攻守とも不出来な相手に助けられた感は否めませんが、チームの出来の差をきっちりスコアに反映させて勝つのって浦和はなかなか出来なかったので良しとしましょう。
《スタメン》
共に前節から中3日の一戦。浦和は「勝っているチームは弄らない」と言わんばかりにスタメン、ベンチともまたしても前節と全て同じ。
試合前会見でスコルジャは「選手の疲労に関してはメディカルスタッフ、フィジカルコーチからの報告を待っているところです。明日、最後のトレーニングを行った上で最終的に先発メンバーを決めたいと思っています」と語っていましたが、メディカル的に問題がなければ同じメンバーを使いたいというニュアンスが滲み出ていたので案の定といったところ。
一方横浜Mは試合前々日(4/18)に突如ホーランド監督を解任。目先はキスノーボヘッドコーチが暫定的にチームの指揮を執ることに。ホーランド氏が監督としてはあまりにも経験不足だったのが極度の成績不振(11試合を終えて1勝5分5敗の勝ち点8で17位)の主因のようですが、ホーランド監督の守備重視スタイルに反発したアンデルソン・ロペスが公然と反旗を翻すなど、外部からは伺い知れない闇の部分も多々あるようです。
突然監督が代わってしまったので横浜Mの出方が判りづらかったのですが、横浜Mのスタメンは前節から井上→宮市、ヤンマテ→ロペスの2枚入れ替えのみと、意外なくらい小幅な入れ替えに留まりました。

《試合展開》
試合開始早々ハイボールの競り合いで長沼と頭同士でぶつかってしまった宮市が脳震盪を起こしてしまい、宮市を下手に動かせないせいか長いタイムラグを経て6分になって横浜Mはやむなくヤンマテウスを投入。
浦和は相手の出方がわからないためか、ミドルゾーンに守備ブロックを作りながら多分に様子見っぽい感じで試合に入ってしまい、最初に決定機を作ったのは横浜M。10分サヴィオ安易にヒールパスを試みてボールロストしたのを契機に、右サイドからヤンマテウスがクロス→ファーで遠野が合わせる決定機を作られてしまいましたが、ここは西川がセーブ。
しかし、その後はやや浦和がボールを握る時間が長くなる形で時間が経過。横浜Mはどうもハイプレス&ハイラインを志向しているっぽいのですが、いかんせんロペスがたいして動かないのでそこが出口となってプレスは全くかからず、リトリート守備を余儀なくされる場面が目立ちました。
しかも浦和はグスタフソンがフリーになる場面が多いこともあって、グスタフソンからのサイドへの散らしのパスから横浜Mを自陣に押し込む時間帯が長くなったものの、ラストパスが合わなかったり、肝心なところでシュートをブロックされたり(21分グスタフソン→渡邊→松尾のシンプルな攻めは諏訪間が、31分石原→安居がいずれもシュートブロック)とGKを脅かすような場面は作れませんでした。
また浦和は徐々にプレスをかける位置を上げてはいたものの、こちらもハマり切らずにカウンターを喰らいかかる場面がちらほら。ただ浦和は案外攻→守の切り替えが相手よりも早くて大過には至らず。
共にお疲れっぽい低調な内容のままスコアレスでの折り返しの気配濃厚でしたが、前半終了間際に渡邊が好位置でファウルゲット。そこで得たFKをサヴィオが直接ぶち込んで浦和先制!!GK朴がボールとは逆の方向に飛んでいるのが不思議でしたが、横浜Mの壁の前に立っている浦和の選手達がボールの軌道とは何の関係もなく、サヴィオが蹴ると同時に一斉にボールを避けるかのようにお辞儀をしているのに朴が騙されたのかもしれません。
ヘイ!サヴィオ!鰻食う浦和!! ヘイ!サヴィオ!鰻食う浦和!!
前半で横浜Mのビルドアップが相当怪しいと思ったのか、スコルジャはハーフタイムに「さらにハイプレスをかけて2点目を取りに行こう』という指示を出したようで、後半になると一転して突如深追いを敢行。
これが奏功して、渡邊の深追いがCB諏訪間のクリアミスを誘い、こぼれ玉を渡邊が押し込んで追加点。諏訪間は筑波大在学中の特別指定選手(なお2025年3月6日に筑波大学蹴球部を退部して、現在は横浜Mとプロ契約を締結しているとのご指摘をいただきました。)で、大黒柱のキニョーネスの故障を受けてスタメン起用されているようですが、こんな形で経験不足を露呈。それ以前に右SB松原がプレスを受けかねない諏訪間にスローインを入れる必要があったのかどうか?
その後も浦和のハイプレスは猛威を奮い、51分には珍しくGK朴のパスミスを誘発してサヴィオがシュート。54分には高い位置でデンからボールを奪ってボックス内に突入した松尾がシュートを放ちましたが僅かに枠外。
しかし59分ボール奪取に前に出た長沼が横浜Mの素早いスローインで定位置に戻り切れない隙をヤンマテウスに突かれ、マリウスが左サイドに吊りだされた穴をグスタフソンが埋める等守備ブロックが順繰りに破綻してしまって、植中のポストプレーから山根がゴール。
横浜Mはここぞとばかりに60分クルード→渡辺、永戸→加藤と2枚替え。一方浦和は65分金子→松本、サヴィオ→原口、75分渡邊→関根と代えてプレスの開始位置を下げて元のミドルゾーンでの守備ブロック形成に切り替えたものの、相手にプレスがかからない状態でただ引いて守っているだけになってしまい、タコ殴りの憂き目に合ってしまうお約束の終盤の流れに。横浜Mは77分遠野→エウベル、ロペス→天野と代えて大攻勢。
83分に松尾に代えて二田を投入した直後、右サイドからヤンマテウスがクロス→ファーでエウベル折り返しに植中が詰める超決定機を作られたものの、植中のシュートはなぜか枠を逸れて命拾い。
そして二田投入はそれなりに効果があって、この辺から浦和もようやく最終ラインを上げられるように。
88分にはCKからの流れでこぼれ玉を拾った松本のパスを受けた原口が対面のヤンマテウスを何ら苦にすることなくクロス→ファーでボザがどフリーでヘッドで合わせて3点目を取って事実上勝負あり。ヤンマテウスはお疲れなのかほとんど守備になっていませんし、それ以上に横浜M守備陣が全員ボールウォッチャーになっていてボザを誰一人見ていない惨状・・・
それでも横浜Mは試合を捨てず、90分には浦和守備陣が自陣でクリアしきれずに変にドタバタして失点と思われる場面もありましたが、ここはオフサイドに救われてそのまま試合終了。

《総評》
試合後のDAZNのスタッツではシュート数11対11、うち枠内8対4、ゴール期待値1.42対1.47。ボックス内からのシュート数も似たようなもので、最終スコアほどスタッフには差がありませんでした。
試合後スコルジャが「本日はあまりにも簡単にチャンスを作られてしまったところがありました。」と反省するように、相手を綺麗に崩した決定機は横浜Mのほうが多かったくらいなので、試合内容的には引き分けで終わるのが妥当だったのかもしれません。84分植中のシュートなんて決まらないほうが不思議でしたし。
さらに言えば伝統的にチーム状態が悪い相手、連敗中の相手にうっかり勝ち点3を与えてしまいがちな浦和なので、その悪しき伝統に則れば逆転負けを食らっていても何の不思議もなかったのかもしれません。
しかし「決して良くはなかった試合で勝ち点3をちゃんと掴んだ。チーム状態の差を最終スコアにそのまんま反映できた」という意味で浦和は悪しき伝統を打ち破って一歩前に進んだと率直に評価してもいいでしょう。
ただ浦和が勝ち点3を拾えたのは肝心なところで横浜Mが致命的なミスを連発してくれたことが主因だったのも確か。1点目の朴の不可解な挙動といい、2点目の諏訪間といい、3点目の全員ボールウォッチャー状態といい、横浜Mには「いくら点取っても一緒や!!!」としか言いようがない残念なプレーが守備面で相次ぎました。
ホーランド前監督は守備の再整備を期待されて就任したようですが、それが結実することなく最後はただのバカ試合製造機になってしまってあえなくクビに。ビルドアップ能力が劇的に劣化しているのも昨年あたりから顕著。こういった体質はキスノーボヘッドコーチには時間がなさ過ぎてどうにもならなかったようです。
さらにホーランド前監督に公然と反旗を翻し、それが原因で清水戦でベンチ外になったと噂されるるアンデルソン・ロペスをキスノーボヘッドコーチがあっさりスタメンに戻したのも(所詮他人事ですが)チームの規律維持の観点から気になるところ。
悪いことにロペスは試合後「4カ月、何も変わらない。監督が解任されても同じ戦術。前線のブラジル人を同時に使うこともなかった。このままサウジアラビアに行ったら恥をかく。リーグ戦も降格してしまう」と吠えまくっていて、もうどうにもならなさそう。
そんな残念な相手に、スコルジャは「サヴィオ・凌磨・佑介の連係」を重視し、「7日間で非常に高い強度の試合が3試合続いていましたが、スタメンを代えないというリスクを冒して」試合に臨んだ賭けに勝って、ヘロヘロが顕在化するまでに2点取って勝ちパターンに。
当然ながら5月まで中2日、中3日の連戦が続く中でスタメン完全固定なんて出来るわけがないので、「スタメン完全固定」で目先の勝ち点を積みに行ったツケをどこかで払う羽目になるのかもしれません。どこかでスタメンローテーションモードに移行した時の浦和の出来、現状「代えれば代えるほど悪くなりがち」なところがどこまで修正されるか気になります。
この試合も「代えれば代えるほど悪くなりがち」な状況はなんら変らず、終盤最終ラインが下がってタコ殴りの憂き目に遭ってしまいましたが、交代選手の中で大収穫だったのが二田。スコルジャの「より高い位置でプレスをかけて、自陣のゴールから遠い位置で守る」との指示を受けて、ヘロヘロの松尾に代わって横浜M最終ラインへのプレッシングを再起動された働きは実に見事でした。
またSHに置くと暴走して守備ブロックに穴を開けがちな関根もトップ下に置いて二田と共にプレッシング要員にしたほうがまだマシ。これも「良かった探し」のうちに入れていいでしょう。右SHの守備固めに大久保が起用されないのは故障明けでコンディションが万全でないかららしいですし。
3連勝した浦和は1試合消化が多い暫定順位ながら4位に浮上。横浜Mはついに最下位に沈んでしまいましたが、いかんせん超団子レースなのが今季のJ1。この両チームの順位は先月末には大差なかったんだよなぁ・・・(遠い目)

《選手評等》
・この試合もフル出場のグスタフソン。グスタフソンは総走行距離はこそ長いけれどもどスプリント回数は少ないから、案外連戦に強いのかな?? スクランブル発進で「アフターバーナー」多用してアホみたいに燃料を消費してしまう迎撃機とは真逆のタイプみたいな。おまけに今日は相手のプレスがユルユルでお仕事しやすそうでしたし。
・今日はさすがにお疲れで渡邊も安居も出来は良くなかったと思いましたが、代わってスタメン起用されない松本はちょっと不憫。「勝っているチームは弄らない」鉄則に則ったチームが勝っているので文句も言えないでしょうが。
・京都戦で初めてまとまった時間をもらった長倉を見て「こいつは松尾の代わりにはならんな?」と個人的には思っていましたが、スコルジャの感想も同じだったみたいで。
・試合終了後にそのままクールダウンに引き上げたい選手もいれば、サポーターと共に"We are Diamonds"を歌いたい選手もいるようで。現状なし崩し的に後者に引きずられているようですが、どうなんだろう?前者を重んじてキャプテン関根が「今日は下がるぞ!!!」ってチームメイトを促して、あとで関根がゴール裏にちょこんと「今日はスマン!」とペコリすれば済むと思うんだがなぁ・・・でも関根にそこまでの余裕がないんやろうなぁ・・・
・浦和が最後に4回目、かつ6人目の選手交代を敢行。宮市の脳震盪交代で浦和にも交代枠が一つ増えるのは判っていましたが、回数も人数も1つ多い交代だったのが試合後話題になりました。「脳震盪交代で一つ増えた枠は試合中どこで使っても良い」というのが今回得た知見で、浦和は75分渡邊→関根の交代がそれに相当。これを除くと他は3回かつ5人の交代なので何の問題もありませんでした。ちなみに脳震盪による交代の場合は交代カードの色が違うそうです!!
・暫定的にチームの指揮を執ることになったキスノーボヘッドコーチは暫定監督という位置づけでなく、横浜Mは別途新監督を探しているとのこと。堀監督を更迭した後の「第一次大槻」と全く同じ位置づけで、どこもかしも「一度浦和が通ってきた道」を歩むもんですなぁ・・・「浦和笑うな 行く道だ」

-----松尾-----
サヴィオ---渡邊---金子
---グスタフ--安居---
長沼-マリウス--ボザ-石原
-----西川-----
(得点)
45+8分 サヴィオ
46分 渡邊
88分 ボザ
(交代)
64分 金子→松本(松本トップ下、渡邊右SH)
64分 サヴィオ→原口
75分 渡邊→関根(横浜Mの脳震盪交代による追加枠での交代)
83分 松尾→二田
90分 長沼→大久保
90分 安居→荻原(荻原左SB、松本CH、関根トップ下、大久保右SH)
-----アンロペ-----
遠野---植中---宮市
---山根--ジャン---
永戸-諏訪間-デン-松原
-----朴------
(得点)
59分 山根
(交代)
6分 宮市→マテウス(脳震盪による交代)
60分 クルード→渡辺
60分 永戸→加藤
77分 遠野→エウベル
77分 ロペス→天野