残念ながら5試合連続勝ちなしという結果に終わってしまいましたが、低レベルの団子レースながらも優勝争いしている鹿島相手に勝ち点1ならJ1残留に向けて前進したといえましょう。湘南戦や札幌戦のような馬鹿げた試合からついにヘグモも足を洗って締まった試合ができるようになっただけ格段にマシ。
《スタメン》
浦和は出場停止のGK西川に代わって牲川をスタメンに起用したのはともかく、二田に代わって故障明けのリンセンをスタメンに抜擢したのはやや意外でした。
試合前の会見でヘグモは「チアゴもフルでトレーニングできていますので、メンバー入りできる状況です。ブライアンも同じです。」と語っていたのでどちらかがベンチ入りするだろうとは思っていましたが、故障明けのリンセンをいきなりスタメンで使うとは!!
リンセンとサンタナが戻ってきたので二田と本間がベンチ外に。二田はともかく本間はコンディションを上げる途上で前節全く良いところなしで終わったのでベンチ外はやむを得ないでしょう。というかCFやWGは今夏の補強の最重要ポイントではないだろうという気も・・・
また前節大失態を犯した井上は引き続きスタメン。
鹿島は知念→三竿、仲間→樋口とスタメン2枚入れ替え。知念はどうも小破した模様。加入したばかりの田川がいきなりベンチ入り。
《試合展開》
浦和の布陣は前節同様はっきりした4-2-3-1。鹿島は立ち上がりから厳しく前プレを仕掛けてきて浦和はビルドアップに四苦八苦した挙句に自陣に押し込まれ続ける苦しい時間帯が続きましたが、8分カウンターで大畑のクロスから良い形を作ったのを契機に、徐々にカウンターに勝機を見出す格好に。
16分鹿島FKからのカウンターで大久保が長い距離を持ち運んでグスタフソンスルーパス→関根の決定機を作りましたが、シュートコースが併走するDFに制限されたこともあってか、ここはGK早川が難なくセーブ。
時間の経過と共に明らかになっていったのは、この試合で浦和ははっきりと守備から試合に入ったこと。鹿島の素早い攻守の切り替え&厳しいプレスにあってビルドアップはままならないと見ると、まるでボールを捨てるかのようにロングボールを多用。当然ながら鹿島に拾われて鹿島得意のサイドからの攻撃を浴びてしまいましたが、そこは割り切って中央で弾き返し続けました。
また鹿島の攻撃の常套手段=ロングボール攻撃に対しては陣形をコンパクトに保ってセカンドボールを拾うことで対応。さらに高い位置にいる濃野へのサイドチェンジに対しては関根が下がって5バック気味になって対応していました。その結果鹿島のチャンスらしいチャンスは39分仲間→師岡のシュートくらいで、それも牲川の正面へ。
浦和の攻撃は低い位置でのボール奪取からのカウンター一本鎗になってしまいましたが、これが案外効果的。34分安居が長い距離を独力で運んで渡邊がシュートを放つもバーを直撃。45+1分にも大久保のパスカットからのカウンターから決定機を作りましたが、渡邊のシュートは枠を捉えきれず。
鹿島は浦和のカウンター攻撃に手を焼いて三竿や柴崎が後方からのファウルや単なるラフプレーを連発していましたが、これらに対して御厨主審がイエローを出さないどころか往々にしてファウルすら取らないのには難儀でした。特に41分に大久保に対する柴崎のファウルは悪質極まりなく、一発レッドでも不思議はないレベルだと思いましたがイエローすら出ないのにはホトホト参りました。
ヘグモは傷んだ大久保に代えて後半頭から中島を投入して、中島トップ下&渡邊右SHへ。そして53分またしてもカウンターから石原アーリークロス→リンセンゴールが決まったかと思いきや、アーリークロスを渡邊がわずかに触れたところでリンセンがオフサイドになっていてゴールならず。
逆に60分グスタフソンがプレスバックしてきた名古に絡まれてのボールロストからカウンターを食らい、独走した鈴木とGK牲川が一対一になりましたが、牲川がしっかり股を閉めてセーブ。さらに64分大畑が鈴木になぎ倒されたことに始まる波状攻撃を食らってしまいましたが、名古のシュートはわずかに枠外。
浦和は61分にリンセンに代えて松尾を投入し、73分素早いリスタートから中島のシュートのこぼれ玉を拾った安居が決定機を掴みましたがGKが好セーブ。それで得たCKからニアへマリウスがすらせて井上シュートはバーを直撃!!
しかし浦和の攻勢はここまでで、その後はほぼ一方的な鹿島ペースに。81分バイタルエリアでのグスタフソンの軽いプレー連発が響いて鈴木のボールキープから→柴崎スルーパス→仲間でゴールを許したかと思われましたが、オフサイドの判定に救われました。DAZNの映像では手前に大畑が残っているように見えましたが、VARでは見え方が違うのでしょう。
浦和は渡邊→長沼、グスタフソン→武田、関根→サンタナと選手を代えるもどれ一つとして機能せず、ATには鈴木が独力でボックス内突入、試合終了間際のパワープレーで左サイドから鈴木クロス→植田ヘッドと危ない場面がありましたが、いずれも牲川の正面を突いてスコアレスドローで試合終了。
《総評》
いよいよACL圏入りよりもJ1残留のほうが遥かに現実的な課題になりだしたせいか、ヘグモはよく言えば確実に勝ち点を取る方向に転じた、悪く言えばいろいろと諦めたのかもしれません。エンタメ性は抜群だが勝ち点は伸びない時期から、くそつまらない上に勝ち点も取れない時期を経て、とうとうエンタメ性は乏しいが着実に勝ち点を取る方向に転じたといっても良いかもしれません。
残念ながら結果は前回対戦時と同じ引き分けに終わってしまいましたが、前回は前半全く良いところなくボコボコにされたのを終盤投入の武田の大活躍でなんとかドローに持ち込んだだけだったのに対し、この試合は正真正銘のがっぷり四つでの引き分けなので内容には大差があります。ヘグモが鹿島の手口をしっかり研究し、対策を取った成果が表れたといってもいいでしょう。
「ボール保持にはそんなに強味がない鹿島に対して浦和がパス数で劣っている」というスタッツに象徴されるようにこの試合で浦和はボールを捨てているように見える場面が多かったのには驚かされました。もっとも町田や福岡のように完全にボールを捨てる訳ではなく、鹿島の前プレが緩い場合はボールを持って休むので試合終了時のボール保持率はほぼイーブン。
そして鹿島得意のサイド攻撃に対しては守備が計算できる大久保と関根をSHに配して対抗。そして低い位置でボールを奪ってカウンターへ。この作戦は見事にハマり、ヘグモが「前半は戦術的にほぼ完璧でした。相手に全くチャンスをつくらせず、こちらはチャンスをつくりました」という試合展開になりました。
残念ながら優勢だった前半のうちに先制できなかったものの、鹿島は如何せんほぼスタメン固定で闘い続けている(=盛夏の試合なのに2人しか選手を代えていないところを見ると、控えとの実力差がでかいのかも)ので、鹿島の終盤の失速に乗じれば浦和は十分勝ち目あり!!と個人的には考えていましたが、意外にも終盤失速したのは浦和のほう。
ヘグモの弁によれば「最後は少し疲れも見られ、特に怪我で離脱していた選手たちにそれが見られました。」とのこと。「怪我で離脱していた選手」って前目は渡邊以外全員なので誰のことなのか全く判らないのですが(苦笑)。グスタフソンに至っては後半のボールロストや軽い守備を見ると単に暑さにやられているような気がしないでもなく。また選手交代もほとんど機能せず、松尾がプレスバックで頑張っていたのが目立ったくらい。
残念ながら5試合連続勝ちなしという結果に終わってしまいましたが、低レベルの団子レースながらも優勝争いしている鹿島相手に勝ち点1ならJ1残留に向けて前進したといえましょう。湘南戦や札幌戦のような馬鹿げた試合からついにヘグモも足を洗って締まった試合ができるようになっただけ格段にマシ。
鳥栖戦の前の会見(8/5)でヘグモは「レッズに来たとき、クラブとして最もやりたかったことが攻撃の発展でした。ですので、スタートから攻撃により時間を割くようにしました」と語っていましたが、この試合を見たらFB本部がヘグモに攻撃のテコ入れを優先させたのが今季の大失敗の始まりだったのかも。ヘグモは同時に「私も基本的にどのチームに行ってもまずは守備から始めます。そこで堅固なプラットフォームを作ります。」と語っており、その線でヘグモがチームを作っていたら全然別の結果が待っていたのかもなぁ・・・
ヘグモって「やろうとしていることは判りやすいんだが、それを選手たちに実装する能力がしょぼい点でまるでペッカーの再来」と思っていたのですが、どうもその見立ては完全に的外れで、やりたいことに見合ってない手駒で無理やりやりたいことをやらされていただけだったのかも。そして手駒に合わせてやりたいことをいろいろと諦めたというリカやスコルジャが辿ってきた道を歩み始めたのかも。
そしてまもなく夏の移籍期間も終わり。ヘグモは「さまざまな理由で今回のウインドーは我々にとって少し難しいものがありました」と既に補強を諦めたかのような口ぶりで、誠に気の毒。浦和FB本部っていったい何なんだろう・・・
《選手評等》
・勝ち点を取りこぼしたことについて対戦相手や審判に責任転嫁するような発言を滅多にしないヘグモが珍しく「しかしながらトモの場面でイエローカードが出なかったというのは、選手を守らなかったという意味で、私には受け入れられません。」と御厨主審を批判。よほど腹に据えかねたのでしょう。大久保が負傷欠場したら、ヘグモの妥協も無駄に終わりかねないからなぁ。
・とにかく鹿島、特に柴崎や三竿のラフプレーに対して全然イエローを出さない御厨主審には参りました。強度が高いプレーとただのラフプレーの区別が出来ないJリーグにありがちな主審の典型。
・そしてその主審を「イエローを出さすによく我慢しています」と妙に擁護する残念なあの解説者。「イエローを出すべきファウルにイエローを出さない我慢」って有害無益でしょうに。
・そういえば実況がわざわざ赤と燕脂って言ってるのに、「スタジアムが真っ赤でどちらかわからない」ってあの方、もう浦和に関わるのを止めてほしいわ、ホンマ。
-----リンセン-----
関根---渡邊--大久保
---安居--グスタフ---
大畑-マリウス--井上-石原
-----牲川-----
HT 大久保→中島(中島トップ下、渡邊右SHへ)
61分 リンセン→松尾
83分 渡邊→長沼
83分 グスタフソン→武田
87分 関根→サンタナ(サンタナCF、松尾左SHへ)
-----鈴木-----
仲間---名古---師岡
---三竿--柴崎---
安西-関川--植田-濃野
-----早川-----
70分 師岡→田川
90+5分 仲間→樋口
※写真は試合とは全く関係ありません。