【観戦記】25年第12節:浦和 1-0 広島 ~ 知らん間に浦和、強くなってね?
前節横浜M戦は正直「相手が勝手にこけただけ」という試合内容でしたが、この試合で「浦和、ひょっとして強くなってね??」という実感をようやく持てました。下位に低迷していた頃とはまるで別のチームを見ているかのよう。
《スタメン》
浦和はホーム5連戦の3戦目。国立での町田戦から中2日・中3日・中4日と続く連戦の最中でしたが、スコルジャの選択はまたしてもスタメン、サブとも前節と全く同じ。
試合前の公開練習で中島とサンタナが練習に合流している様が確認され、試合前の会見ではスコルジャが「チアゴに関しては本日もフルでトレーニングをこなし、いい報告も聞いています。サンフレッチェ戦に間に合うと思われます」と語っていましたが、今はサンタナの復帰を急ぐ必要もないみたいで。
一方広島は前節から東→菅、中野→井上とスタメン2枚入れ替え。
広島は前目に故障者が続出しているようで、第4節横浜C戦でアルスランが負傷して長期離脱。第9節C大阪戦で新井が負傷。ACL2で没収試合の引き金となったジェルマンも第10節岡山戦で負傷。さらに昨季後半から出番が激減していた満田を放出する余裕をかまして、満を持して浦和から前田を移籍金を払ってまで獲得したところ、その前田が前節名古屋戦で永井の悪質なファウルを受けて負傷。
アルスランの負傷についてスキッベ監督は「シーズンが始まる前に、協会やJリーグの方からプレーイングタイムを伸ばすということで、審判はファウルを流す傾向にあるということを話された。だが、そこはうまくいってないと思う」「日本のサッカーがこれだけ良くなって、これだけハードに、当たりも強くなっていく中で、審判がこのような流れになっているのは非常に残念です」と審判団を批判しまくっていました。
それが伏線となったのか、前田の負傷については「イメージしていた以上に酷い審判のパフォーマンスでした。主審は3メートル前で見ていて、確実にレッドカードを出さないといけないファウルだった」「VARも10回以上は見ないといけないシーンですが、それでもそういう状況でした。フィールドの上で正確に判断するところで、日本のサッカーは遅れをとっていると思います」と試合後不満爆発。
誰もがスキッベの怒りは至極ごもっともと思ったでしょうが、これが「審判員に対して不適切な発言」とみなされて、スキッベ監督は気の毒なことに2試合のベンチ入り停止と罰金20万円の処分を食らってしまいました。そのため、今節は迫井ヘッドコーチが指揮を執ることに。
なお2018年には浦和のオリヴェイラ監督が名古屋戦後に「主審及び副審に対する侮辱又は公然の名誉毀損行為」に該当すると判断されて2試合のベンチ入り停止処分を食らっています。相手が共に名古屋戦だというのがいやはやなんとも・・・
《試合展開》
広島のフォーメーションはいつもの3-4-2-1でなく、FWはどう見てもジャーメイン&加藤の横並び2トップ。中盤の構成は川辺トップ下の3-4-1-2、ないし田中も前に出して井上アンカーの3-1-4-2のような布陣に見えました。
この件については試合後当然記者から質問があり、迫田HCは「これまでのゲームは前めの選手の距離感が少し離れている部分があった。もう1個は得点を取るためにゴール前に人を増やすという意味でも、そういう形をとりました。つなぎめのところは前節に井上潮音が入って人と人との距離のつなぎめになってくれたので、そこをつなぎにしながら前に人を多く、距離感を近く、という狙いを持ってやっていきました。」と「距離感」というマジックワードを連発する回答に終始したので、この試合を見ただけではその狙いはよく判らず。
また普段シャドーに入る中村を右WBに起用した狙いも、これまた迫田HCの説明は「距離感」に終始したので傍目には意味不明でした。
ただこの広島の出方は想定外すぎて浦和は戸惑ったのか、立ち上がりは完全に広島ペース。浦和は良い形でボールが奪えず、何とかボールを奪っても広島のプレスがきつくて思うようにビルドアップも出来ないので、広島が敵陣でボールを保持する時間が長くなって得意のクロス攻撃の形を作り、CKも複数回取って攻勢に。
しかし石原が試合後「いまは守備からリズムを作るという感じなので、持たれることは想定していて、去年もそういう展開でした。でも想定していたので落ち着いてやれていたし、いつか自分たちのチャンスや時間帯、流れが来るのは分かっていたので我慢してやれていました。」と語っているのに象徴されるように、浦和はこの苦しい時間帯を我慢できるようになった、昨年の対戦時のように序盤からボコボコにされてなんで失点しないのか不思議でならないような惨状には陥らず、大過なくやり過ごせるようになったのは大きな進歩でしょう。
そして18分カウンターから渡邊→左サイドからサヴィオがクロス→グスタフソンがシュートとこの試合初めて良い形を作った辺りから試合は徐々に浦和ペースに。
浦和が空いている選手にパスを回してチャンスメークする場面が目立ち出し、24分にはサイドチェンジからサヴィオ→松尾の決定機。さらに37分サヴィオCK→ボザのヘッドは惜しくもGK正面。
41分には松尾浮き球縦パス→サヴィオがヘッドで落としたところに安居飛び込む、45分には渡邊スルーパスが松尾に通るといった広島ゴールに迫る場面がありましたが、最後の最後で広島守備陣に阻まれてシュートを撃ちきれず。44分西川ロングキックが松尾まで流れて、松尾がフリーの金子に展開する好機がありましたが、金子はなぜかシュートを撃たずに松尾に折り返してチャンスを潰してしまう場面にはさすがに呆れかえりましたが・・・
劣勢に転じた広島も相変わらず何度かクロス攻撃の形は作っているものお、クロスは中で淡々とマリウスに弾き返されて決定機に至らず。52分浦和の自陣でのスローインを奪って田中スルーパス→川辺の決定機を作りましたが、川辺にマリウスが寄せているのが効いたのか、川辺のシュートは僅かに枠外。
また運が悪いことにその直後に右CB塩谷が故障。やむなく広島は55分菅→東、塩谷→中野と交代。
そして57分広島CKのチャンスから浦和のロングカウンターが炸裂。自陣深い位置で中村のパスをサヴィオカットしたのを契機に、サヴィオは追いすがる中村を振り切って右サイドを激走。そしてサヴィオのパスを受けた金子がGKも交わして浦和移籍後初ゴール!!サヴィオ、渡邊、金子と3選手が長い距離を走り、しかも長い距離を走った後に高精度のパスを出せるサヴィオも見事なら、冷静にGKを交わしてきっちりゴールに流し込める金子も見事。
その後63分田中の後方からのファウルを受けた渡邊が激怒するなど、木村主審の不安定極まりないレフェリングのために試合は荒れ気味に。スキッベの怒りは至極もっともと思いますが、広島は後方からのタックルこそ少ないものの、手を使うファウルが結構多くてなあ・・・そしてそれを悉く不問に付すJリーグの審判団・・・
64分FKからボザヘッドは大迫が辛うじてセーブ。66分カウンターからサヴィオ→松尾の決定機も大迫セーブと浦和は追加点が取れず。
76分サヴィオ→原口、金子→関根と代えて逃げ切り態勢に入ったところまでは良かったものの、石原が足を攣ってしまい、82分石原→松本と代えて関根を右SBへ転用した辺りから急激に雲行きが怪しくなり。最終ラインが下がって相手の攻勢を許してしまういつもの終盤の試合展開に。
そしてスコルジャは最後に二田&長倉を投入。共に相手に「追加点を取りに行く」という姿勢を見せて脅威を与えながら時間を潰すという、前目の逃げ切り役として完璧な仕事を果たしてくれました。試合終了間際には佐々木クロス→ファーでジャーメインヘッドという危ない場面がありましたが、ヘディングシュートが緩いのが幸いしてゴールマウスをカバーしていたボザが難なくクリアして試合終了。
《総評》
DAZNのスタッツだと、シュート数9対12(うち枠内6対7)、ボール支配率48%対52%、ゴール期待値は0.86と奇しくも全く同じで、スタッツ上は全くの互角、むしろ広島が心持ち優勢にすら見えますが、個人的な感想は浦和の完勝。
浦和はセットプレーでボザに2度決定機があり、さらに流れの中からも何度も良い形を作っていたのに対し、広島の攻撃は総じて手詰まり感が著しく、52分川辺くらいしか良い形を作れていなかったかと。広島のクロス攻撃はマリウスに迎撃され、縦パスで浦和最終ライン裏を狙ったところで結局ボザにカバーされて良い形は作れずじまい。
前目の選手に故障が多発しているせいか、ジャーメインや加藤を巧く使ってくれる選手がおらず、両名とも、特に「浦和絶対殺すマン」の加藤は終始消えていました。これはフォーメーションを弄ったところでどうにもならないでしょうし、中村の右WB転用も「策士策に溺れる」感がありありで意味不明のまま終わりました。
ただこの試合で怖かったのは安居といい、長沼といい、西川といい、浦和が結構致命傷になりかねない自爆ボタンを押しまくっていたこと。この件については試合後スコルジャも「ゾーン1でのミスが多すぎたと思います。本日の試合でよくなかった点を挙げるとしたら、トップ3に入ると思います。」とはっきり認めています。
川辺の決定機も自陣でのスローインを奪われるというトホホな場面からでしたし、最後の危ない場面も原口の意味不明なサイドチェンジが発端になっていました。
とはいえ、前節横浜M戦は正直「相手が勝手にこけただけ」という試合内容でしたが、この試合で「浦和、ひょっとして強くなってね??」という実感をようやく持てました。前プレとミドルゾーンでの守備ブロック形成の使い分け然り、攻守の切り替えの速さ然り、球際での強さ然り、最終ラインの盤石さ然り、アホほど決定機を作れるようになったセットプレー然り、そしてカウンターの切れ味然り、下位に低迷していた頃とはまるで別のチームを見ているかのよう。
これで浦和はなんだかんだとリーグ戦4連勝。アウェー京都戦での渡邊負傷を契機に遠回りはしましたが、ようやくスコルジャのチームチーム再建が軌道に乗ったようです。
それにしても後半はどう見てもサヴィオCF、松尾左SHでしたが、あれはどういう意図だったんだろう???
《選手評等》
・ようやく浦和で一点取れた金子。試合後の会見で何度も「焦りがあった」と繰り返し語っていて、ずっとスタメン起用されながらも前目の選手でありながら点が取れていないことを相当気に病んでいた模様。44分の決定機逸なんてメンタルがやられているとしか思えなかったからなぁ・・・ただ得点してすっかり気楽になったのか、その後のプレーは何か知らんけどキレが増してて、ここで予定の交代を発動するのはもったいなかった気も。
・スコルジャやチームメイトがフリーダムすぎるサヴィオの使い方に、そしてサヴィオが松尾らと呼応してのプレスのかけ方等スコルジャのやり方に慣れてきた今月はついにサヴィオの魔力が全開放!!サヴィオに広島が複数人でプレスをかけたところで、サヴィオが個人技で交わしてしまう。そして当然ながら浦和にはどフリーの選手が生まれているので、そこへサヴィオが展開。そんな場面が前半半ばから続出しました。得点場面の激走&高精度パスはもちろん、随所でJリーグでは飛びぬけた感のあるスーペルなプレーを披露。いやはや恐れ入りました。
・リードしている時は「カウンターのチャンスになりそうな時でも無理せずにいったん落ち着いてボールを回すことでチーム内で意思統一できている」と思っていたのに、原口だけはどうもよく判ってないみたいで・・・スコルジャはいつ原口を見切るのかなぁ・・・
-----松尾-----
サヴィオ---渡邊---金子
---グスタフ--安居---
長沼-マリウス--ボザ-石原
-----西川-----
(得点)
57分 金子
(交代)
76分 サヴィオ→原口
76分 金子→関根
82分 石原→松本(松本右SH、関根右SBへ)
90+1分 渡邊→長倉
90+1分 松尾→二田
---ジャメ--加藤---
-----川辺-----
菅--井上--田中-中村
-佐々木-荒木--塩谷-
-----大迫-----
(交代)
55分 菅→東
55分 塩谷→中野
79分 井上→越道
82分 川辺→松本
82分 加藤→井上
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