浦和は負け試合だったところから勝ち点1を拾えたので万々歳と言っていいでしょう。また大胆なターンオーバーを試みながらも強敵川崎相手にアウェーで勝ち点1をもぎ取ったという点でも収穫大と言っていいでしょう。
《スタメン》
川崎がACLEに出場していた関係で先送りされていた第13節。
前節から中3日の浦和は松尾→髙橋、渡邊→中島、サヴィオ→関根、大久保→金子、グスタフソン→松本、荻原→長沼と一気に6名もスタメン入れ替え。前目を総とっかえした格好で、しかも髙橋と中島のスタメン起用は今季初。
グスタフソンはベンチ外でしたが、故障明け&そもそも無理が効かないタイプっぽいのでここは自重したのかも。浦和はこの試合の後に日程面でかなり不利なアウェー名古屋戦が控えているので、グスタフソン共々主力は名古屋戦へ向けてプレータイムを抑えて、過密日程同士の川崎相手でターンオーバーを試みたのでしょう。
だが安居と石原だけは代えがいない模様・・・
前節から中2日の川崎は山田→エリソン、家長→伊藤、山本→橘田とスタメン3名入れ替え。こちらは想定の範囲内。
《試合展開》
浦和はグスタフソン不在で終始ビルドアップに苦しんだ新潟戦を反省材料としたのか、立ち上がりから最終ラインでボールを回しながら機を見て金子や髙橋目掛けてやたらロングボールを多用するという、まるでボールを捨てるかのような手を打ちました。これならスタメンを長倉ではなく髙橋にしたのも納得。
そして15分くらいからロングボールのこぼれ玉を拾って前進する手(ボール回収能力は安居>>松本なので、基本安居が前、松本が後ろだったのも妙手)がハマりだして、ようやく敵陣でボールを握り始めて左右からクロス攻撃を仕掛けだしました。しかし残念ながらクロスは誰にも合わずに川崎守備陣に弾き返されるばかり。
この時間帯について試合後スコルジャは「もっと相手のスペースを使うことをしなければいけなかったと思います。川崎のディフェンスラインの背後が空いていて、利樹がそこに対して動き出していたのですが、そこを十分うまく活用できていなかったのかなと思います。」とボヤいていましたが、まぁ確かにそんな気もします。20分には丸山への緩いバックパスを高橋が掻っ攫って丸山の裏に抜け出しそうになる見せ場も。丸山は髙橋を後方から引っかけてイエロー。
25分金子CKでエリソンがファンウェルメスケルケンと交錯して負傷し、一度はピッチに戻ったもののやはりダメで、32分に山田と交代を余儀なくされるアクシデントも。
この試合を通じて浦和のハイプレスは有効とは言い難く、結局のところローブロック守備への移行を余儀なくされる場面が目立ちましたが、35分にはその移行過程の中途半端なところを突かれて河原のバスを受けた脇坂に前を向かれ、山田に決定機を許してしまいましたが、幸いにもシュートは西川の正面。
試合がやや川崎ペースになりかかってところで、42分左サイド奥深くで安居がボールを戻し、中島が金子目掛けてクロス。ところがクロスは金子に合わずにそのままゴール!! 再三のクロス攻撃が妙な恰好ながらもようやく結実しました。
しかし川崎もすかさず反撃。45+1分浦和を自陣深くに押し込んだ状態で橘田がアーク付近からシュート。ここは西川がなんとかCKに逃れましたが、続く45+2分脇坂CKを西川が被ってしまったのが祟って、こぼれ玉を拾ったマルシーニョが同点ゴール。ハイボールを競っている山田が長沼を手で押さえつけた上にハンド臭いのですが、飯田主審はVARと交信した上でゴール認定。
川崎は後半頭から伊藤に代えて瀬川を投入。
56分浦和は石原&金子のコンビで右サイドを綺麗に崩して金子クロス→関根の決定機を作りましたが、シュートはポストを叩いてゴールならず。ポストを叩いたボールはその後GKの尻や足にも当たっており、運が良ければそれがそのままゴールマウスに吸い込まれたのでしょうが・・・
スコルジャは59分髙橋→松尾、中島→サヴィオ、64分金子→大久保、関根→渡邊と早めに主力を投入。この交代についてスコルジャは試合後「後半の早いタイミングで交代を行いましたが、それは利樹や翔哉が本日悪かったからではなく、クラブワールドカップの前にチェックしたいセットがあったからです。」とやや謎めいたコメントを発しています。
しかし残念ながらスコルジャが「リズムをつかむことはできませんでした。本日の後半の4人は、前節ほどいい連係を見せることができませんでした。」と認めざるを得ないようにこの選手交代は完全に不発に終わりました。金子も髙橋も下げてしまったのでロングボール攻撃は使いづらく、そうなるとグスタフソン不在が祟ってボールを前進させられず、前4人を代えたところであまり意味がないように見受けられましたが・・・
逆に70分マルシーニョ→家長、河原→山本と代えたのが効いて試合は完全に川崎のペースに。浦和はローブロックで川崎の攻勢を凌ぐのが精一杯に。
スコルジャは81分安居→長倉と最後の勝負手を放ったものの、安居に代えて渡邊をCHに下げたのが大悪手に。
川崎は85分橘田→大関と交代。その交代直後の86分自陣深い位置でボザの縦パスを受けようとした渡邊が山本に絡まれてボールロスト。その後もボール奪回も空振りに終わって、左サイドから大関クロス→ファーでファンウェルメスケルケンがワンタッチで折り返し、瀬川がこれまたダイレクトに蹴り込んで逆転ゴール。浦和がやりたかったような見事なサイドからの崩しでした。
浦和は56分の関根の決定機を最後に全く良いところがなく、90分石原クロス→渡邊のシュートがGK正面を突いたところで万事休すと思われましたが、試合終了間際にサヴィオがクロス→ファーで長倉が頭で折り返したところにどフリーの大久保が突っ込み、シュートは当たり損ねっぽい形ながらも劇的な同点ゴールを決めてその直後に試合終了!!

《総評》
CWC参戦前の超過密日程を前にスコルジャはメンバーを入れ替えながら闘うことをかねてより示唆していましたが、前節FC東京戦でスタメン4名を入れ替えたのに続き、ついにこの試合ではスタメンを一挙に6名も入れ替え。しかもスタメン起用した選手の中に中島&髙橋と今季初スタメンの選手が含まれていたのにはとにかく驚きました。
前述のようにスコルジャは前半の出来に満足はしていないようですが、それでも守備はさして破綻することなく、J1上位チームらしい息詰まる試合を繰り広げられたのは大収穫と言っていいでしょう。
そして同点で60分を終えたところで主力を続々投入して勝ちに行く。ここまではスコルジャの算段通りだったと思います。
ただ極めて残念なことにこの「主力」が全く機能しませんでした。
川崎はACLEを決勝まで勝ち進んだため浦和より先に超過密日程モードに突入し、ACLE決勝トーナメントを含めて選手のやり繰りに習熟しているせいか、川崎の選手交代は浦和より遥かに効果的で一気に試合は川崎ペースになってしまい、当然のように川崎が逆転。逆転された時点で浦和は完全に負け試合の様相を呈していました。
ところがさすがの川崎も最後はヘロヘロ。足が止まってしまってまさかの同点弾を許す羽目に。浦和から見れば負け試合だったところから勝ち点1を拾えたので万々歳と言っていいでしょう。また大胆なターンオーバーを試みながらも強敵川崎相手にアウェーで勝ち点1をもぎ取ったという点でも収穫大と言っていいでしょう。そして最後の最後に後半投入の3選手が絡んで点が取れたのも収穫でしょう。
またスコルジャはこの試合を含めて残るリーグ戦をCWCへの準備期間と位置づけているようですが、その観点からは収穫があったのかどうか。少なくともサンタナが間に合わない場合に備えて髙橋をテスト出来たのは慶事なのでしょうか。
それにしても川崎は強かった。浦和がズタボロだった時に対戦した柏はともかく、浦和が立ち直った後に対戦した相手では川崎がダントツに強い印象を受けました。現時点で首位を走る鹿島より全然強かったかと。
ACL決勝で負けるととにかく喪失感が凄まじいもの。浦和2019然り、昨年の横浜Mもそんな印象を受けましたが、驚いたことに今年の川崎にはそんな様子は微塵も感じられませんでした。
そもそも今季のACLE決勝トーナメントがサウジ中立開催という東地区には無理ゲーで、その中で準々決勝でアル・サッドを、そして準決勝で地元サウジのアル・ナスルを破って決勝へコマを進められたのが大きな自信となり、その自信が喪失感を上回ったのかもしれません。
そんな川崎と今年はリーグ戦最終節@埼スタで当たることになっていますが、その頃の両チームはどうなっているかなぁ・・・
《選手評等》
・浦和の起死回生の同点ゴールは石原が瀬川に頭を蹴られたのにも関わらず、プレーを止めずにボックス内でボールを拾ってサヴィオに繋いだところから。試合終了後さすがに石原も痛みを堪えきれずにピッチに倒れこんでしまいました。石原は試合後インタビューに答えているので大事ではないのでしょうが・・・
・長倉がアウェー新潟戦に続いて最終兵器として機能。これがめっちゃ嬉しい。髙橋とは持ち味が全然違うFWなので、スコルジャは使い分けできるでしょうし。
・長沼と河原は鳥栖で一緒だったのは知っていますたが、髙橋と河原は熊本で3年も一緒だったとは!!そしてその活躍が認められて共にJ1へ個人昇格。なお長沼と河原は経営難の鳥栖が昨年夏に売らざるを得なくなった選手という点で同じ。
・2試合連続して渡邊をCHに下げた途端に失点。ヘロヘロの渡邊をCHで起用したがるスコルジャも大概ですが、柴戸が使える目途が立つまでCHの頭数が足りないのでスコルジャも手の打ちようがないのでしょう。総力戦になると資源が最も薄いところがボトルネックになってしまいます。これは選手や監督を責めても仕方なく、フロントの問題かと。
・長谷部監督は試合後「何があったのかは分かりませんが、大変なスケジュールを組んでいただいています。本当に選手が壊れてしまう、他のチームでもおそらく壊れていると思いますけれども、選手には頭が上がりません」とJリーグがACL組に強いている過密日程に文句つけまくり。浦和が言うと罰金取られるので、代わって川崎がリーグに文句たれまくって欲しいわ!!長谷部監督は如何せん超過密日程のやり過ごし方だけは過去経験してないでしょうから、言いたいことは山ほどあるでしょうが、そんな中でもよくやっていると思います。
・エリソンは味方との交錯という不運極まりない形で負傷交代を余儀なくされましたが、脳震盪の疑い等うかつに選手を動かせないような故障でもないのに、飯田主審がエリソンをピッチ外に出さなかったのは正直疑問。代わって投入する山田のアップの時間を稼ぐのを主審が後押ししているように見られても仕方ないかと。逆に石原が頭を蹴られたのにそのままプレーさせたのもどうかと思いましたが、それが結果的に浦和に幸い。
・この試合のDAZN解説松原氏は、もっともらしいタームをずらずら並べるだけで解説にも何にもなっていない、付加価値ゼロのあんまりな虚無解説ぶりで参りました。まぁそれでもネチネチと浦和の難点を論っては高笑いするあの方よりは個人的にはマシなんですが・・・
-----髙橋-----
関根---中島---金子
---安居--松本---
長沼-マリウス--ボザ-石原
-----西川-----
(得点)
42分 中島
90+4分 大久保
(交代)
59分 中島→サヴィオ
59分 髙橋→松尾
66分 金子→大久保
66分 関根→渡邊(渡邊トップ下、サヴィオ左SHへ)
81分 安居→長倉(長倉CF、渡邊CH、松尾左SH、サヴィオトップ下へ)
-----エリソン-----
マルシ-ニョ--脇坂---伊藤
---河原--橘田---
佐々木-丸山-高井-ファンメ
-----山口-----
(得点)
45+2分 マルシーニョ
86分 瀬川
(交代)
32分 エリソン→山田(負傷による交代)
HT 伊藤→瀬川
70分 マルシーニョ→家長(家長右SH、瀬川左SHへ)
70分 河原→山本
85分 橘田→大関
※写真は試合とは全く関係ありません。