攻撃面では窮余の一策と思われたリンセンの起用が当たり、守備も第一戦から大幅に改善されて全く歯応えがないG大阪をホーム埼スタで軽く一蹴。実りが多い一戦でした。
《スタメン》
浦和は第1戦から髙橋→リンセン、シャルク→関根、牲川→西川とスタメン3名入れ替え。第1戦でのシャルクのスタメン抜擢同様、リーグ戦ではベンチにすら入れずほぼ戦力外と見られていたリンセンをここでスタメン起用したのには心底驚きました。
また故障をおして出場を続けていた酒井がついにベンチ外になったもサプライズ。また新潟戦で負傷したショルツは試合前の監督会見で「第2戦に向けては準備できています」と話していたのでスタメンに復帰するものと思っていたところベンチ入り止まり。
さらに中島は第1戦で「ピッチに立って間もなく、相手とのチャレンジの中で筋肉を痛め、その後は普通にプレーできない状態になってしまいました」とのことでベンチ外に。過密日程をこなす上でこれ以上故障者を増やしたくないのか、プライオリティーの低いルヴァン杯では無理使いを避けたようです。代わって久しぶりに馬渡がベンチ入り。
G大阪のスタメンは中3日での連戦にも関わらず第1戦と全く同じで、代表招集でラヴィを欠く以外はほぼフルメンバーの構成。G大阪が今季タイトルを獲れる可能性を残しているのはもはやルヴァン杯だけなので、ここに全力をぶつけてくるのは道理。
《試合展開》
第1戦で1点ビハインドとなったG大阪はとにかく堅守浦和相手に2点以上を取らないといけない立場なので頭からフルパワーで攻めてくるかも?と思ったのですが、特にそんな様子はなく試合の入りは五分五分。そして8分浦和がセットプレーで先制していきなり試合が動きました。
岩尾CK→密集から引いた位置にいたリンセンがどフリーでヘッド!!CB佐藤がわざわざシュートを避けるように身を交わしているのも助けられた気もしますが、試合後の弁によるとリンセンは「オランダではCKからこのようなゴールをかなり決めていましたし、CKでチームの武器としてプレーしていました」とのこと。「身長はそれほどありませんが、タイミングはしっかり取れます」というのは暢久型みたいで。
この得点シーンもさることながら、この試合ではセットプレーであれこれ工夫している様子が垣間見られました。26分には左サイドでFKの場面で荻原が意表を突いて中央後方にいた岩尾へ戻し、岩尾が浮き球を入れてボックス内奥で岩波が折り返すといういかにも仕込んだっぽいプレーもありました。試合後の会見ではスコルジャは攻撃のセットプレー担当の前迫コーチの仕事ぶりを絶賛。
合計2点リードで一気に試合運びが楽になった浦和。第一戦ではG大阪に好きなようにボールを回されてドン引きに陥る時間帯が長かったことを反省してか、第2戦は明らかに前ハメ志向を強めて最終ラインを高く保とうとしていたようです。スコルジャも試合後「もちろん、ハイプレスの改善などは第1戦の後に行ってきました。第1戦ではビルドアップのところでフリーにさせてしまいましたが、それを阻止するようなプレスをかけました。」
そんな中でリンセンが全然動かないのには参りましたが、それでも試合後いろんな選手が「中を締める」「中を使わせないようにする」といった言葉を口にしているところからすると、リンセンは動かないなりにパスコースを消すとか、アンカー山本をケアするとか最低限の仕事はしていたという勘定になるのかな?
その結果浦和の最終ラインは全然下がらず、それどころか時折カウンターが発動。ただその好機に関根が往々にして攻撃の終点に。フィニッシュに繋がったのは前半終了間際の一回だけでしょうか。それでも浦和は第1戦と違ってボールを握る時間帯もそれなりにあって前半は終始優勢だったといって差し支えないでしょう。前半G大阪のチャンスは29分珍しく縦パスがCFジェバリに収まって岩波がイエローをもらい、好位置でのFKを与えた場面だけで、しかもFKは壁を直撃。
計2点のビハインドにも関わらず全く良いところがなく前半を終えたG大阪は後半頭からダワンに代えて宇佐美を投入。浦和はなぜか第1戦より遥かに出来が良かった早川に代えてシャルクを投入しましたが、早川はU-21枠要員として準決勝でも欠かせないのでイエロー累積を避けたのかな?
浦和は50分右サイドで細かくボールを繋いで小泉がアーク付近にいた荻原へ横パス→荻原は左サイドでどフリーだった関根へ展開するも関根のシュートはコースが甘すぎて東口は難なくセーブ。
52分前線でシャルクがボールを収め損ねるどころか跳ね返りが自陣深い位置まで転がってジェバリに渡ってしまう大惨事があり、バス交換で西川と一対一になったジェバリは西川を交わしたところまではパーフェクトでしたが、シュートはなんと枠外へ。そして終わってみればこれがこの試合G大阪最大かつ唯一の決定機でした。
60分浦和は今季一番かもしれない圧巻のプレーを披露。右サイド深い位置から軽快にポンポンポンとパスを繋いで最後は小泉が縦パス→リンセンがヘッドで繋いで関根がDF二人を前に巻いたようなシュートを放ったものの枠を捉えきれず。最後は「浦和の残念な2列目」になってしまいましたが、あれが決まっていたら伝説になっていたかもしれない見事な崩しでした。まさか浦女でしばしば見られる流麗なパス回しがメンズで見られるとは!!
浦和が押し気味ながら追加点が取れない嫌な流れでしたが、63分G大阪を押し込んだ状態から待望の追加点。アーク手前から小泉が左の荻原へ展開→荻原がワンタッチでグラウンダーのクロス→ボックス内のリンセンの左足が炸裂!!リンセンはCBの監視を逃れてフリーになるのが実に上手い。まさにボックス内での仕事師。ボックス外で理不尽な仕事をするカンテとは正反対のFWなので上手く噛み合うと良いのですが。
あとは71分明本→ショルツ、小泉→髙橋、77分岩尾→柴戸、関根→カンテとお疲れの選手を順次交代。ショルツ投入後は3バックにすると思いきや、ショルツをなんと右SBに配する奇策!!
さすがにこの一連の交代は無理があったようで最後は毎度お馴染みのドン引きに陥ってしまってG大阪に随分シュートを撃たれましたが、そのシュートはブロックされたり枠に飛ばなかったりとこれまたお馴染みの展開に。西川をびびらせるようなシュートは全くなかったかと。
また一連の交代で後方からパスを出せる選手&ボールを縦に運べる選手がいなくなり(特にCH)、攻撃は全く成り立たないなと思っていたところ、86分右サイドからシャルツがクロス。これがカンテスルー&リンセンスルーで左サイドのシャルクまで抜け、シャルクのシュートが右SBに転じていた黒川に当たってコースが変わったのが幸いしてゴール!
もうシャルクは「やることなすこと上手く行く」という順回転コースに入ったみたいで。そしてリンセンは既に2ゴール上げて上機嫌なのか、舎弟シャルクに見せ場を作ってやろうという兄貴らしい心遣いが見え隠れ。
第2戦は今季の浦和らしいスコアレスドローで計1-0での勝ち抜けを予想していましたが、思わぬ大量得点で計4-0での勝ち抜け。いやはやこれには恐れ入りました。
《総評》
カップ戦なので結果が全て、勝てば良かろうであって、それ以外は全部オマケ。しかし、そのオマケが極めて大きい試合でした。
第1戦でのシャルクの一発に続いて、第2戦ではリンセンが大活躍。しかも「かいしんのいちげき」に過ぎないかもしれないシャルクと違って、第2戦のリンセンのゴールはいかにも再現性がありそうな形。また60分のプレーなどゴールのお膳立てみたいな仕事もこなし、さらに守備も最低限のタスクはやっているっぽい(ここは自信なし)。
正直リンセンもシャルクも戦力外だろうと思っていたのですが、両人とも夏の移籍期間では買い手がつかずにそのまんま塩漬けに。ところが浦和FB本部が無能すぎて夏の即戦力補強は中島だけに留まり、その中島すら小破。さらに大久保も故障していよいよ前目の駒が足りなくなったところで、スコルジャは蔵で塩まみれになっていたリンセン&シャルクを仕方なく使ってみたらこれが大当たり。
スコルジャは全く仕事をしないFB本部に言いたいことは山ほどあるでしょうが、そこを山本五十六ばりにじっと堪えて使える駒でなんとか結果を出しました。使い物になるとは全く思っていなかったリンセン&シャルクをどう説得し、どう騙して試合で本来の力を発揮できるようにもっていったのかは判りませんが、それこそまさにマネージャーとしての監督のお仕事。戦術の仕込みなんてコーチ任せで選手のマネジメントがスコルジャの真骨頂なのかも。
またついに酒井を休ませ、小破したショルツの代わりに岩波を我慢して使い、カンテも短時間の出場に留めるなどリーグ戦やACLの大一番で欠かせない選手をプライオリティーの低いルヴァン杯で無理使いせずに結果を出したのも大きなオマケと言って良いでしょう。明本だけは酷使しつづけているようですが・・・
連戦また連戦で練習は回復メニュー中心にならざるを得ないはずなのに、セットプレーの仕込みをやっているっぽいのも目を惹きました。
細かい話をすれば、スコルジャはG大阪の様相が前回リーグ戦での対戦時からだいぶ変わっていることに第1戦で気づいて、第2戦で守備面中心に早速修正した辺りも高く評価できましょう。G大阪とは2週間後にリーグ戦で再戦しますが、次はどうなることやら?
《選手評等》
・小泉のSH起用って以前はあまり良いイメージがなかったのですが、守備が劇的に良くなってて今や全く違和感なし。また監督も指摘するようにしょーもないボールロストが激減。攻撃時はサイドに張りっぱなしではなく、中へ入ってSBに大外を使わせる得意のお仕事。何か吹っ切れたみたいで再ブレイクの気配濃厚!!
・リンセン2点目で事実上勝負がついてしまったせいか、落胆を通り越して腑抜け面になっている宇佐美を大写しにする埼スタのスイッチャーは実に容赦ない。
・77分のカンテ投入でピッチ上についに5人の外国人選手(カンテ、リンセン、シャルク、ショルツ、マリウス)が揃い踏み!!これは浦和では極めて珍しい光景で過去あまり記憶にありません。なお紛らわしいのですがカルロスは外国人選手ではありません(苦笑)。
・久しぶりにベンチ入りした馬渡はプレースタイル的に負けている時の特攻要員しか使い道がないから仕方ないのですが、勝っている時の「ピッチャー鹿取」としてショルツをSB起用されるとなると全く立場なしで気の毒でした(つД`)
・関根の再三の決定機逸に象徴されるように浦和のサイドアタッカーの残念さには頭を抱えたくなりますが、G大阪4-1-2-3の布陣なのにWGにタレントがいないっちゅーのもなかなか泣けました。あと頼みのCFジェバリ(通称ニセカンテ)ははコンディションが良くないのかなぁ?
・ルヴァン杯準決勝の相手が横浜Mなのは過密日程同士で公平感があって実に良い感じ!
・吹田ではビジターはサイドスタンドアッパーの片隅に押し込められているので埼スタでは報復的な措置があるかな?と思っていたらそんな様子は全くなく、日曜のナイトゲームにしては驚くほどガンバサポがやってきました。メインアッパーのビジター用指定席がルヴァン杯では設定されないせいで、自由席がやたら売れたのかもしれませんが。
・試合前の会見でスコルジャは重要な話をしていたので、備忘録代わりに書き留めておきます。
◇大久保の状態:トモはリハビリを始めているところですが、来週、病院にいってもう一度検査し、そこでどれくらいかかるのかということがはっきりします。9月中にトモを見ることは難しいかもしれません
◇安部の状態:かなりいい形でコンディションを上げてきていましたが、筋肉の張りが強まった時期がありましたので、1週間くらいチーム全体とは別でトレーニングしていました。もう練習に復帰し、日々コンディションを上げている状況です。9月には裕葵は見られないと断言はできません」
-----リンセン-----
関根---早川---小泉
---岩尾--安居---
荻原-マリウス--岩波-明本
-----西川-----
(得点)
8分 リンセン
63分 リンセン
86分 シャルク
(交代)
HT 早川→シャルク
71分 明本→ショルツ
71分 小泉→髙橋
77分 岩尾→柴戸
77分 関根→カンテ(カンテがトップ下気味、シャルクが左SHへ)
アラーノ---ジェバリ--食野
--ダワン----石毛--
-----山本-----
黒川-佐藤--福岡-高尾
-----東口-----
(交代)
HT ダワン→宇佐美
69分 石毛→倉田
69分 食野→山見
84分 髙尾→藤春