マチェイ スコルジャ監督 退任
先日(11/21)、マチェイ スコルジャ監督が2023シーズン限りで退任することが浦和から公式発表されました。
わずか1年での退任については11/13にスポーツ各紙から一斉に報じられていたので今更サプライズでも何でもありませんが、スコルジャがたった1年で浦和を去るのは誠に残念でなりません。個人的には30年に及ぶ浦和史上でぶっちぎりに優秀な監督だと評価していただけに。
スコルジャが1年で退任する理由については、11/23の定例会見でも「仕事ではなく家族を優先」するためだと改めて強調されました。「家庭の事情」というのは本当の理由を明らかにしたくない際に良く用いられるタームですが、スコルジャは「シーズンが終わったところで、数ヵ月は家族と共に過ごしたいと思っています。数ヵ月が5ヵ月なのか6ヵ月なのかはまだ分かりませんが、それが終わったところで、もう一度仕事をしたいと思っています」とまで語っているので、巷で噂されるポーランド代表監督等具体的なオファーを受けて退任するわけではなさそうです。母国ポーランドから遠く離れた極東の地で家族と離れ離れになるのはスコルジャには思った以上に大きなストレスだったのかもしれません。
スコルジャが成し遂げた仕事の最たるものがACL2022優勝。監督就任からACL決勝まで準備期間が半年もない上に、オフにユンカー・江坂・松尾と前目の流出が目立ったにも関わらずギアクマキス獲得に失敗して戦力的には前年比マイナスと思われる状況下での快挙だったのでもうこれは絶賛する以外ないでしょう。ACL決勝まではスタメンをほぼ固定して「とにかく負けないことを優先する」戦術の浸透を優先し、それまではルヴァン杯どころかリーグ戦すらテストの場として活用。そして10回やって1回勝てるかどうかと思われるくらい実力差があった相手に僅かな勝ち筋を見出して、その勝ち筋を見事に引き出す強運ぶり!!いやはやこれには恐れ入りました。
ショルツ&マリウスというJリーグでは突き抜けたレベルのCBを有し、おまけに最後尾にはミレッコーチの下で再成長を遂げた西川が控えている守備陣は極めて強固で、ACL決勝後も浦和が昨年より早いペースで勝ち点を積み上げる基盤となりました。
ただACL優勝によりプレーオフを経てACL23-24への出場がきまったこともあって、今季の浦和は超過密日程に。スコルジャが「私が今シーズンまだ満足がいっていないところは、ビルドアップからの攻撃の面です。もう少し時間があればという側面もあると思います」とぼやくように、監督&スタッフは超過密日程の中でとにかくコンディション調整に明け暮れ、攻撃面での積み上げに乏しいどころかリカ時代よりもビルドアップが下手になっているような感すらありました。従って勝ち切れないどころかやたらスコアレスドローの試合が多く、これが優勝に届かない主因になってしまいました。
またシーズン序盤のメンバー固定→控えとの実力差拡大→ACL後もスタメン固定に近くなってしまうという悪循環に陥ったせいか、シーズン後半には大久保・関根・明本そして酒井と主力に怪我人が相次いだのも優勝に届かない原因にあげて良いでしょう。
さらに言えばACL優勝に伴ってシーズン後半は超過密日程になることが判り切っていたにも関わらず、補強が立ち遅れたのはスコルジャには極めて気の毒でした。「安部裕葵や中島翔哉に関しては、もっと早い段階でプレーできるように準備したかったですが、それが少し遅くなってしまいました」と実名を出してぼやくのも道理。
「このサマーブレイクのない中で約60試合を闘っている」「世界中どこを探してもここまでタイトなスケジュールは見つけにくい」とスコルジャに苦言を呈される残念なリーグでスコルジャも「マネジメントの中でも、暑い夏のところでミスを犯してきた」にも関わらず、リーグ戦は2試合を残して3位、ルヴァン杯準優勝、天皇杯ベスト16という戦績を残すとは、もう文句のつけようがありません。
スコルジャが面白いは監督としてはどちらかというとマネージャータイプで、卓越した戦術家ではないこと。戦術の仕込みはどちらかというとコーチ任せのように伺えました。よってスコルジャの凄腕が垣間見られたのは戦術面ではなくマネージャーとしての人心掌握面。開幕時からスタメン固定で、ACLが終わってもスタメンで出る選手、ベンチスタートだが試合に出られる選手、ベンチ入りに留まる選手、ノーチャンスの選手と割とはっきり分かれていたにも関わらず、出番のない選手のモチベーションが下がっている感じが全然しなかったこと。その結果主力に怪我人が相次いだリーグ戦後半で、前半全然出番がなかったリンセンや髙橋が輝きを見せてくれました。
スコルジャ退任により浦和のオフは監督探しから始まることに。浦和は従来の「監督丸投げ」を止めて、「FB本部のポリシーにあった人物を監督に据える方針にしている」ので、その理念通りに事が進んでいるのであれば監督交代でまた一から土台作りにはならないはず。
でも残念ながら昨冬のオフ辺りからFB本部への信頼度がガタ落ちなので、何の連続性も感じられない人事でも特に驚きはないかと。土田SDが「成長のプロセスとしては方向性をいかに継続していけるかが重要だと認識しており、今回の監督交代によって継続が断たれることは決してありません」と言っている後任選びがどこまで真剣なのかが見ものですが、早速スポーツ紙に「Jリーグ経験のある外国人指揮官」という文言が躍っているのを見ると、名前の「ス」や「ジ」が継続している!という可能性もあるからなぁ(苦笑)
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