ありがとう、興梠慎三選手!!
先ほど(7/31)、興梠慎三選手が2024シーズン限りでの現役引退が発表されました。
前日に浦和から唐突に「所属選手に関するクラブからの重要なお知らせ」というアナウンスがあり、薄々興梠引退の件だろうと推測していたところ、やはりそうなってしまいました。
興梠は2013年鹿島から完全移籍加入。浦和は2012年にミシャを監督に招聘したものの、CFに人材を欠いてポポや原口を無理やりCFに起用していましたから、興梠の獲得は実に理になかったものでした。興梠は長年鹿島の主力中の主力でしたが、1トップの座を大迫に譲る試合が多くなって出番が減ったのが浦和移籍に踏み切った理由の一つかもしれませんが、それ以上にミシャのサッカースタイルに魅了された面が大きかったようです。なお浦和への移籍は契約切れによる「ゼロ円移籍」でした。
そして待望のCFらしいCFを得たミシャは2013年頭から興梠を鉄板のスタメンで重用。興梠は如何せん鹿島の主力かつ浦和の天敵で、ひげ面の風貌も相まって獲得が決まった時の赤者の反応は必ずしも芳しくなく、「便所コウロ○」と蔑まれていたような記憶があります。
ただ興梠は必ずしも赤者が好意的ではない、簡単には受け入れてもらえないことを自分なりに消化し、「浦和ではピッチ内で、そしてピッチ外でどういう振る舞いが求められるか、逆に何をやってはいけないか」といった事柄を早々に会得(逆に何年浦和にいても最後までこれが判らなかった残念な選手も・・・)したのが奏功して、赤者の心を掴むのにはそんなに時間はかかりませんでした。なにせ第3節アウェー大分戦で早くも興梠のチャントが披露されたくらいのスピード感!!
加入当初はミシャの戦術をこなすのに精一杯で初ゴールは第6節ホーム湘南戦までかかりましたが、シーズン半ばからはコンスタントに得点を上げられるようになり、その年はリーグ13得点で浦和のトップスコアラーに。
最前線でボールが収められ、ボールの引き出しが上手く、おまけに相手DFラインの裏も狙えるという万能型CF興梠はミシャ在任期間中はもちろん、ミシャが去った後の浦和をも支え続け、コンスタントにゴールも重ねて2020年にはJリーグ史上初となる9シーズン連続二桁ゴールをも記録しました。
ミシャが去った後の浦和は監督がコロコロ代わって戦術も一貫性を欠き、興梠の卓越したボールキープ力に頼らないとロクにボールを前に運べない「FC興梠」と言われても仕方ない惨状で興梠には非常に気の毒な日々でしたが、それでも2017年にACL優勝というビッグタイトルを獲得。そして喜びのあまり泥酔状態で浦和の街に繰り出した興梠が吉野家にいた客全員に奢るという伝説も!!(そして奢ったのは吉野家だけではなかったという新事実が引退会見で判明)。
一方興梠に最後まで縁がなかったのがリーグ優勝。2014年は最も代えが効かない興梠が第30節鹿島戦で骨折して戦線離脱したのが契機となって残り4節で大失速。2シーズン制になった2015年はG大阪とのCS準決勝で首の故障が癒えずにベンチ外。2016年鹿島とのCS決勝は2試合ともスタメン出場しましたがリーグ優勝には手が届きませんでした。それにしても自身の故障に加えて、浦和が圧倒的に強かった時に限って2シーズン制が採用されて足元を掬われる興梠は運がないというかなんというか・・・
また興梠は毎年コンスタントに二桁得点を決める選手なのに得点王になったことがありません。興梠の年間最多ゴールは2017年の20得点ですが、その時でも小林悠(23得点)に及ばず。興梠は残念な相手に固め打ちするタイプではない上に、どちらかと言えば難しいゴールは決めるがイージーなゴールを外しがちという「悪球打ち」な傾向があるのが得点王を取れなかった一因かもしれません。
興梠が最後の光芒を放ったのは2023年ACL。札幌へのレンタル移籍からわずか1年で浦和に復帰した興梠は既に大ベテランになってしまいましたが、当初1トップとして期待していたリンセンがどうにもハマらずにスコルジャは興梠に1トップを託してリーグ戦序盤、そしてアルヒラルとの決勝を闘うことに。そして興梠はACL決勝のアウェーゲームで運よく同点ゴールをゲット。続くホームゲームでもボックス内での興梠の挙動が相手のオウンゴールを誘発して浦和に3度目のACLタイトルをもたらしました。
そしてこの試合を最後に興梠は燃え尽きたかのようにパフォーマンスがガタ落ちとなり、今年もクラブの要請を受けて現役続行を決めたものの故障もあって出番は非常に限られたものになってしまいました。
引退会見では引退後のビジョンを聞かれ、ローストチキン屋の運営に徹するのかと思いきや、意外にも指導者志望なことを明言。しかも「浦和レッズの監督になって自分が獲れなかったJリーグのタイトルを獲りに行きます」とまで断言。その道は既に阿部や平川が先にスタートを切っていて、長く険しい道のりになろうかと思いますが、監督としての興梠がどのようなタイプになるのか楽しみです。
長い間ありがとうございました。
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