どうしても試合のクローズに失敗しての逆転負けというイメージが強く脳裏に残ってしまいますが、終始ドタバタした試合になってしまった時点で湘南ペースの試合であり、逆転負けは必然的とまでは言えないものの十分起こりえる試合だったように思えました。
《スタメン》
浦和は前節磐田戦を最後にレンタル契約切れとなったソルバッケンに誰が起用されるかが見ものでしたが、エカニットをスタメンに抜擢したのは超意外でした。また故障していたグスタフソンと前田がベンチ入り。宇賀神は再びベンチ外となり、ベンチにはSBの控えがいない状態に。
湘南は岡本→髙橋、茨田→池田、奥野→山田、福田→鈴木章とスタメン4名入れ替え。なお湘南は阿部・小野瀬・平岡が負傷離脱中。
《試合展開》
浦和の布陣は4-2-3-1でしたが、エカニツトが左SH、武田が右SH。
湘南の布陣は基本3-1-4-2で、守備時は5-3-2ないし山田が前に出て5-2-3気味に構えてから高い位置からプレスをかけてきました。浦和はビルドアップに苦しんで、立ち上がりは湘南に押し込まれる時間帯が長くなるというまさかの展開に。
とはいえ、湘南はボールを持って持ち味が出るチームではないので何も起こらずに時間が徒過しているうちに試合は徐々に浦和ペースに。15分初めて湘南を押し込んだ場面で、エカニットの縦パスを受けてボックス内左から伊藤クロス→武田の決定機はGKが辛うじてセーブ。22分アーク付近から伊藤がいきなり反転シュートを放つもGKセーブ。
しかし前半良かったのはここまで。浦和は磐田戦と違って高い位置でのボール奪回が上手くいかず徒に体力を消耗するだけに終わってしまう場面が目立ち、その傾向は最後まで変わりませんでした。また磐田戦と違って湘南のロングボール攻撃への対応も遅れがちでした。30分に石原が畑に抜けだされそうになってイエローをもらった場面がその象徴。
そしれ32分にはあろうことが自陣深い位置からのビルドアップに失敗、具体的には伊藤のバックパスが畑に渡ってしまったのが契機となって田中の一発を浴びてしまいました。
また上田主審が湘南の後ろからのファウルに酷く寛容でなかなかイエローを出さないのが難儀。何度も危険なファウルをくらっている渡邊はとうとうブチ切れて主審に抗議してつまらないイエローをもらってしまいました。リンセンも不満タラタラでいかにも二枚目のイエロー貰いそう。
1点ビハインドでの折り返しとなったところでヘグモは機能してるとは言い難いエカニットに代えて、前田を投入して前田右SH、武田左SHの布陣に変更。これで浦和が湘南を自陣に押し込む時間帯が長くなり、51分右サイドから伊藤クロス→ボックス内でリンセンがCB高橋に後ろから倒されたように見える場面がありましたが残念過ぎる上田主審が即座にPKを取れないのはまだしも、VARが介入しないのには心底驚きました。
54分カウンターから前田のクロス→渡邊ヘッドの決定機はシュートがGK正面に飛んでしまってゴールならず。
ここぞとばかりに一気に攻め切りたいヘグモは60分武田→グスタフソン、リンセン→サンタナと交代して布陣も4-1-2-3へ。
その直後の62分グスタフソンの縦パスを契機に安居→渡邊とバイタルエリアで細かく繋いで渡邊のパスで裏抜けに成功したサンタナがGKの股を抜いて同点ゴール。64分には大畑クロス→サンタナのシュートがCBキムミンテの腕に当たった場面がありましたが、ここもVAR介入なし(ミンテは腕をしっかり閉じているのでまずハンド=PKはないでしょうが)。
劣勢に陥った湘南は55分鈴木章→福田、68分山田→奥野、池田→石井と前目を続々と代えて運動量を補充。73分にはスルーパス一発でルキアンに裏を取られ、西川の飛び出しでいったんは難を逃れるもボールをこぼしてしまって奥野の一発を浴びてしまいましたが、枠内に飛んだシュートを石原が渾身のヘッドでクリア!!そもそもルキアンがオフサイドだったようで、石原のクリアは記録上なかったことになりますが、終わってみればこのドタバタから浦和の悲劇が始まっていたのかも。
74分渡邊はセンターライン付近から追いすがる田中を振り切りながら独力で持ち運んでスルーパス→サンタナゴールで一気に逆転!!
しかし、その直後に左WB畑の突進を一枚イエローをもらっている石原は止められず、故障明けのグスタフソンの守備はあまりにも軽くて畑→ルキアン→福田の決定機を作られてしまいましたが、福田のシュートはまさかの宇宙開発事業団。
グスタフソンの出来は最悪で守備であんまりな軽さを披露しただけでなく、パスミスも続出。見かねてグスタフソンをトップ下に上げて伊藤&安居の2CHによる4-2-3-1に戻したものの、前からの守備が全然ハマらなかったのががダメージとなったか終盤は伊藤も安居も疲弊してバイタルエリアがスカスカに。
湘南は85分鈴木淳→根本と後ろを一枚削って4-1-3-2に布陣変更。試合後の会見を読む限り、ヘグモもその布陣変更に気づいていたようですが、特段の手は打たず。石原がちょっと傷んだ時点で井上を準備していたように見えましたが・・・
そして90分バックパスを受けた西川はなぜか前田へロングキック。前田が畑との競り合いに勝てるわけがなく。しかも突進する畑に対して前田も石原も実に無力。伊藤が右サイドの防戦に引き釣り出されたのが致命傷になって、パス交換を経て石井に単騎ドリブル突進を許した挙句に同点ゴール。
90+2分には湘南のパス回しの前に浦和守備陣はただ立っているだけになってしまい、ルキアンに逆転ゴールまで許してしまって試合終了。
《総評》
どうしても試合のクローズに失敗しての逆転負けというイメージが強く脳裏に残ってしまいますが、終始ドタバタした試合になってしまった(=浦和がしっかりボールを保持して相手を押し込む時間帯が短い)時点で湘南ペースの試合であり、逆転負けは必然的とまでは言えないものの十分起こりえる試合だったように思えました。
全く相手に何もやらせなかった磐田戦とは対照的に湘南ペースの試合になってしまった主因は守備の破綻だと思います。試合前の会見でヘグモは「5メートル、6メートル、7メートルのスプリントを前に出ながら行う方が、後ろに向かって40メートル、50メートルをスプリントするより体力を使わなくて済むと思います。」と語っていましたが、そんな素早い攻→守の切り替え&複数人による鋭い囲い込みなんて場面はこの試合ではあまり見られませんでした。その結果スプリント回数で大差をつけた磐田戦とは対照的に、この試合は総走行距離どころかスプリント回数ですら湘南に及ばず。
敗戦の弁でヘグモはこの辺「(前半)少し、プレスの部分で苦しんでいたところはありました。」とちょっと触れるだけに留まっていますが、このプレスの空回りが終盤の大決壊の遠因になったような気がしてなりません。
それでも福田のまさかの宇宙開発事業団までは湘南に完全に崩された場面はなく、逆転に成功した浦和がそのまま逃げ切ってしまう可能性はそれなりにありました。しかしそこでクローズアップされるのがヘグモも選手たちも反省しきりなあんまりな試合のクローズ下手。
動けない選手が続出しているのに交代枠を余らせて終わるのがまず腹立たしい。動けないグスタフソンを見るに見かねてトップ下に出した時点で采配ミス確定なのだから、最後はグスタフソンに代えて興梠でも良かったでしょうし、グスタフソンに代えて井上を入れて5バックでも良かったでしょうが、グスタフソンのプライドを考えるとそんな鬼采配は無理だったのかなぁ・・・
前田の出来も酷かった。後半頭からの投入なのに守備で奔走できず、かといって攻撃面では違いを見せられず、攻守両面で対面の畑に負け続けました。怪我人続出でそんな前田を起用せざるを得ないのでしょうが・・・
また湘南はドタバタした試合、オープンな試合が大好きにも関わらず、それに付き合ってしまう試合運びの残念さ。この辺はサンタナが試合後「2-1で勝っている状況で、もう少し自分たちでゲームを支配するべきだったと思います。コントロールした方が良かったと思います。逆に自分たちがスピードアップして前に出て、結果的に失点してしまったと思うので、改善点としては、勝っているときこそ支配すること、コントロールすることだと思います」と語っているのに尽きましょう。
2失点目はバックパスを受けた西川が前田目掛けてロングボールを蹴ったのが契機。あれは全く意味不明。ガチムチの畑に前田が競り勝てる訳がないでしょうに(前田の競り負けは責められませんが、その後こぼれ玉を拾った畑を追わずに諦めて歩いているのは万死に値します!!)。試合をコントロールするのを放棄したようなロングキック。勝敗を分けたような大失着でした。
怪我人の回復は遅々として進まず、グスタフソンや前田の出来を見るとベンチ入り出来ても多くを望むのは無理そう。これで獲得したばかりの本間の浦和デビューは近いかも!!
名古屋戦から続く中下位チーム相手に全勝してやっとACL圏入りの目が復活するかどうかと思っていましたが、一夜にしてその夢は雲散霧消の巻。守れないチームは安定して勝ち点を積めません。そしてやはりヘグモは日本の夏を軽く見過ぎでいるのではないかと心配になる残念すぎる負け方でした。
《選手評等》
・2ゴールのサンタナ。興奮のあまりうっかりユニフォームを脱いでしまってイエローをもらってしまいましたが、めっちゃ嬉しかったんだろうなぁ。サンタナは前節出てきていきなり無理目なミドルシュートを放った辺りにスタメンの座を失った焦りが感じられましたが、リンセンが稼働しだすまでサンタナは使い詰めでお疲れからパフォーマンスが落ちていた感がありました。リンセンにスタメンの座を譲って悔しいのでしょうが、その結果お疲れ感は完全に払拭できて、正確無比のシュートを連発。サンタナとリンセンの競争による好循環で、これがこの試合の数少ない良かった探し。
・根っからの浦和サポ渡邊のことなので、ついに披露された自分へのチャントが梅崎のチャントの転用であることも判っていて感涙にむせんでいるかも。
・それにしても縦横斜めどこからどう見てもクソ主審なのに、その判断を尊重して介入しないVARもたいがいクソやな!!! 審判団のクソっぷりが勝敗に直結した訳ではないのが不幸中の幸いでしたが。
・埼スタが使えない時期でもないのに、この試合はなぜか駒場開催。浦和は最近駒場での成績が良くて「さいたまシティカップを含む16戦無敗中とあって、浦和にとって験の良いスタジアム」だったとは意外でしたが、もういろいろとトップチームの駒場開催は無理がありましょう。
・試合前15時くらいから埼玉県南部は雷を伴う豪雨に見舞われ、キックオフは30分遅れの19時から。それでもピッチ上に水たまりが出来ないのには感心しましたが、芝は随分軟弱になってしまって踏ん張れずに転倒する選手が続出。スタジアムが浦和の選手のホームアドヴァンテージになっていない時点でもう残念すぎ。
・雨が降るとバック2階やメインの大部分は往々にして滝行。試合中は雨が上がったのが不幸中の幸いでしたが、試合前のバック1階コンコースは雨を避ける人だらけでブタ混みに。酸欠で気分が悪くなる方が出ても不思議はない惨状でした。
・通信各社から見ればもはやコンスタントに多くの人々が集まるところではなく、ただの住宅地扱いになっているせいか基地局は整備されずに通信環境が劣悪。その結果QRコードもSuicaもロクに使えない。
・そして極め付きは一向に改善されないトイレ。
・降格も昇格も、そして初のステージ優勝も見てきた駒場。駒場で残念な負け方を喫したことを一つの区切りとして、もう駒場開催は打ち止めで御願いします。もう駒場を有難がる方も激減してチケットは瞬殺どころか売れ残っている始末ですし。
・そして歴史的には駒場から浦和駅への道のりってトボトボ元気なく歩くのが通例なんだよなぁ・・・それが"This is KOMABA"なんやで・・・
-----リンセン-----
エカニット---渡邊---武田
---安居--伊藤---
大畑-マリウス--佐藤-石原
-----西川-----
(得点)
62分 サンタナ
74分 サンタナ
(交代)
HT エカニット→前田
60分 武田→グスタフソン
60分 リンセン→サンタナ
--鈴木章--ルキアン---
畑--山田-池田-鈴木雄
-----田中-----
-鈴木淳-ミンテ---高橋-
-----ソンボムグン---
(得点)
32分 田中
90分 石井
90+2分 ルキアン
(交代)
55分 鈴木章→福田
68分 山田→奥野
68分 池田→石井
85分 鈴木淳→根本