いやはや恐れ入りました。浦和の監督に復帰し、大原に姿を現してからわずか1週間、しかも腹心のラファル ジャナス&ヴォイテク マコウスキ両コーチが着任していない状態でここまでチームを劇的に立て直すとは!!
《スタメン》
浦和は代表ウィークによる中断期間を挟んでちょうど2週間ぶりの試合なのに対し、G大阪は天皇杯準々決勝から中2日とコンディション面では浦和が有利な一戦。
浦和はスコルジャ監督の復帰初戦なので、監督交代がスタメン選考にどのような影響を及ぼすのかが注目されましたが、浦和のスタメンは前節町田戦から小泉→グスタフソンの入れ替えのみ。サブも前田に加えて獲得したばかりの原口が入ったのが目を惹いたくらいで、ヘグモ前監督時の主力をほぼそのまんま引き継いでのスタートとなりました。。
その反面長沼と二田がベンチ外になり、夏の移籍期間でベンチ入り出来たのは結局原口だけになってしまいましたが。
G大阪は天皇杯から美藤→宇佐美、山田→ダワン、山下→飯野、岸本→松田とスタメン4名入れ替え。天皇杯では宇佐美とダワンを70分からの投入に留めただけで主力が多く出場していたのである程度予定通りの入れ替えでしょう。ただ故障もあってか今季ほとんど出番がなかった食野をここでスタメン起用したのは意外でした。
なおG大阪はCB三浦、SB半田、CFジェバリが故障中。イスラエル代表帰りのネタラヴィ不在はともかく、アラーノもベンチ外なので、上位にいる割にはサブがかなり寂しい感じに。
《試合展開》
スコルジャは守備の立て直しから入ったのか、基本フォーメーションは4-2-3-1、守備時はやや低めの位置に4-4-2の守備ブロックを形成するリトリート主体。暑いせいか前ハメは極めて限定的で、ボールを失った時の即時奪回に多少パワーを使っているだけのように伺えました。
G大阪は守備ブロックが整った状態の相手にサイド攻撃を仕掛けるだけで、攻めの手数こそ浦和より多いものの決定機は全く作れず。チャンスらしいチャンスは35分に坂本がボックス内で反転してシュートを放った場面だけで、それも西川が難なくセーブ。
G大阪はウエルトンを右SHに配して大畑を狙い撃ちするのが狙いのように見受けられましたが、試合開始直後に一度大畑の裏を抉りかかる場面があっただけで、その後は関根&大畑の二人がかりの守備の前に手も足も出ず。後方から松田がウエルトンのサポートに入ると浦和は安居なり渡邊なりリンセンなりが左サイドの守備に加勢して、とにかくCBがサイドに釣りだされて守備ブロックが崩れることがないように気を使っていました。
またG大阪の左サイドからの攻撃は全く成り立たず。食野のスタメン抜擢はどう見ても大失敗でした(苦笑)。
浦和は当然ながらボールを奪う位置が低いのが難。町田戦のように慌ててロングボールを蹴ってしまうことなく、しっかりボールを繋いで攻めようとしている風に伺われました(それゆえ自陣に押し込まれている時間が長い割にはボール支配率に差がつかない)が、再三のG大阪最終ライン裏狙いは全くものにならず、G大阪以上に得点の気配ゼロ。
DAZNのスタッツではG大阪のゴール期待値0.18、浦和にいたっては0.04という共にとんでもない低スコアを叩き出しているのも納得の塩試合でした(苦笑)。
しかし、そんな塩試合を突然打破したのは浦和。49分右サイドで石原のヒールパスを受けた大久保がそのままドリブルで運んでG大阪守備陣を自陣中央に多数引きつけたのが効いて、右サイドで渡邊がどフリーでクロス→ファーに飛び込んだ関根のヘッドが決まって浦和先制。
大久保がドリブルでG大阪守備陣を惹き付けまくったのがほぼ全てなのでしょうが、渡邊に展開した後の大久保はそのままボックスに突入して「俺に出せ!!」と言わんばかりに指先確認。リンセンもクロスのターゲットになろうとボックス内に突入してG大阪守備陣の注意を惹きつけ、彼らが撒き餌をなって小さい関根がフリーになりました。フリーなら背の低さは無関係。昨年の浦女で小さいイトキンがヘッドで点を取りまくった光景とそっくりでした。
攻撃の形を作れないうちに先制点を奪われたせいか、あるいは天皇杯から中二日なのを考慮してある程度予定通りの速めの交代なのか、ポヤトスは57分に食野→山田、鈴木→美藤と早めに代えて宇佐美CF、山田トップ下、坂本左SHに布陣変更。66分には坂本→山下、松田→岸本と代えてウエルトン左SH、山下右SHと布陣を変えましたが、いずれも全く効果なし。
G大阪は浦和を自陣深くに押し込んではいるもののとにかく攻撃のアイデアがなくて左右からのクロス攻撃に終始。しかもそのクロスの精度が劣悪で、あっさりタッチを割ったり、西川に簡単にキャッチされたりの連続。
スコルジャは69分にリンセン→サンタナ、関根→松尾と守備負担がでかくてお疲れの選手を早々と交代。76分に大久保に代えて前田を投入したのはともかく、グスタフソンに代えて原口をまるで「ピッチャー鹿取」のように投入したのには驚きましたが、原口はスコルジャの信頼にしっかり応えて攻守に奮闘しつづけました。
もっとも終盤の浦和の攻撃はアバウトにスペースに蹴りだすだけになってしまい、チャンスらしいチャンスは90分に原口のボール奪取から松尾の一発だけに留まってしまいましたが、G大阪のあんまりな拙攻の連続に助けられ、最後はちょっと傷んだ安居に代えて小泉を入れて念には念を入れて危なげなく逃げ切り勝ち。この日のG大阪の出来なら1点リードで十分だと言わんばかりの「ウノゼロの圧勝」でした。
《総評》
いやはや恐れ入りました。浦和の監督に復帰し、大原に姿を現してからわずか1週間、しかも腹心のラファル ジャナス&ヴォイテク マコウスキ両コーチが着任していない状態でここまでチームを劇的に立て直すとは!!
試合後の会見でスコルジャは「守備の組織、ペナ内のところを重点的に行ってきた。ヘグモ前監督のシステムからの変更点のところです」と語っていましたが、その仕込みの成果がこんなにはっきりと表れるとは。しかもショルツも酒井も明本もいなくなって守備駒は大幅にしょぼくなったのに、全く点を取られる感じがしない守備ブロックの再構築に成功するとは!!
とにかく守備から入る。スコルジャは就任会見で「最初の4試合がこれからのステップになると言いましたが、その1試合目からしっかりと勝ち点を取っていきたいと思っています。」「あまり美しいゲームは見せられないかもしれませんが、チームが勝つための方向性は、しっかりと見せながらやっていきたいと思います」と語っていましたが、この試合はその言葉通りの試合でした。
そして試合後の会見でのスコルジャの弁を借りれば、「よりオープンな状況や攻撃的なプレーもできるように」「選手たちをよりよく知っていけば選手たちをより活用したい。シーズン末までには、システムも含めより活用できるようにしたい。」と今後やりたいことは山のようにある。でもこの試合はそれらを封印して「今は勝ち点が必要なので、セーフティーで安全にやっている」方向に徹したのが見事に奏功しました。
この試合はコンディション面で浦和有利なので、とにかく失点を避けながらシオシオな試合内容でスコアレスのまま終盤戦に持ち込んで「攻撃的な前田や松尾、チアゴを投入してプラン通りのゲームを行った。彼らで点を取りにいくプランだった」のは至極当然。
でもスコルジャにとってある意味誤算だったのは先制点が早い時間帯に入ってしまったこと。今の浦和の手駒は極端に攻め駒に偏っていて守備駒が不足しているので、「シナリオと少し違ったリードしていたので守備が求められ」る展開は大変だったと思います。そしてその穴を「浦和では攻撃的なポジションをやりたい」と公言していた原口をCHに転用してなんとか埋めました。スコルジャの判断も「試合に出るためにはとにかく監督のニーズに応える」と言わんばかりにすっかり大人になった原口の姿も実に見事でした。
この一週間での浦和の変化が劇的すぎてクラクラしますが、ヘグモの8ケ月がまるで無駄だったというのは極論すぎましょう。この試合の唯一の得点はどう見てもヘグモの遺産。前4人がきっちり連携してG大阪の8人の守備ブロックを崩しきるって、「理不尽かPKでしか点が取れない」と揶揄された昨年後半のスコルジャではまず無理な形。
またG大阪程度の前ハメ強度であれば、浦和はパスを回して簡単に交わしていましたが、これもヘグモの遺産。スコルジャも試合後の会見で「時間があまりない中で、ビルドアップの練習も行ってきました。本日の得点も非常に良いプレーから生まれたものだと思います。でもそれは、マティアス前監督の良い仕事の結果だと思います」とヘグモの仕事を讃えています。
さらに言えばヘグモ最末期に4-1-2-3を捨てて、守備時4-4-2に転換済だったのもスコルジャ流への移行に幸いしたのかも。これはヘグモの本意ではないでしょうが、結果的にヘグモの遺産。
ただヘグモの遺産をスコルジャは見事に活かせた一方、スコルジャの遺産をヘグモは全然活かせませんでした。この辺が監督の力量差なんでしょうなぁ・・・冷蔵庫にあるものでそれなりの料理を作れるかどうかみたいな力量差は歴然。
《選手評等》
・昨年のスコルジャ監督の下では全く評価されず、左SBが本職なのに明本や荻原に次ぐ3番目の評価に留まっていた大畑。スコルジャまさかの浦和復帰で個人的には大畑の扱いが心配でしたが、大畑はスタメンの座を確保しただけでなく、G大阪の最大の脅威=ウエルトンを完封。これには恐れ入りました。「歩夢、お前この半年の間に何があったんや???」とスコルジャも目を丸くしていることでしょう、たぶん。
・またしても「点を取ること以外はパーフェクト」な大久保でした。でも先制点に繋がった、G大阪守備陣全員を惹き付けるドリブルはお見事。その前でうろうろしているリンセンもGJ。アシストでもゴールでもありませんが実に良い仕事でした。
・球際でがっつり行く「ボールハンター」は守備に強いCHとしてめっちゃ判りやすいけど、周囲を連携を取りながらいつも良いポジションにいるので相手がやりたいことを出来ない系のCHって、素人目にはなかなか評価しづらい。グスタフソンは明らかに後者。グスタフソンを使いこなせずに死にかかった町田戦って何だったのか・・・
・G大阪のゴール期待値が1を超えてるって、リカ時代によく見た「ただ相手を押し込んでるだけのチーム」が陥りがちな罠ですなぁ。点が入る感じは全くなかったのに(苦笑)。
・中村太主審はリンセンへのファウルを全く取らないし、手を使うファウルには酷く寛容。27分のダワンの渡邊への足裏攻撃なんて一発レッドでもなんら不思議はないのになぜかイエローどまり。しかもVARもダンマリ。この審判団にはホトホト参りました。
-----リンセン-----
関根---渡邊--大久保
---安居--グスタフ---
大畑-マリウス--井上-石原
-----西川-----
(得点)
49分 関根
(交代)
69分 リンセン→サンタナ
69分 関根→松尾
76分 大久保→前田
76分 グスタフソン→原口
90+1分 安居→小泉
-----坂本-----
食野--宇佐美---ウエルトン
---鈴木--ダワン---
黒川-福岡--中谷-松田
-----一森-----
(交代)
57分 食野→山田
57分 鈴木→美藤
66分 坂本→山下
66分 松田→岸本
※写真は試合とは全く関係ありません。