【観戦記】23年第10節:浦和 0-2 鳥栖 ~ これがビッグマッチ直後の試合の難しさなのか・・・
ビッグマッチで疲労困憊、燃え尽きた後の試合は何かと難しいようで、浦和は過去ACL決勝直後の試合は勝ったことがなく、今回もまた同じ轍を踏む羽目になってしまいました。
《スタメン》
浦和はACL決勝のためにリーグ戦3試合が未消化、かつルヴァン杯や天皇杯もあって6月にかけて超過密日程を強いられており、この試合はACL決勝の激闘からわずか中3日。しかし、この試合に限っては浦和は中3日かつホーム連戦なのに対して鳥栖はリーグ戦前節からわずか中2日かつアウェー連戦なので、実は鳥栖の方が日程がきつい格好になっていました。まあ試合強度が全然違うので単純比較はできませんが。
従って浦和は大幅なターンオーバーを仕掛けてくると予想した向きも少なくありませんでしたが、ふたを開けてみるとスタメンの入れ替えは興梠→カンテ、小泉→安居、関根→シャルク、酒井→荻原の4名のみ。ACL決勝メンバーではなかった選手でベンチ入りできたのも大畑のみとびっくりするくらい選手の入れ替えは控えめでした。リンセンやモーベルグがベンチ外なのには心底がっかり。
鳥栖もこれまたスタメンの入れ替えは長沼→西川、森谷→藤田、本田→堀米の3名のみ。もともと選手固定気味で闘っているので代えるに代えられないのかも。
《試合展開》
ビッグマッチ直後の試合なので気が抜けたというかふんわりというか、なんか集中を欠いたような試合の入りになってしまうことを恐れていましたが、試合の入り自体は悪くありませんでした。早速鳥栖を自陣に押し込んでシュートも2、3本放ちましたが、いずれも遠目から「とりあえず撃ってみました」という感じで決定機とは言えず。そして終わってみれば90分を通じてほぼその連続になるとは・・・
そして浦和の攻勢は10分と続かず、試合は次第に鳥栖ペースへ、浦和は果敢に前からプレスをかけに行くものの、鳥栖は足元が超上手いGKパク・イルギュが使える上に、浦和のプレスに連動性がイマイチ欠けるせいか(しばしばシャルクが穴になっていた感じ)、序盤は笑えるくらいプレスがハマらず。また鳥栖のマンツーマン気味のハイプレスにも苦戦してビルドアップも難渋を極めました。
16分には左SB菊地が後方から明本とショルツの間にスルスルっと上がって来てミドルシュートを放つもここはGK西川がセーブ。28分には左サイド深い位置からの藤田ロングスロー→田代ヘッドが炸裂するも、これまた西川がビッグセーブ。
30分くらいからようやく浦和も鳥栖のハイプレスに慣れてボールをしっかり握り、サイドを変えながら反撃。39分には西川のロングフィードを契機に荻原クロス→こぼれ玉を拾った大久保のシュートはGKパクがセーブ。そのこぼれ玉を拾ったシャルクも詰め切れず。
その後はお互い決定機を掴めないまま時間が徒過。どちらも日程が厳しいため鳥栖は56分小野→本田、西川→長沼、67分堀米→河田、藤田→手塚、浦和は60分カンテ→興梠、シャルク→関根、70分伊藤→小泉と早めに選手を替えましたが、選手交代がより効果的だったのは鳥栖のほう。
表面上は鳥栖の方は日程が厳しいので先に運動量が落ちると予想していましたが、この選手交代が効いてハイプレスの強度は全然落ちませんでした。そしてこの鳥栖のハイプレスが効いて、浦和は立て続けにビルドアップのミスから失点を重ねてしまいました。
70分には明本のパスを手塚がカット。左サイドからの菊地クロスは一応マリウスが跳ね返したものの、そのこぼれ玉をアーク付近から長沼がズドン!!バイタルエリアががら空きな上にショルツの反応もなんだか鈍くて、この辺がお疲れなのかも・・・
さらに悲惨だったのは75分の失点。鳥栖のハイプレスに怯んだのか、自陣深い位置での小泉の安居へのバックパスがズレてボックス内で河田に奪われる大惨事。いくら得点力に乏しい鳥栖とはいえ、このプレゼントパスを見逃すはずがなく、手塚が決定的な2点目を取って事実上勝負あり。
浦和は興梠&関根投入後鳥栖を自陣に押し込む時間帯こそ長くなったものの、左右からのクロスが誰にも合わないだらけで得点の気配皆無。最も惜しかったのは74分右サイドから大久保クロスが僅かに興梠に合わなかった場面でしょうか。
84分には荻原→大畑、大久保→岩波と代えて3バックに変えるものと思いきや、なんとマリウスを最前線に上げたパワープレーに!! しかし、この形はいかにも練習してないっぽい上に鳥栖DF陣の防空能力がピッカリ田代を中心に結構高くて何の脅威も与えられず。90+2分に岩尾FKからマリウスヘッドで折り返し、興梠→明本と初めて良い形を作るも明本のシュートは仕様通りはるか上空へ飛んで試合終了。
《総評》
「ACL決勝直後の試合は何かと難しい」と方々から聞いていましたが、やはり難物でした。ACL決勝の死闘で疲労困憊のレギュラー組に多くを期待するのは難しいとしても、やる気に満ち満ちているはずの控え組もたいして良いところなし。控え組がぱっとしないのでレギュラー組に代えたところでたいして良くなる訳でもないどころか、小泉が自爆ボタンを押してジ・エンド。スコルジャもさぞかし頭が痛かったでしょうなぁ、これは。
試合後スコルジャ監督は半ば記者の質問を煙に巻くような意味合いで「より多くの選手を入れ替えていればよかったと、試合後の今は思っています。しかし、これは負けたからそのように言っているだけです」と結果論を口にしていますが、観戦した立場からしてもこの出来ならGKも含めてフルターンオーバーで負けたほうがまだ納得感があったと言わざるを得ません。
でも鳥栖の出来も褒められたものではなく、最悪スコアレスドローにはなると思ったけどなぁ・・・悪条件がいろいろあったとはいえ下位に低迷するチームにホームで負けてはいかんでしょう。そして未消化3試合で勝ち点9を積み上げて首位に躍り出る計画は早々と雲散霧消しました。リーグ戦で優勝を狙うならこういう試合で勝ち点ゼロは拙かろうに・・
シュート数16対6(うち枠内15対4。但しプロックされたシュートが非常に多くてDAZNの数え方は過剰な気も)、CK数10対2、ゴール期待値(笑)2.09対0.47と凄まじいスタッツが並んでいますが、試合を見ている限りは相手GKを脅かした回数は圧倒的に鳥栖のほうが多くて、これらのスタッツが示すような浦和優位の試合という印象は全く受けませんでした。浦和の決定機らしい決定機なんて39分の大久保&シャルクだけでしょう。
30分くらいから浦和がボールを握って鳥栖を自陣に押し込む時間帯が長くなりましたが、そこから決定機らしい決定機を作ったのは先述の39分だけ。なんか相手にボールを握られるのが大前提のアルヒラルに対して勝機を見出すことに特化し過ぎて、リーグ戦でコンスタントに勝ち点を積み上げるやり方をすっかり忘れてしまったような試合でした。その辺のチューニング、再調整をやるには中3日、いや一日オフがあったので中2日では無理だったということなのかも。
・怪我をおしてACL決勝に出ていた臭い酒井は当然ながらこの試合はベンチ外。右SBには明本が回りましたが、この試合みたいにサイド攻撃しか可能性がない展開になるとクロスに多くを期待できない明本右SBはかなり無理がありました。しかも明本は最初の失点の契機にもなってしまい、右SBの人選ミスが祟った気も。はなはだ結果論になりますが馬渡を起用したほうが可能性があった気が・・・
・外国人枠の関係でACL決勝のベンチには入れなかったリンセン、モーベルグ、シャルクは雪辱を期してこの試合に臨んでくるものと思いきや、なんとリンセンやモーベルグはベンチ外!!これには心底驚きました。そして出場したカンテもシャルクもこれといって良いところ、格の違いを見せつけるようなプレーは見せられずじまい。なにせ相手DFから見て「まかり間違えば一発でやられる!!」という怖さがない。
・外国人補強はCBが大当たりな反面、前目が全部微妙っちゅーのはなんでやろうなぁ・・・また浦和の2列目って守備貢献度はめっちゃ高いけど、得点力がしょぼすぎて、カップ戦で守り勝ててもリーグ戦でコンスタントに勝つには力不足なのもこれまた明白。よってあんまり持ち上げるのはどうかと思います。
・ACL決勝みたいなビッグマッチには半ば以上お祭り気分でワラワラ観客がやってくるけど、その客は次のリーグ戦にはそんなに来ないというのは過去何度も経験済。隣の兄ちゃん二人は初めて埼スタに来たっぽくて、ACL優勝効果は皆無ではなかったのしょうが、この試合の観客数は18000弱に留まりました。この数値は2019年の最小(大分戦:19,698人、金曜日で雨)を下回るものです。
・観客が少なかったのはビッグマッチ明けの平日の試合、かつ中3日&中3日の埼スタ3連戦で3試合とも行くのはしんどいからでしょう。ただ次のガンバ戦で3万を切るようだとコロナ禍の3年で観戦習慣を失った方がめっちゃ多いという可能性が非常に高くなり、クラブとしては深刻な問題となってしまいます。
-----カンテ------
シャルク---安居--大久保
---岩尾--伊藤---
荻原-マリウス--ショルツ-明本
-----西川-----
(交代)
60分 カンテ→興梠
60分 シャルク→関根
70分 伊藤→小泉
84分 荻原→大畑
84分 大久保→岩波
-----小野-----
岩崎---西川---堀米
---河原--藤田---
菊地-山崎--田代-原田
-----パク-----
(得点)
70分 長沼
75分 手塚
(交代)
56分 小野→本田
56分 西川→長沼
67分 堀米→河田
67分 藤田→手塚
89分 岩崎→島川
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