立ち上がりからやや広島ペースで試合が進み、案の定先制点も奪われてしまいましたが、そこからの反撃が凄まじいのなんの!!見事な逆転勝ちでした。出来れば最初からこれをお願いします(苦笑)
《スタメン》
ACL決勝の影響で先送りになっていた第11節。共にリーグ戦前節から中3日。しかもその前の週は水曜日にルヴァン杯を消化しているという点でも全く同じスケジュールの両者。
浦和は興梠→カンテ、大久保→モーベルグ、荻原→明本とスタメン3名入れ替え。「酒井は故障が慢性化していて中3日で使うのは厳しい」という話があったはずなのに中3日でスタメンで出てきたのには心底驚きました。また福岡戦で負傷した明本は結局ルヴァン杯を休んだだけでこの試合はとうとうスタメンに復帰。
カンテ&モーベルグがついに揃ってスタメン出場となり、興梠&大久保がベンチスタート。中3日で鹿島戦が控えており、さらに来週は天皇杯&横浜C戦と続く過密日程ゆえ、「ACL決勝メンバー」からちょっとずつ入れ替えを始めたのでしょう。スコルジャもルヴァン杯川崎戦辺りから控え組の底上げに手応えを感じていることでしょうし。
またリンセン&柴戸がベンチ入りした反面、平野&早川がベンチ外に。ベンチ入りを巡っての競争も激しくなっており、「メディカル的な理由」で福岡戦からベンチ外に小泉は大原には戻ってきているものの、この試合もベンチ外に。
広島はエゼキエウ→野津田、柏→東とスタメン2名入れ替え。なお広島は満田が福岡戦で大怪我を負って長期離脱中な他、塩谷が故障中の模様。

《試合展開》
浦和は4-2-3-1(守備時4-4-2)、広島は3-4-2-1といつもの布陣ながら川村が本職のボランチではなくトップ下に入ったのが目を惹きました。
基本フォーメーションは全く噛み合わず、ギャップが出来やすい両者。浦和はカンテ&モーベルグを揃ってスタメン起用したためか、ハナから前プレを捨てたような格好で試合に入りましたが、序盤は広島の厳しい前プレで浦和は自陣に押し込まれがちに。ビルドアップもままならないためかロングボールを多用して広島の高い最終ライン裏を狙う攻撃が目立ちました。
そしてその形がいきなり実りかかったのが6分。ショルツのロングボール→最前線で伊藤が収めてカンテシュートのシンプルな攻撃を仕掛けましたが、シュートは枠を捉えきれず。続く7分にもロングボール攻撃を仕掛けましたが、ボールを持ったまま左サイド奥深くまで走ったモーベルグのボールロストからカウンターを食らい、モーベルグのいない右サイドのスペースに展開されて東クロス→松本の決定機。
浦和は広島の前プレが緩んだ20分くらいからようやくボールを持つ時間も増えだしましたが、攻撃の基本はやはりロングボールから。26分には岩尾ロングボールの跳ね返りを拾った関根がシュートを放つも枠を捉えきれず。前半は関根のフィニッシュで終わる場面が目立ち、13分にはCKからの流れ、21分には左サイドからカットインしてシュートを見せ場を作ったものの、ゴールならず。
試合そのものはやや広島ペースにも関わらず、広島はほとんど決定機を作れず、惜しかったのは31分CKからの流れでベンカリファがフリーでシュートを放った場面だけ。しかもベンカリファはシュートを撃ち損ねて、バウンドしたボールは枠内を襲ったものの西川がリフティングで難を逃れました。
そしてこの決定機を逃して以降の前半は完全に塩試合に。広島は左サイドからのクロス攻撃を多用していましたが、単純にクロスを入れてもショルツ&マリウスが控える浦和守備陣を崩すのは難しいんじゃないかと。
そこで先に動いたのは広島。後半頭からベンカリファに代えてヴィエイラを投入したのがいきなり奏功。50分モーベルグのボールロストを契機に野津田縦パス→ヴィエイラがフリック一発でショルツを剥がしたのが効いて、ボールを拾った川村がDF4人に囲まれながらもボックス内突入。川村のシュートこそ西川が一旦防いだものの弾くのが精一杯で、森島が詰めて広島先制。
しかし浦和は失点して初めて目が覚めたかのように大反撃。56分モーベルグクロス→ファーに安居が飛び込んだものの、住吉にブロックされてゴールならず。ただこの場面でGK大迫が安居と交錯して傷んでしまったのが勝負のあやになったかも。もともと大迫のキック精度には定評がないのにこれ以降のキックが壊滅状態に。
ここが勝負どころと見たスコルジャは67分にカンテ→興梠、岩尾→リンセン、モーベルグ→大久保と3枚替え。69分には大久保の縦パスを関根がボックス内で反転、佐々木を交わしてシュートを放つもここは大迫セーブ。71分大久保FKは惜しくもサイドネット。しかし72分右サイドからの攻撃で関根が中央へパス→ボックス内でフリーで受けた伊藤縦パス→最終ライン裏へ抜け出した酒井が角度のないところから大迫の位置を見極めてゴール!!
これ以降はほぼ浦和が一方的に攻め続ける試合展開に。74分リンセンのシュートは意表を突いた感はあったものの、シュートコースが制限されていたのか大迫の正面。
82分には関根に代えて荻原を投入し、久しぶりに左サイドで北関東連合が復活。83分佐々木からのボール奪取に始まるショートカウンターで興梠のシュートはブロックされて枠外へ。88分大久保右サイドからカットイン&シュートという超得意の形を作りながらも最後はまさかの宇宙開発事業団・・・
広島も65分野津田→エゼキエウ、71分茶島→中野、89分森島→柴﨑と選手を代えたものの、浦和とは対照的にその交代はほとんど効果なし。先制点以降の広島のチャンスらしいチャンスは79分左サイドで酒井からボールを奪ってのショートカウンターだけで、そのチャンスも森島や中野のシュートが共にマリウスにブロックされてしまいました。
やたら長いVARチェックや大迫治療のために8分もあったAT。90+2分に酒井クロス→ファーでリンセンヘッドで折り返し→中に伊藤が詰めてついに浦和逆転。逆転された広島はハイボールをバンバン放り込んできましたが、ショルツ&マリウスが聳え立つところにそんな単純な攻撃を仕掛けても全く意味がなく、そのまま試合終了。

《総評》
終わってみればシュート数、枠内シュート数、ボックス内からのシュート数とも浦和が優位。「世界三大がっかりスタッツ」のゴール期待値も浦和が優位。しかも広島のゴール期待値は先制点を取って以降はほぼ横ばいで、浦和が同点に追いついてからはずっと浦和が優位と珍しく試合内容を実に的確に捉えており、スタッツ的にはどこからどう見ても浦和の勝利は必然ということになりましょう。
しかしそれは「終わってみれば」の話。先制点を取られるまでのグダグダ感、シオシオ感からすれば、その後怒涛の大反撃が始まるなんて夢にも思いませんでしたし、それだけに反撃が始まって以降の試合は見応え満点。エンタメとしては非常によく出来た「大活劇」でした。
そして試合後のスコルジャのコメントを聞くとあのグダグダ、シオシオだった時間帯も全ては後半の反撃へ向けての布石思えてくるのだから不思議なもの。「広島の大きな武器は切り替え。つないでいて中で失ってしまうと大きな問題になる」→「立ち上がりは少し長いボールを蹴るというのがゲームプラン」→「それならターゲットになるカンテをスタメンにしよう」→「でも試合を通じてそれをやり続ける訳でなく、スペースが空きはじめたらショートパスでつないでいこう」というのがスコルジャの前半のゲームプランだったようです。広島同様、前プレのきつい京都相手に前節自陣でのボールロストが目立ったことの反省もあったかもしれません。
そして広島の前プレを空転させること自体には成功しましたが、全てがスコルジャのゲームプラン通りだった訳ではなく、「スペースが空きはじめたらショートパスでつないでいこう」のプロセスはあまり上手く行きませんでした。これがグダグダ感、シオシオ感の正体なのかもしれません。
しかも後半スコルジャは「ハーフタイムではより前からプレスを掛けにいこうと話した」そうですが、そんな様子はピッチ上には現れず、逆に広島の狙い通りのカウンターを食らって失点。逆転勝ちしたとはいえ「後半の立ち上がりがあそこまで悪い試合ですと、狙い通りとは言えません。全てプラン通りとは言えません。」とスコルジャがぼやくのも道理。
先制点の場面が典型ですが、広島の「最前線の人に当てる→ちょっと下がった選手が拾う」の繰り返しで前進するのがめっちゃ上手い。あれには感心しました。ボールを確実に前に運ぶことについては浦和は広島に遠く及びません。スキッベが「最初の60分、65分までは、自分たちのほうがいいサッカーをできていたと感じています。」と豪語するのも納得。
ただ広島は比較的良かった時間帯ですら1点しか取れないどころか、決定機もそんなに数多く作れた訳でもありません。この辺はゴール期待値(笑)が高い割には点を取れていない典型みたいで。その主因が前目のタレントの質の問題なのかどうか判りませんが。
そして先制点を取られた浦和が続々繰り出してくる攻撃陣の圧力を受け止められずに終盤広島守備陣が大決壊。広島の守備は常に前がかりで前プレがハマっている時は強力ですが、自陣に押し込まれがちになると案外脆いようで。5-4-1の守備ブロックで耐えるしかなかったJFK広島時代とは好対照。ロングボールを多用して広島の前プレを空転させた前半が広島の電池切れをもたらし、浦和はオープンな攻撃合戦に持ち込むことに成功しました。
スコルジャは終盤の大攻勢の主因についてあまり多くを語りたがらないようで「攻撃的な選手と守備的な選手のバランスを変えました。特に、ホームゲームでは相手が疲れてきたところでこのようなオプションを使っています」と言及するに留まりましたが、交代で出てくる選手の質の差が逆転勝ちに繋がったのは間違いありません。
浦和は1試合消化数が少ない状態で暫定4位に浮上。2位横浜Mまで勝ち点3差となりました。ただ次節は中3日で難敵鹿島を浦和の方がコンディション面で不利な状態で迎えるのでまだまだ安心できません。
《選手評等》
・MOMは文句なしに1ゴール1アシストの伊藤。まさに"BOX to BOX"の権化となって終盤はピッチ上で大暴れ。広島の川村が日本代表に初選出されて注目が集まっていましたが、こちらは先制点に絡んだ場面以外はいないも同然。森保監督の見る目の無さをこんなところで実感するとは(苦笑)。でも伊藤は終盤あれだけ大暴れしたら、鹿島戦はベンチスタートかも・・・
・関根はあれだけ決定機に絡んでいながら一点も入らないのは正直残念過ぎ・・・でも前半から広島のやたら高い最終ライン裏を脅かす仕事は出来ていたので、スコルジャ的には許容範囲内かも。そして大久保宇宙開発事業団の「まいど1号・2号」にも参りました。浦和のしょっぱい2列目は相変わらず。どんぐりの背比べ感はあるものの、得点能力は安居が一番マシというのも実感。
・酒井は飛び込んでぶち抜かれる失態が2回ありましたが、あれはお疲れなのかなぁ。失点場面でショルツがヴィエイラにやられた場面もですが。
・久しぶりにリーグ戦スタメン出場のモーベルグ。残念ながらしょーもないボールロストが多くて収支はマイナス。大久保スタメン→モーベルグ途中投入のほうが効果的かな、現状では。
・リンセンは投入当初こそどう見ても左SHにいたのですが、どんどんポジションが中へ入ってしまい、事実上2トップ化。リンセンが頑なに既得権益を主張するので、仕方なくスコルジャが荻原を投入して明本を左SHに配転したのには笑いました。リンセンは関東軍かよ!!(北関東ではない)でもボックス内でこそ持ち味を出す選手なのは明白で、決勝点をアシスト。
・この試合のDAZN解説は永井。DAZNはあのOBの浦和戦解説が非常に評判が悪いことを知って意図的に避けはじめ、その代わりに坪井や永井を起用しだしたのかな?
・森島のゴール後のVARチェックがやたら長かった原因は現地ではさっぱり判らなかったのですが、オフサイドの可能性をチェックしていたとは。非常に際どいオンサイドだったようですが、オーロラビジョンでは何をチェックしているのか流してくれず。うーん、エンタメとしてどうなの、この辺・・・
・先制したのにクローザー不在で逆転負けするってめっちゃ広島カープ・・・
-----カンテ------
関根---安居--モーベルグ
---岩尾--伊藤---
明本-マリウス--ショルツ-酒井
-----西川-----
(得点)
72分 酒井
90+2分 伊藤
(交代)
67分 モーベルグ→大久保
67分 カンテ→興梠
67分 岩尾→リンセン(リンセン左SH、関根トップ下、安居CHへ)
82分 関根→荻原(リンセンFWで4-4-2。明本左SH、荻原左SB)
90+5分 安居→柴戸

-----ベンカリ-----
--川村----森島--
東-野津田--松本-茶島
-佐々木-荒木--住吉-
-----大迫-----
(得点)
50分 森島
(交代)
HT ベンカリファ →ヴィエイラ
65分 野津田→エゼキエウ(エゼキエウがシャドー、川村CHへ)
71分 茶島→中野
89分 森島→柴﨑