【観戦記】23年ル杯GS第5節:浦和 2-1 川崎 ~ 逆転勝ちで自力首位通過の目が復活!!
選手交代の威力の差は顕著で、オープンな展開になった終盤に手数で勝る浦和が押し切ったような逆転勝ち。ただ浦和が良かったというより川崎が弱くなったという印象が強い試合でした。
《スタメン》
共にリーグ戦から中3日。浦和は予想通り福岡戦からスタメン全員入れ替え。試合前の記者会見で「故障明けでコンディションが上がって来た」との話があったモーベルグが久しぶりにスタメン出場した他、福岡戦で途中投入ながら名指して褒められていた平野や馬渡もスタメン出場。一方福岡戦で壊滅的な出来だったシャルクはベンチ外とスコルジャの選手起用には非常に納得がゆきます。
「酒井は故障が慢性化していて中3日で使うのは厳しい」という話があったので、週末のリーグ戦に備えてこの試合は回避するものと予想していたのですが、なんといきなりベンチ入り。高橋も故障明けで久しぶりにベンチ入り。
川崎はリーグ戦からCB車屋&山村を除く9名入れ替え。脇坂やシミッチは前節横浜FC戦で出場停止でしたが、総じて相変わらず怪我人が多くて誰がレギュラーで誰が控え組なのか判りにくくなっています。
《試合展開》
浦和の布陣自体はいつもの4-2-3-1でしたが、驚いたのは早川が左SHではなくトップ下に起用されたこと。左SHにはリンセンが回りました。リンセントップ下では前プレの強度が確保できないので早川を回したのかもしれませんが、やはりというかなんというか序盤は前プレは効かず、中盤はゆるゆるで浦和の守備は全く体をなさないまま川崎の攻撃を受けてしまいました。
2分にはGKチョン・ソンリョンからのロングフィード一発で川崎の3トップが最後尾に2人だけ残っていた岩波&犬飼に襲い掛かるって、どうなっとるんや、これは・・・ そしてその直後3分にはシミッチが右サイドから斜めのパス→ボックス内で受けた瀬川があっさり馬渡を交わしていきなりゴール。馬渡の対応もお粗末でしたが、シミッチへもノープレッシャーで馬渡だけ責めても仕方ないかと。
ただ浦和にとって幸いだったのは川崎が序盤に一気に畳みかけるような攻撃を仕掛けて来ず、どちらかと言えば浦和にボールを持たせるような試合運びを選択したこと。浦和は川崎の前プレに苦しんでビルドアップに苦労し、序盤は高い位置にいるモーベルグへ運んでそこからの仕掛けで局面打開を図る場面が目立ちましたが、モーベルグは得意な芸風を完全に見切られているのか全くの不発。左SHに回ったリンセンは不慣れなポジションでやる気もないのかほとんど消えている状態。前半浦和の反撃が曲がりなりにも形になったのは22分平野縦パス→最前線でモーベルグが収めて落としたところにカンテがミドルシュートだけ。
浦和の前半は全く良くありませんでしたが、浦和にボールを持たせているように見える川崎も先制後前プレが効いて良い形でボールを奪えている訳ではなく、単なる無駄走りに終始した感もあり、双方ぐだぐだ感の募る状態で前半終了。
後半も最初に決定機を掴んだのは川崎。50分浦和が押し込まれて波状攻撃を受け、早川のクリアが小さくて小塚に拾われたの契機に小塚浮き球で縦パス→ボックス内で小林シュート。しかし枠を捉えきれず。
浦和の反撃が実ったのは51分。カウンターから早川→モーベルグ→カンテと素早くボールを運び、カンテがターン一発で右SB大南を交わしてアーク付近から豪快な一発!!カンテはこれが浦和加入後の初ゴール。
この同点ゴールを機に試合は一気に浦和ペースに。54分FKからの流れで、相手が跳ね返したボールを拾ったリンセンがボレーシュートを放つもGK正面。56分平野のクロスがボックス内のリンセンに通るもこれまたシュートはGK正面。58分モーベルグのクロスがボックス内のカンテに通り、カンテが反転シュートを放つもわずかに枠の外。
浦和の大攻勢を見てスコルジャは「こりゃ、いけるで!!!」と思ったのかどうか、60分には故障明けの酒井を早々と投入。さらに69分には大久保、安居、伊藤を入れて一気に勝負に打って出ました。川崎も同じ時間帯に4選手を入れ替えましたが、選手交代が有効だったのは明らかに浦和。終盤オープンな展開になる中で浦和が手数で次第に勝る格好に。
71分彩艶の酒井へのロングフィード一発で川崎の前プレを空回りに終わらせて浦和にカウンターの絶好機。酒井→大久保のクロスはわずかにボックス内へ飛び込んだ酒井に合わず。
82分カンテのポスト→右サイドから伊藤クロスがボックス内のリンセンに通るもシュートは枠を捉えきれず。85分にはCKのこぼれ球を拾った安居がミドルシュートを放つもGKソンリョンが辛うじてセーブ。
川崎もノーチャンスではなく、87分左サイドからのクロスを途中投入の家長ヘッド。しかしここは彩艶がセーブ。
そして89分へろへろになったカンテが半ば足がもつれたような恰好になりながらも右サイドでどフリーの酒井へ展開。酒井のクロスにたいしてカンテが曲がりなりにも飛び込んだのが効いてシミッチの視界を遮ったのか、ボックス内で棒立ちのシミッチの足に当たったボールがゴールマウスに転がっていきました。
ATは4分もありましたが、特段紛れもなくそのまま試合終了。
ルヴァン杯グループステージ4試合を消化して全部引き分け止まりの浦和。今季のレギュレーションは「5グループ中各グループ1位と各グループ2位の成績上位3チームのみが決勝トーナメントへ進む」というものですが、浦和のいるB組は完全な団子状態なので2強2弱の組と比べると2位の勝ち点が少なくて、2位ではグループステージ突破は怪しい状態。よって浦和は残り2試合を連勝して首位通過を狙うしかありません。
とはいえ、浦和はACL決勝を終えた後の超過密日程下でもあり、ルヴァン杯は大胆にターンオーバーして控え組主体で闘わざるを得ないのも致し方ないところ。
控え組の底上げを図りながら結果も出すという極めて難しいタスクをスコルジャは背負った格好になりましたが、結果は見事川崎を撃破。そして一気にグループステージ首位に躍り出て、次の最終節アウェー清水戦に勝てば自力で1位通過が決まることになりました。
結果はもちろんのこと、「控え組の底上げ」という点でも収穫が多かった試合だったと思います。立ち上がりいきなりの失点に象徴されるように総じて守備はかなり怪しくて、札幌みたいに壮絶などつき合いを志向するチーム相手だったら派手なスコアながらも大敗した可能性はあったかと思いますが、組織的なものには目を瞑り、レギュラー組に混ぜて使う際の個々人の特徴なり、今のコンディションなりを見極める点では非常に有意義な試合だったかと。
見方を変えれば、なんで川崎は先制後浦和にボールを持たせるような試合運びをしたのかなぁ。試合後の鬼木監督のコメントを読むと意図的に持たせていた訳でもなさそうで、「自信を持ってボールを動かす」ようなことがすっかり出来なくなったようでもあり、川崎も弱くなったという印象が強く残った試合でした。
《選手評等》
・MOMは同点ゴールを決め、決勝点にも絡んだカンテで文句なし。カンテは「ボールが収まる上に周りも見えている」といった既に解明済のスペックに加えて、ついに本来期待されていた点取り屋としての能力を垣間見せてくれました。カンテが最後足がもつれてるのに酒井に展開してる辺りは、「こけているのに懐が深くてボールを失わない」カンテ芸と根っこが一緒!!ただカンテを1トップで使うと全体に裏抜けの意識が無くなる気がしました。なんでだろうなあ、これ?
・モーベルグは得意の左足を完全に封じられてしまいましたが、コンディションが上がっているのは確かでこの出来なら大久保の負担軽減にはなりそう。どちらも途中投入でも活きるタイプですし。
・リンセンはボックス内で仕事するタイプという点ではユンカーと同じで、サブでも文句言わない代わりにあんまり点は入らない感じかなぁ。CFやSHはどう見ても無理で2トップの片割れしか使い道なさげ。実際後半はそんなポジションに入って決定機に絡みまくっていましたが、一点も取れず。でも正しい使い方が判ったのが収穫でしょう。
・宿題も終わって、いきなりトップ下に抜擢された早川。最初はガツガツ当たってくる相手に潰されがちでしたが、だんだん慣れてきて牛若丸状態になっていました。前プレ要員としてはまずまずの出来。この出来なら「メディカル的な理由で」福岡戦はベンチ外になった小泉に代わってリーグ戦でもコンスタントにベンチ入りは出来そう。小泉は「ストーブさん」になってる場合やないで・・・
・彩艶は西川を見慣れるとやっぱハイボールへの対応は相変わらずチト怖いけれども、前プレしてくる相手に対してロングフィード一発で浮いている味方選手に付けて交わすのはめっちゃ上手い!!71分の決定機が決まっていたら彩艶が絶賛されていたでしょうに。あれは惜しかった。
・しょっちゅう最終ラインに降りてくる岩尾を見慣れると、全然降りてこない柴戸&平野は結構新鮮でした。後ろが重くなりがちなのが浦和の得点力不足の一因なら、岩尾と平野の序列はいつ逆転しても不思議はないのかも。柴戸と伊藤はだいぶ差がありそうでしたが。
・犬飼は攻守ともに結構怪しくて、試合勘のなさ丸出しと思ったけどなぁ。大畑も山田にぶち抜かれているようではまだまだ。馬渡は最初の失点への対応を見たらやっぱスタメンとしては明本の次の3番手になるわなぁ。基本ビハインド時の特攻要員。よってリーグ戦で最終ラインは岩波だけがコンスタントにベンチ入りしているのも道理。
・ルヴァン杯&平日&シーチケ対象外&埼スタ工事やACL決勝の影響で5~6月はホームゲームがやたら多いと悪条件が重なったせいでしょうが、この試合の観客数は12,366人と寂しいものに。でももはや「頭がおかしい方(褒めてます)」しか来てないので、人数の割にはやたら盛り上がる点でACLのグループステージにスタジアムの雰囲気が似ていました。そして客が入らないのは浦和だけではないどころか、一万人を超えているのは浦和だけだったみたいで・・・
-----カンテ------
リンセン---早川--モーベルグ
---柴戸--平野---
大畑-犬飼--岩波-馬渡
-----彩艶-----
(得点)
51分 カンテ
89分 オウンゴール(シミッチ)
(交代)
60分 馬渡→酒井
69分 モーベルグ→安居(4-4-2気味になり、リンセンFW、安居左SHへ)
69分 平野→伊藤
69分 早川→大久保(大久保右SHへ)
80分 柴戸→髙橋(髙橋左SH、安居CHへ)
瀬川---小林---山田
--小塚----脇坂--
-----シミッチ-----
佐々木-車屋-山村-大南
-----ソンリョン-----
(得点)
3分 瀬川
(交代)
58分 瀬川→遠野
73分 小塚→橘田
73分 脇坂→瀬古
73分 小林→宮代
79分 山田→家長
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