【TV観戦記】23年天皇杯4回戦:名古屋 3-0 浦和 ~ 「良かった探し」がこれほど困難な試合も珍しい
「良かった探し」がこれほど困難な試合も珍しい。ここまで酷い試合もなかなかない。強いて言えば負けた相手は同一カテゴリーであり、いわゆる「格下」ではなかった、負けて恥ずかしい相手ではなかったことくらいでしょうか。
《スタメン》
共に直近の試合から半月ちょっとの中断期間を経ての一戦。
浦和のスタメンは中断直前のC大阪戦と全く同じ。中3日でリーグ戦の大一番横浜M戦が控えているとはいえ、天皇杯優勝が24-25年シーズンACL出場へ向けての最短ルートであることから全く手抜きせずに「ベストメンバー(苦笑)」を揃えてきました。
しかしサブに彩艶がいないのがビッグサプライズ!!! 彩艶は巨額の移籍金を用意したマンチェスターUからの獲得オファーを断ったという話が出たばかりで、それを受けて今後浦和は「カップ戦は彩艶で行く」腹積もりを立てたのだろうと思っていたのですが、ここでまさかのベンチ外となると不意の故障でもなければどこかへ移籍間近なのかも・・・
彩艶に代わって牲川がベンチ入りした他、リンセンがベンチ入りして小泉がベンチ外に。故障した明本が相変わらずベンチ外なのは復帰が予想より遅れているのかどうか。
名古屋はサウジのアル・タアーウンFCへの移籍が決まり、明日(8/3)チームを離れると伝えられていたマテウスをスタメン起用したのには心底びっくり。4回戦の会場「CSアセット港サッカー場」はJリーグでは使えない会場でピッチ状態も良くはなさそうで、怪我でもして移籍話が急転破談になったらどうするつもりなのかと他人事ながら心配しましたが・・・
また名古屋は中断明け直前の京都戦からユンカー→酒井、ターレス→永井、和泉→野上とスタメン3枚変更。名古屋は次のリーグ戦まで中2日しかないので、それを睨んでのローテーション含みでしょう。
立ち上がりから浦和がボールを握る時間がやや長いものの、受け手の動きが鈍くてマンマーク気味に守る名古屋守備陣に捕まったまま。特に興梠は後ろからのハードなチャージを受けてボールキープもままならず。それゆえ浦和は最終ラインでボールを持ったところで出しどころに困って高い位置にいる荻原に出すのが精一杯で全く攻撃の形を作れず、次第に名古屋のカウンターを浴びがちに。
13分森下、21分マテウス、23分永井とミドルシュートを枠内に撃たれるもいずれも西川が難なく対応していましたが、25分ついに浦和ゴールが決壊。
24分バイタルエリアでマリウスが判りやすいハンドを犯し、25分好位置からマテウスが強烈なFKを直接ぶち込んで先制。マテウスのFKは高速な上に縦回転がかかっていて、最初は西川の正面に飛んだように見えましたが、最後は左に動いた西川の逆を突く格好に。
両チームとも中断明けで試合勘がないと思しき選手が少なくない中、マテウスは動きといい、その切れ味といい、相変わらずの運動量の多さと言い、まさに別格。名古屋でのラストゲームに万感の思いを込めたような、モチベーションMAXなプレーぶりには恐れ入りました。長谷川監督がマテウスをスタメン起用した博打は大当たり。
36分からマテウスCKから名古屋に三度決定機。マテウスCK→中谷どフリーでヘッドはゴールマウスのカバーに入った関根がクリア。37分マテウスCK→河面ヘッドは西川が辛うじて掻き出してセーブ。38分マテウスCKからの流れでマテウスがバイタルエリアで浮いていた稲垣に展開し、稲垣ミドルが枠を急襲するもまたまた西川がセーブ。
浦和の攻撃は最後まで体をなさず、決定機どころかシュートも撃てない。強いて言えば最後の最後で酒井が裏抜けに成功し、興梠に折り返すも全く合わなかったのが「良かった探し」でしょうか(自虐)。
あんまりな前半の内容を受けてスコルジャは怒りの3枚替えでもするかと思ったところ、超意外なことに交代なし。そして多少なりとも受け手の動きが良くなったせいか、あるいは関根と安居のポジションを変えたのが効いたのか、前半よりはボールが前に進むようになったものの、チャンスになりそうなところで悉く足を引っ張ったのが大久保。
肝心なところでボールコントロールに失敗するわ、判断が遅れた末にボールを失っておまけにイエローまで貰うわと散々。典型的な「悪目立ち」状態に。試合後の酒井のコメントだと右サイドは大久保・伊藤・酒井でローテーション出来ていたとそれなりに手応えを得ているようですが、その中で大久保が「攻撃の終点」という意味での「ターミネーター」と化して傍目には全然機能しているとは思えず。
そんな浦和を尻目に名古屋はカウンターでチャンスメーク。53分マテウスが自陣で1人をはがし、左サイドを激走する森下へスルーパス。しかし、森下のシュートは枠を捉えきれず。
スコルジャは65分に興梠に代えてカンテを投入。68分に立て続けにCKのチャンスを得るも依然決定機は作れず。そこで74分岩尾→リンセン、関根→早川と代えて反撃に転じようとした矢先、同じ74分に投入されたユンカーがいきなり大仕事。ゴール前に駆け上がった稲垣とユンカーによるボックス内でのパス交換、そして「ボックス内で前を向いたら任せろ!!」といわんばかりの実にユンカーらしいお仕事ぶりで名古屋が追加点。
試合内容ではどんなにボコボコにされようとも1点差で耐えていれば偶然だろうがアクシデントだろうが同点に追いつく可能性があるのがサッカーの恐ろしいところで、浦和はそんな妙な粘りが持ち味のチームだったはずですが、2点目を取られるともういけません。得点力の無さが露わになって単なる弱小チームに転落するだけでなく、何をやろうとしているのすら皆目判らなくなってしまいました。
84分には名古屋のカウンターが炸裂。荻原が途中投入の米本に股抜きパスでぶっこ抜かれたのを契機に、野上がどフリーでクロス→ファーでこれまた途中投入の和泉が合わせて決定的な3点目を取って事実上試合終了。2失点目、3失点目の情けないところは浦和の守備の頭数は揃っているのに皆目役に立っていない点。どうしてここまで大崩れするようになったのか・・・
《総評》
半月ちょっとの中断期間があったとはいえ、スコルジャはACL決勝後の過密日程を経て溜まりに溜まった疲労感払拭を優先して1週間ものオフを取ったため、当然ながら中断期間中の練習は1週間ちょっとに留まった模様。途中FC東京との練習試合(45分×2本、30分×1本)で0-4の大敗を喫したという報もあり、戦前は「試合勘が戻っていないかも?」と懸念してはいましたが、天皇杯4回戦の惨状は予想を遥かに上回るものでした。
疲労困憊すぎて球際の競り合いにまるで勝てなったC大阪戦と比べると、一週間もオフをもらった甲斐あってかフィジカル的にはC大阪戦よりだいぶマシなように伺えましたが、問題はフィジカル面ではなく頭の方。これまでやっていたことがすっかり頭から抜け落ちてしまった、なんかメモリがすっかり消去されて白紙に戻った気さえしました。
スコルジャが試合後「今シーズンはスタートのところがあまり良くなかったのですが、そこから少しずつ良くなってきましたので、同じようにまたゲーム勘をつかんでいけば改善していけると信じています。」と語っていますが、その言葉通り「ゲーム勘」を失った状態からのスタートになってしまったようです。
ただ開幕戦と違ってもはやリーグ戦も半ばを過ぎ、試合を重ねながら調整するには残り試合数が少なすぎて調子が戻って来た頃にはシーズンも大詰めを迎えている気が。そして中断明け2試合目の相手は奇しくも開幕時2試合目と同じ強敵横浜Mだという巡り合わせの悪さ。またしても横浜Mにボコボコにされてしまう悪い予感が・・・
・中断期間中に宮本がレンタル先から復帰し、安部・エカニット・中島と獲得しましたが、いずれもベンチ外。中断期間中に補強した選手はACLプレーオフから続く過密日程から使い物になればOKで、そこまでは中断期間前と実質的に同じというか頭数は減った状態で臨むのは個人的には想定内でした。
・ただ中島は故障持ちの安部よりは即戦力に近い、近くないと困る選手のはずなのに、その中島をいつから試合に出せるか明らかに出来ない(西野TDの言い方では「「言えるところと言えないところがありますので、間もなく出場可能だという表現でお許しいただければ」)というのはめっちゃモヤる。コンディションの問題ではなく、リーガルな問題の匂いがプンプンしますが・・・
・そして獲得した選手が稼働しはじめるまでは既存の選手が頑張ってくれれば良かったのですが、残念ながらこの試合は前目、特に2列目のあんまりな出来には頭を抱えるしかありませんでした。リーグ優勝を狙う、いや優勝争いに加わるには2列目があまりにもしょぼすぎることはずっーーーーと指摘され続けていて、実際その指摘通りにFB本部は動いてはいたのですが、この試合での2列目のしょぼさを目の当たりにすると「なんで即戦力を取ってこなかったのか!!!」と言われても仕方ないでしょう。
・しかも悪いことに名古屋へレンタル中のユンカーに点を取られての敗戦。レンタルなのに「キャスパー ユンカー選手は2023シーズン公式戦にて浦和レッズの『ホームゲーム』には出場できません。」となんとも不可解な条項が付いていて、天皇杯は浦和のホームゲームではないのでユンカーが出てきて、しかもその得意な形でゴール。ユンカーをレンタルに出したこと自体にはそんなに異論はないのですが、こんないかにも足元を見られたような条項を飲んでまでレンタルに出す必要はあったのか、FB本部の交渉力にはかなり疑問符がつきます。
・前目の外国人選手は沈黙のまま、レンタル中の選手に点を取られ、補強した選手は出場せず。これではFB本部が焼き討ちの憂き目に合うのは必定。やろうとしていることは間違っていないものの、プランを実行する段階で交渉が下手すぎるのか、どうにも結果がプア。いやCBと監督は当たりくじを引いているのでまるでダメな訳ではないのだが、編成全体としては失敗の連続としか言わざるを得ないような・・・そしてその割には土田SDが復帰してからFB本部からの発信はめっきり減ってしまいました。体制は維持しながら人を代えるしかないんじゃないかなぁ、もはや・・・
・試合終了後に何やらひと騒動あったようですが、その件についてはおいおいクラブから出されるであろう事実関係の公表を待ってコメントします。
-----興梠-----
関根---安居--大久保
---岩尾--伊藤---
荻原-マリウス--ショルツ-酒井
-----西川-----
(交代)
65分 興梠→カンテ
74分 岩尾→リンセン
74分 関根→早川
84分 伊藤→柴戸
84分 荻原→大畑
-----酒井-----
--永井----マテウス--
森下-稲垣--内田-野上
-河面--中谷--藤井-
-----ランゲラック----
(得点)
25分 マテウス
75分 ユンカー
84分 和泉
(交代)
HT 永井→和泉
74分 酒井→ユンカー
77分 内田→米本
90+3分 マテウス→ターレス
90+3分 森下→貴田
※写真は試合とは全く関係ありません
| 固定リンク