた様子。点がたくさん入って浦和が勝つという初心者向けの試合展開だったのは何よりでした。
また大雨だった南自由席がガラガラな反面、メイン・バックともアッパーが結構入っていましたから、入場料収入は自由席満席で40000人入った試合より上かも。浦和はタダ券をほとんど配らない上にシーチケの割引率も高くないので、とにかく客単価が高いのが経営上の強み。
でも帰り道、車道で遮られるまでの道が混むのは仕方ないけど、でっかい水溜りがネックになってるのが駅までの道のりで何カ所もあるのはなんとかせんとなあ・・・
-----興梠-----
関根---小泉--大久保
---岩尾--伊藤---
荻原-マリウス--ショルツ-明本
-----西川-----
(得点)
68分 ショルツ
83分 興梠
90+5分 OWN GOAL(田中駿)
90+8分 ホイブラーテン
(交代)
64分 小泉→カンテ(4-4-2へシフト)
89分 関根→モーベルグ(モーベルグ右SH、大久保左SH)
89分 興梠→安居
90+3分 荻原→馬渡(馬渡右SB,明本左SBへ)
-----キムゴンヒ----
--青木----浅野--
菅--福森--荒野-金子
-中村--岡村-田中駿-
-----クソンユン-----
(得点)
88分 菅
(交代)
41分 ゴンヒ→駒井(駒井CH、福森左CB、浅野CFの5-3-1へ)
67分 浅野→中島
89分 青木→トゥチッチ
89分 福森→宮澤
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