ゴラッソかPKじゃないと点は入らない反面、どんな形であれとにかく点が入ってしまうと鬼強いという"This is URAWA"な試合でした。
《スタメン》
第1戦で早川が負傷退場。ルヴァン杯はU-21の選手を起用しなければいけないレギュレーションがあり、彩艶離脱後浦和はU-21に該当する選手は早川と堀内しかいないので、第2戦は当然堀内が起用されるだろうと思ったのですが、浦和のメディカルスタッフがめっちゃ頑張ったのか、なんと早川がスタメン出場。
しかしこの強行出場は相当ギリギリの判断だったようで、試合後に漏れ出た話ではウォーミングアップで最終チェックをしていたんだとか。しかもウォーミングアップでは攻撃陣がシュート練習をする際に早川が練習から外れたのが判ったのでスタンドでは動揺走りまくりでしたが・・・
また出場停止の酒井の代わりは関根を配転。ショルツや柴戸を配転する案もあったでしょうが、試合後の監督会見では「攻撃的にプレーしないといけないということで、最も攻撃的なタカをサイドバックに置くというオプションにしました」との説明。
それ以外に浦和は第1戦から柴戸→髙橋とスタメ計3名ン入れ替え。ベンチには馬渡と故障明けの大久保が入って平野がベンチ外に。馬渡は右SBが本職なのに監督のチョイスから完全に外れていて気の毒ですが、いくら攻撃的でも守れない選手は使ってもらえないということなのでしょう。
横浜Mは渡辺→喜田、ナムテヒ→西村、ヤンマテウス→水沼とこちらもスタメン3枚入れ替え。第1戦で負傷退場した渡辺は大過なかったようで、ベンチ入り。

《試合展開》
共に立ち上がりから前から厳しくプレスを掛け合う試合展開。スコルジャが試合後「しっかりと寄せて、相手にフリーでプレーさせないことが我々の狙いでした。」と語る通り、浦和はとにかく横浜Mの攻撃を前で潰そうという意図が強く伺われ、この試合を通じてショルツやマリウスが前に出て横浜Mの攻撃陣を潰すプレーが頻繁に見られました。なんかかつての槙野を髣髴させる芸風で。
言い換えれば前後半ともしっかり守備ブロックを作って耐える時間帯はあんまりなかったように見受けられました。
そんな中横浜Mは序盤サイドチェンジを多用して、左サイドでエウベル対関根の一対一に賭けるわかりやすい仕掛けに出てきましたが、そういう地上戦には関根は案外強くてその形から横浜Mは決定機を作れず。関根が苦手なのはおそらく右サイドからファーへのハイクロスでアンロペと競り合う羽目になること。そこからの折り返しを西村がズドンなんて食らったら即死だったかもしれませんが、そんな攻めを横浜Mがやらなかったのには助けられたかも。
そして最初に決定機を作ったのは浦和。15分関根のサイドチェンジから左サイドで荻原クロス→ボックス内でカンテが相手を背負いながらボールを収めて、どフリーの早川ゴールが決まったと思いきや、長いVARの末にオフサイドの判定。極めて微妙な判定でしたが、「オフサイドポジションにいた選手がプレーに関与したかどうか」みたいな審判の主観の入るような場面ではないので、この判定は受け入れざるを得ません。
逆に横浜Mは23分永戸のミドルシュートがバーを直撃。39分には右サイドから水沼が対面の荻原の裏へスルーパス→西村が決定機を掴むもここは西川がセーブ。
浦和は前半かなり前がかりになって攻めていましたが、早川ゴール取り消し以降はこれといった決定機は作れずじまい。特に髙橋&関根のコンビが急造すぎるせいか、右サイドからの攻撃には全く可能性を感じませんでした。
左サイドからのクロスのターゲットとして右SHに髙橋を置いているでしょうにその形はなかなか作れず、高橋が右サイドタッチ際でボールを持っている時の何も起こらなさ加減にはホトホト参りました。さすがにこれは拙いとスコルジャも思ったのか、後半はカンテ&髙橋2トップ気味にシフト。小泉右SH、早川左SHへ。
一方横浜Mは前半傷んだCB上島に代えて後半頭から實藤を投入。
浦和の布陣変更が奏功して、53分関根の横パスを受けたカンテがアーク付近からシュートという良い形(シュートはブロックされる)。
そして61分左サイドで荻原が裏抜けしながらクロス。これはGK一森が弾いたものの、こぼれ玉を拾おうとした早川を背後から永戸が倒してしまい、谷本主審は躊躇なくPKを宣告。63分ショルツが一森の逆を突いてゴール右に決め、2腺合計で同点に。
その直後66分エウベルがカットインから際どいシュートを撃たれるがわずかに枠外。
70分横浜Mが水沼に代えてマテウスを投入したのを見て、72分浦和は早川→興梠、小泉→大久保の勝負手に。78分大久保が右サイドを深く抉りながらも鋭いクロスが誰にも合わないという「いかにも大久保」なプレーに懐かしさを覚えながらも、この時間帯に浦和が大攻勢。
79分岩尾CK→マリウスが足で合わせるもGK正面。80分岩尾CK→カンテヘッドはブロックされてCKに。81分左サイドから荻原クロス→カンテヘッドが炸裂するもクロスバー!!
流れを変えたい横浜Mは83分エウベル→宮市、ロペス→植中、さらに87分喜田→渡辺と交代。しかし88分荻原のクロスがボックス内で實藤の手を直撃。主審はいったんノーファウルと判定したもののVARが介入してハンド=PKと判定変更。
90+1分ショルツのPKは左ポストに当たりながらもゴールに吸い込まれ、浦和が2戦合計でついに逆転。今度はGK一森も同方向に反応しており、試合後ショルツも「ポストに当たったのはリスクがあったと思う。ただしポストに当たらなければGKが触っていたかもしれない」と語るくらい際どいものでした。
VARで時間を使ったためか、ATはなんと7分も。90+6分には宮市が際どいミドルシュートを放ったが西川が辛うじて片手でセーブ。これはもう撃つ方も凄ければセーブするほうも凄いというスーパープレーの連続で、試合後西川も「昔の自分だったら、両手で(セーブに)いって、届かないで終わっていたと思う」と語り、ジョアン・ミレッGKコーチと積み重ねた片手セーブの練習が実ったものだったようです。
浦和は90+6分に髙橋に代えて柴戸を投入するまで守備固めらしい交代はなし。このスコルジャのクソ度胸には恐れ入りましたが、実際は関根を代えるに代えられなかったのでしょう。ショルツがめっちゃ効いているので、今更岩波を投入して右SBショルツもないでしょうし。
終了間際にはマテウスの浮き球に飛び込んだ角田と西川が交錯して共に傷む場面があり、その隙に植中がこぼれ玉を拾ってシュートを放つも枠外。傷んだ西川はなんとか立ち直ったものの角田は担架で退場となり、さらにATが追加されたようですが何事もなく試合終了。
《総評》
シュート数12対7、CK12対2というスタッツが示す通り、浦和の方が攻めの手数が多かったのは事実ですが、最後の宮市の一発に象徴されるような「相手GKをびびらせた回数」という意味での決定機の質という意味では横浜Mに分があったようにも感じました。やっぱりここぞというチャンスに枠内にシュートを撃ってこれる攻撃陣のクォリティーでは横浜Mには到底かなわない。
ただ浦和も浦和で両CBを中心とする守備陣の奮戦で相手のシュートコースを限定出来ている上に、最後にキャリアの晩年になって再成長中の西川が控えていて、そう簡単にゴールを割らせない。面白くはないが、これはこれで圧倒的な強み。
そして第1戦で1点ビハインドを負った浦和はリスクをかけて盛んに攻め、シュートも撃った割には決定機らしい決定機は少なかったもののPKが二つも転がり込んで逆転に成功。あとはそのリードを守り切って逃げ切りという、いかにも今季の浦和らしい試合内容、"This is URAWA"な試合で決勝進出を決めました。
得点は2つともPKでしたが、これは攻め続けた結果なので浦和の逆転勝ちは偶然でも運の良さでもないでしょう。岩尾が試合後「PKになるくらい際どいところでプレーできているのはポジティブだと思います」と率直に評価している通りかと。
ただ岩尾も続けて「クロスのクオリティーや人がどこに入っていくのかということはもう少し整理する必要がありますし、相手にとって怖い動きはまだまだ改善できると思います。あそこまで行けているということは評価できると思いますが、PK以外で1点、2点、3点を取ろうと思ったときにそこのクオリティーはどうしても必要になると思います。」と反省しており、ゴラッソかPKじゃないと点が入らない浦和はシーズンも終わろうとする時期なのにまだまだ課題山積(苦笑)。
浦和は2016年来7年ぶりのルヴァンカップ決勝進出。相手はアビスパ福岡に決定。こちらは初めての決勝進出。しかも福岡はリーグ戦では中位に留まっていますが、浦和と福岡との試合はいつもスコアレスドローのイメージ。負けそうな相手でもないが、勝てそうな相手でもないという極めて面倒な存在で、PK戦まで行く覚悟は必要でしょう。決勝なのでどちらのサポでもない第三者が観戦することもあろうかと思いますが、クソつまらない試合になる可能性が極めて高いのでその覚悟で。
そしてルヴァン決勝進出で浦和の試合日程はますます過密に(浦項とのアウェーゲームが中3日になったのが一番きつい!)なってしまいましたが、スコルジャが試合前会見で「10月中に怪我人が全員戻ってくるであろう」が効くんでしょう、きっと。
《選手評等》
・ACLでアルヒラルと対戦すると、Jリーグにいる外国人選手程度ならビビらずに済むっちゅーのはデカいなあ。関根良かったで、ホンマ
・荻原は試合後のインタビューで感極まって号泣。どうも第1戦自分の失態でビハインドになったのをめっちゃ気にしていたみたいで。でもこの試合は第1戦と違って荻原のクロスがそこそこ攻撃の基点になっていました。PKはいずれも荻原のクロス絡みですし、早川の幻のゴールも荻原のクロスから。
・ショルツのモーゼ攻撃が今や常態化しててしょっちゅう海割れ、ほぼアクアラインになっているのには苦笑せざるを得ません。
・早川は主力として決勝まで行ったんだからニューヒーロー賞になっても全然不思議はないのですが、どうせ浦和には上げないんだろうなぁ・・・
・第1戦の荻原のPKは不運に近い一方、この試合の横浜MのPKはどちらも不用意に近いもの。2つめのPKで横浜Mの攻撃中にVARが介入してプレーを止めたのにはさすがにびっくり。京都戦での謎過ぎる「リンセン不介入事件」が尾を引いたのかな?
・浦和とのアウェーゲームには近年いい思い出しかないせいか、マリサポがわんさかやってきて、メインアッパーのビジター指定席は類例を見ないレベルにまで拡張されて大賑わい。そして帰りの日吉行きにうなだれたマリサポがアホほど乗ってて、東川口過ぎたら赤者より多いのには参りました。なおマリサポはあんなに声出せるならペンライト要らんやろうと思ったけどなぁ(苦笑)
-----カンテ----
小泉---早川---髙橋
---岩尾--安居---
荻原-マリウス--ショルツ-関根
-----西川-----
(得点)
63分 ショルツ(PK)
90+1分 ショルツ(PK)
(交代)
72分 早川→興梠(興梠&カンテの2トップ、髙橋左SHへ)
72分 小泉→大久保(大久保右SHへ)
90+6分 髙橋→柴戸(安居左SH、柴戸CH)
エウベル---ロペス---水沼
-----西村-----
---喜田--山根---
永戸-角田--上島-松原
-----一森-----
(交代)
HT 上島→實藤(負傷による交代)
70分 水沼→マテウス
83分 エウベル→宮市
83分 ロペス→植中
87分 喜田→渡辺