ただでさえアウェー鳥栖戦は苦手なのに、鳥栖は週央に試合がない反面浦和は中2日と日程面でのハンデが大きい一戦でしたが、的確なローテーション&選手交代で見事に凌ぎきっての逆転勝ちはお見事でした!!
《スタメン》
浦和は前節湘南戦から中2日なのに対し鳥栖は週央に試合なし。アウェー鳥栖戦ははただでさえ苦手なのにコンディション面での大きな不利を抱えた試合となりました。ちなみに今年はホーム鳥栖戦もACL決勝の直後というあんまりな日程に苦しめられて敗戦。
そんな中で浦和のスタメンは前節湘南戦から関根→髙橋、興梠→カンテと2名入れ替えのみ。大ベテランの興梠は中2日での連闘は難しく、関根は湘南戦でほぼ90分使ったため、この両名を入れ替えたものと目されます。
湘南戦を負傷欠場した荻原がベンチに戻って来た(=金曜日に大原にいることが公開されていたのでサプライズ感ゼロ)ので馬渡がベンチ外に。
鳥栖は右SB原田→福田の入れ替えのみ。原田は前節湘南戦で脳震盪のため60分で退いたそうです。

《試合展開》
浦和の試合の入りは悪くはなく、しかも試合開始早々伊藤がいきなりミドルシュートを放って、前節湘南戦に続いて「シュート撃て撃て」指令を忠実に実行したように思われましたが、先制したのは鳥栖。
6分カンテの横パスをカットされたのを契機にカウンターを食らって浦和右サイドを崩されそうになったピンチこそ折り返しをショルツがカットして事なきを得ましたが、その直後の7分左サイドに人数をかけた鳥栖の攻撃が嵌まり、堀米→手塚ダイレクトクロス→長沼ヘッドでいきなり鳥栖先制。
非常に勝率の悪いアウェー鳥栖戦で早々と先制点を取られたのには正直がっかりしましたが、11分敵陣で相手のスローインを奪ったところから浦和が反撃。岩尾→大久保→伊藤のパス回しで右サイドから伊藤が裏抜けに成功。伊藤がグラウンダーのクロス→ニアに走り込んだカンテがトラップ一発で相手DFを剥がし、角度のないところからGKのニアをぶち抜く妙技を見せてたちまち同点に追いついて、暗雲を振り払ってくれました。あそこから点を取ってくれてこそ前目の外国人FWを補強した甲斐があったといえましょう。
鳥栖はGKパクを使って相手の前プレを交わすのが巧いせいか、浦和は前プレを控えて高めの守備ブロックを敷いて鳥栖の巧妙なパス回しの前に我慢する時間帯が長くはなりましたが、相手の攻勢を耐え凌ぐのはある意味浦和の得意技。鳥栖はただボールを保持しているだけでこれといった決定機は作れず。30分にバイタルエリアからの堀米シュートが枠内を襲ったものの、マリウスが前にいてシュートコースが制限されている上に、撃ってくるのが西川に判ってしまうようなシュートはディフレクトでもしない限り今の西川相手ではまず入りません。
逆に浦和は耐えている時間帯が長いものの19分大久保FK→マリウスが飛び込んでGKと交錯→こぼれ玉を髙橋が詰めるもDFがブロック。32分大久保右サイドからハイクロス→ファーで髙橋ヘッドも枠外。34分伊藤縦パス→右サイドから酒井クロス→逆サイドに大畑が飛び込むも宇宙開発事業団(というか酒井がそもそもオフサイド)と鳥栖よりはゴールに近い形を量産していました。
そして浦和の逆転ゴールは意外な形から。カンテが自陣ハーフライン手前でファウルを受けたところで岩尾が素早くリスタート。しかもGKパクが前に出ていることを確認した上でロングシュートを試みるという誰もが予想しえない格好でリスタートし、パクはバックしながら触るのがボールに精一杯。弾き切れずに岩尾のロングシュートが見事に決まりました。
逆転された鳥栖はその後もボールを握っている時間が長いだけで浦和の最終ラインを崩しきれずにカウンターを食らいがちになり、浦和は45分右サイドから伊藤クロス→バイタルエリアでカンテシュートの決定機(枠外)。
ゲームの主導権を握った浦和は56分カンテ→興梠、髙橋→関根と中2日の連闘を考慮して早めに2枚替え。しかもこの交代が非常に面白かったのは単に運動量を補充しただけなく、前半控え気味だった前プレを始めだしたこと。
前プレを交わすのが巧い鳥栖の最終ライン&GKもこの浦和の出方の急変に戸惑ったのか、浦和の前プレにハマってしまう場面が続出し、59分鳥栖のスローインを高い位置で酒井がカットしたのを契機に興梠のポストプレー→関根が狙いすましたかのように巻いたシュートを放ったものの。ここはGKパクが好セーブ。
しかし浦和の前プレは思いのほか効き目があって、鳥栖はボールを握ったところで前半とは一転してビルドアップに四苦八苦。もちろん浦和もお疲れで前プレは長続きせず、守備プロックを敷いて待ち構える時間帯も次第に長くなっていきましたが前半ほど押し込まれることはなくなりました。
さらに浦和は70分に岩尾→早川、大畑→荻原とこれまた早めに代えて運動量を補充し、75分伊藤が自陣でのパスカットから独力かつ強引にボックス内突入&角度のないところからシュート、77分大久保→酒井がオーバーラップして折り返しもCB山崎がなんとかブロック、77分早川CK→関根ヘッドもわずかに枠外と追加点こそ取れないものの良い形を量産。
一方鳥栖の選手交代は何の効果もなく、最後に投入された藤田のロングスローに一縷の望みを託すも86分藤田→長沼がニアでフリック→富樫ヘッドが惜しかったくらい。それ以外はハイクロス攻撃も含めて浦和両CB+酒井に淡々と弾き返されてそのまま試合終了。
《総評》
繰り返しになりますが、ただでさえ苦手のアウェー鳥栖戦なのに、日程面で大きな不利を抱えての一戦。引き分けでも御の字と言いたいところですが、上位陣がなかなか負けないので中下位チーム相手に取りこぼす訳にはいかないという非常に難しい試合でした。
梅雨に入って蒸し暑い中で、中3日&中2日で続く3連戦。最初の川崎戦で明本&荻原が負傷するというアクシデントもありながら、スコルジャは現有戦力で「使い物になる」と判断した選手を厳選し、その中でローテーションしながらこの3連戦を2勝1分で乗り切りました。
この試合は先制されたものの、その後鳥栖に決定機らしい決定機はなく、後半の鳥栖はほぼノーチャンス。決勝点こそ意外な形でしたが、試合を通じて決定機の数は浦和のほうが明らかに多く、決定機の数の差をそのまんま反映したようなスコアで浦和の完勝といって差し支えないでしょう。DAZNの記録では鳥栖はシュートを10本も放っていますが、ブロックされたものが多かったようで公式記録ではたった5本。また枠内は2本しかありませんでした。
「浦和の得点が少ないのは決定力不足ではなく、それ以前にロクに決定機すら作れていないこと」と評された時期もありましたが、湘南戦を契機にその難点は解消されつつあるのは明白。スコルジャが試合後「練習では相手の背後に抜けることと、そこにタイミングを合わせることを強調して行ってきました」と語るような練習の形そのまんまな決定機が随分増えてきました。得点に繋がりませんでしたが、77分の酒井の裏抜けがその典型かと。
また湘南戦から始まったスコルジャの「シュート撃て撃て」指令は単にシュート意識を引き上げただけでなく、ゴールを狙えるかどうか絶えず相手の隙を伺うという意味での「ゴールへの意識」を引き上げたのかもしれません。38分岩尾のロングシュートがその典型でしょう。
もっとも岩尾の弁によれば、これは「GKが積極的にビルドアップに参加するチームで背後の処理も含めて非常に高い位置を取るような場合は、セカンドボールかリスタートのところでシュートを狙え」とのミレッGKコーチのアドバイスを実行したものに過ぎず、川崎戦の関根のゴールも同じとのこと。いやはや、GKだけでなくフィールドプレーヤーまで成長させるとは、ミレッGKコーチ恐るべし!!
またこの試合で面白かったのはスコルジャは選手交代と同時にあからさまにギアチェンジしたこと。試合後の会見では「30分を過ぎたころからはあまり効果的なハイプレスをかけることができなくなってしまい、ミドルゾーンでセットすることが多くなりました。」「後半は体力のことも考え、常にハイプレスをするのではなく、行けるときにハイプレスをかけるように変えました。」と前半のほうがハイプレスをかけていた時間が長かったような話をしていますが、どう見てもハイプレスが効果的だったのは興梠&関根投入の直後だったかと。
一方鳥栖は先制点の場面のようにサイドに人数をかけでフリーでクロスを上げる選手を作るのは上手いもののただそれだけ。クロスの精度が往々にして残念な上に、そもそもサイドからのクロス攻撃はショルツ&マリウスを擁する浦和相手には通用しづらいという問題があって、結局のところ先制点の場面以外これといった決定機は作れないまま試合を終えたように見受けられました。また自陣でのスローインを奪われて2度決定機を作られた辺りはちょっと根が深い問題かも。
さらに鳥栖の選手のコメントを読むと「もっと横に揺さぶったり、遠めから打っていくことも少しずつ出していかないとブロックを作る相手を動かせない。もう少し工夫が必要かなと思います」という話に集約されるように相手が「ボールを持たせる系」「しっかり守備ブロックを敷いてくる系」というのはあんまり得意じゃないみたいで。「あそこまでブロックを組まれるというのはここ数試合なかった」と語っているところを見ると、まさか浦和がその系とは思わなかったのかもしれませんが、なんせ浦和は中2日だから「守り勝つ」やり方を選択するのは不思議でも何でもないかと・・・というか、今の浦和の強みはそれなんで・・・

《選手評等》
・「シュート撃て撃て指令」は伊藤にはちょっと効きすぎたかもしれんな(苦笑) でもスコルジャはあえて咎めることもしないでしょう。75分の激走が祟ってか、85分に足を攣って全く動けなくなってやむなく交代。まことにお疲れ様でした。
・鳥栖の先制点で長沼に前に入られてしまった大畑の対応は非常に残念。これではACL決勝ではアウェーの最初のピンチでやらかして以降はアルヒラルの攻撃を見事に封じた明本と比べると大畑は守備に大きな課題を抱えていると言わざるを得ません。湘南戦の活躍を見るとベンチ入りくらいの立場は確保できそうですが、明本が戻って来た際のスタメン確保はちょっと難しそう。
・それでも辛うじてベンチには入っていた結果、明本&荻原の故障を受けてスタメン出場機会を得た大畑はまだマシなほうで、この3連戦でベンチにも入れなかった選手は非常に厳しい立場に立たされました。「夏の移籍ウインドウが開くまでこの3連戦で少なくともベンチ入りした選手だけで回す」というスコルジャの腹積もりは明確で、ウィンドウが開くと当時に選手の入れ替えが始まると目されます。
・西川のゴールキックが直接タッチを割りまくったのは何だったのか?でも肝心の守備はこの試合も実に安定していて信頼感マシマシでした。
・前半「鳥栖のボールはゴールラインを割っていたんじゃねえのか!!!」とショルツを筆頭に主審に猛抗議していましたが、とにかくJリーグの審判団はクソなんだから、プレーは切れてないのに抗議しつづけるのはどうかと???川崎戦でも今村主審のハンド見逃しを巡ってプレーが切れてないのに抗議する場面がありましたが、その隙を突かれて失点なんてしたらそれこそ目も当てられてない話に。
・アウェーで鳥栖に勝ったのは超久しぶり!!と思ったらそんなことはなくて、2020年第21節でマルティノス激走→汰木詰めるで勝ってました。ただコロナ禍のため、生観戦している赤者が非常に少ないだけで。
・DAZNの実況・解説は「鳥栖がボールを握っている時間帯が長い=鳥栖優勢」という非常に素朴な考え方をしているみたいでしたが、浦和のほうが決定機が多いのをどう思っているのなぁぁ??? 鳥栖寄りなのは構わないのですが、論拠が謎過ぎました。

-----カンテ------
髙橋---安居--大久保
---岩尾--伊藤---
大畑-マリウス--ショルツ-酒井
-----西川-----
(得点)
11分 カンテ
38分 岩尾
(交代)
56分 カンテ→興梠
56分 髙橋→関根
70分 岩尾→早川(早川トップ下、安居がCHへ)
70分 大畑→荻原
85分 伊藤→平野(足を攣ったため)

-----小野-----
岩崎---堀米---長沼
---手塚--河原---
菊地-山崎--ファン--原田
-----パク-----
(得点)
7分 長沼
(交代)
65分 小野→富樫
73分 岩崎→楢原
73分 福田→樺山
81分 堀米→河田
81分 手塚→藤田
※写真は試合とは全く関係ありません。