・今季限りでの退任が決まった大槻監督は試合前の記者会見ではなおも勝つ気マンマン、がっちりファイティングポーズを取って試合に臨んだようでしたが、選手達は文字通り「笛吹けど踊らず」でした。
《スタメン》
・週央に試合がなかった浦和は前節G大阪戦と全く同じスタメン。ベンチ入りメンバーも武富に代わって久しぶりに伊藤が入っただけ。大槻監督は退任が決まったとはいえ、残り試合も勝つ気マンマンなことを試合前の記者会見で明らかにしており、前節は結果は逆転負けだったとはいえ内容は悪くなかったので、メンバーに大幅な変化がないのも道理といえば道理。
・また同じ記者会見で「今週は一週間空いたので、良かった選手を見て、そういう選手をしっかりメンバーに入れるということをしたいと思っています。」と語っていましたが、その選手は伊藤でした。どういうわけか判りませんが、レギュラー格だったはずの関根や柴戸はすっかり影が薄くなってしまったようで。
・一方水曜日に第29節を消化して中3日の鹿島のスタメンは意外にもCB奈良が町田に代わっただけ。ベンチメンバーも名古が荒木に代わったのみ。なおSH白崎、SH和泉が故障中。左SB永戸はコロナ陽性判定のためチームを離脱中。
《試合展開》
・鹿島のフォーメーションは試合前のDAZN予想では土居トップ下、三竿アンカーの中盤ダイヤモンド型でしたが、蓋を開けてみるとどう見ても土居が左SHにいる4-4-2で浦和とがっぷり組みあう格好に。
・立ち上がりから中盤でのボールの奪い合いが延々と続き、双方ともなかなかボールを落ち着けられない展開でしたが、それでも曲がりなりにも最初に決定機を作ったのは鹿島。
・3分左サイドから土居のクロスを上田ヘッドは枠を捉えられませんでしたが、11分エヴェラルドの左サイドからのクロスを上田ヘッドという最初の決定機とほぼ同じ形で鹿島が先制。ボックス内浦和は3人、鹿島は2人でしたが、槙野の前に上田に飛びこまれてジ・エンド。ひと頃鳴りを潜めていた「浦和殺し」の形による失点がリーグ終盤にまたぞろ復活とは・・・
・浦和は鹿島のプレッシャーを受けてビルドアップに苦しみ、また良い形でボールが奪えないので得意のカウンターも繰り出せずと散々な出来。15分相手のクリアし損ねを高い位置で拾ったマルティノスのクロスを契機に興梠ヘッドで折り返し→レオナルドが反転シュートを放つ場面があったものの、シュートに力なし。19分珍しくマルティノスが橋岡を使って橋岡がクロスを上げる場面もありましたが、そのクロスはわずかにレオナルドに合わず。
・この試合が始まる前に来年の予習がてら金沢vs徳島戦を見ていましたが、相手の強度が段違いとはいえ徳島のサッカーを見た直後だと浦和のビルドアップ能力のあんまりな低さには心底がっかりさせられます。これが本当にJ1のチームなのかと・・・
・早い時間帯に先制点を取られたが最後、あとはボールを持たされ気味になったまま時間だけが流れるという「ホーム3連戦3連続完封負け」という最悪期に戻ったかのような戦況で、ボールが前線まで来ないせいか、レオナルドはイライラが昂じた挙句につまらないファウルを犯して次節出場停止。そして全く点が入る気がしないせいか、TwitterのTL上では前半半ば辺りから競馬のジャパンカップを見始める赤者が続出!!
・45分この試合初めて深い位置からの山中の縦パスを契機に浦和得意のロングカウンターが炸裂。縦パスを受けたレオナルドが前線で潰れて汰木へ繋ぎ、そのまま疾走する汰木のスルーパスを受けたマルティノスがボックス内から巻いてシュートを放つもポストを叩いてしまいました。
・試合は明らかに鹿島ペースで進んでいるとはいえ、先制した鹿島もその後はファン・アラーノが2本ミドルシュートを放つ場面があった(しかも共に西川の正面)くらいなので、マルティノスのシュートが決まっていたらその後の試合展開は全く異なっていたでしょうけれど、弱いチームはそれが決まらないから弱いのです。あんまり死んだ子の年を数えてもなぁ・・・
・前半は内容は決して良くはないが一応試合になっていましたが、後半になってついに浦和大決壊!!
・後半開始早々三竿のスルーパスをデンがカットし損ねてボックス内のファン・アラーノに通ってしまう大ピンチ。ここはなんとか西川がセーブして難を逃れたものの浦和の気の抜けたプレーぶりはどうにもならず、50分鹿島が深い位置からショートパスを繋いで反撃に出て、上田がぽっかり空いたバイタルエリアからミドルシュートをぶち込んで2点目。鹿島の反撃に対して積極的に前から潰しにゆく素振りはなく、かといって早めに帰陣して守備ブロックを整える訳でもない。浦和の守備が酷すぎました。
・2点ビハインドになったところで大槻監督は汰木→武藤、長澤→エヴェルトンと2枚替えたものの、ビルドアップに苦しむのは相変わらず。しかも64分青木の気が抜けたようなパスミスを契機にファン・アラーノ→エヴェラウドと簡単に繋がれて、浦和は致命的な3点目を取られてしまいました。
・大槻監督は怒りの余り、即座に青木に代えて伊藤をなんとCHに投入。と試合中は思ったのですが青木を代えたのは懲罰的な意味合いではなく、負傷のためだったことは試合後の記者会見で判明。
・しかし伊藤がFKで少々見せ場を作ったところでこの日の浦和のダメっぷりが一変するはずもなし。78分興梠→杉本、マルティノス→宇賀神の2枚替えの後は3-5-2にフォーメーションを代えましたが、練習したことがあるかどうかも怪しい3-5-2が即座に機能するわけもなく、81分前がかりになったところで当然のように鹿島のカウンターを食らって屈辱的な4点目を取られてしまいました。
・終盤は今季3度目の「6失点倶楽部」入りすら案じられる試合展開になってしまいましたが、西村主審があんまりな浦和の出来に哀れを覚えたのかPK臭い場面を思わずスルーしたのにも助けられて幸いにも4失点止まり。ただ同様に大量得点差が付いた仙台戦で家本主審が後半のATをほとんど取らない温情裁きを見せたのに対し、西村主審はしっかり5分も取る辺りはやっぱりマシーンっぽいような(苦笑)。
《総評》
・今季屈指のクソ試合。大槻監督の退任が決まったのでこんな試合になったのか、こんな試合をするから退任になったのか、まあ見方はそれぞれだと思いますが、とにかく酷い試合でした。まあもう優勝どころかACL圏入りもほんの僅か形ばかりの可能性を残しているだけでしたし、今季は降格もないので正真正銘まったく掛け値なしの消化試合ゆえ、どんなにクソ試合であってももはやあんまり悔しくないのも正直なところです。
・ただ勝つ気マンマンで試合に臨んだ大槻監督はさすがにこの試合内容にはおかんむりなご様子で、試合後「局面であれだけ上回られるところがあるとゲーム自体は非常に難しくなりますし、そういったことを90分感じながら試合が過ぎていった、というところがあります。残念なゲームでした」「今日の場合は開始直後から球際を含めて、もう少しやらなければいけない場面が多かった部分があったゲームだったと思っています。その部分で言うと、今日は最初のところから、入りから表現できなかったゲームだったと思っています。」と怒りを露わにしていました。
・「4-4-2同士ならそこそこ闘える伝説」は、必然的に至るところで発生する1対1でことごとく負けるという形で脆くも崩壊。まぁ、これはどう見てもACL圏入りが超現実的な目標として残っている鹿島と、もはや目標がないことに加えて監督の退任も決まっている浦和とのモチベーションの差でしょうなぁ、どう考えても。
・大槻監督は「トレーニングの中でこれまで全員が集中してやってきてくれていると思っています。」と感じ、その手ごたえを元に前節と同じスタメンで試合に臨んだのでしょうが、残念ながら選手達は「今更退任が決まった監督にアピールする必要はないし・・・」と言わんばかりのプレーぶり。中には既に次のチームのことで頭が一杯な選手すらいたかもしれません。
・大槻監督はかつて
勝っていても負けていても同点でも、どんなに苦しい状態でも戦いなさい、走りなさい。そうすれば、この埼玉スタジアムは絶対に我々の味方になってくれる。そういう姿勢を見せずして、応援してもらおうと思うのは間違っている。ファン・サポーターのみなさんは、選手たちが戦うところを見に来ているし、浦和レッズのために何かをやってくれるところを見に来ている。埼スタが熱く応援してくれているのは、我々が戦っている証だ、それだけは絶対に忘れてはいけない。
と土田SDが「浦和の責任」というふんわり&ぼんやりとした表現しかできない話を見事にかみ砕いて選手に語りかけた優れたモチベーターだと思いますが、退任が決まってしまうと選手達は現金なもので、監督の言葉は全く響かないようでした。
・なお大槻監督は「結果的に4点差というところは同じですが、ここまでのゲームと今日のゲームは少し中身が違うのかなと思う部分があります。」と感じているようですが、こんなに大量失点が相次ぐチームってそれらを包括的に説明できるメタファクターがあると思いますけどねぇ、どう考えてもフツー・・・
・さすがにこの惨状を受けて大槻監督は次節湘南戦ではスタメンもベンチ入りメンバーも大幅に見直さざるを得ないでしょう。個人的にはこの試合唯一気を吐いていた伊藤のように試合に出る、試合でアピールしたい意欲が残っている選手をバンバン使ってほしいものです。もう結果はどうなっても良いので。
・またもはや残り3試合は興梠が1点取って9年連続二けた得点を記録することくらいしか興味がなくなったので、興梠が中盤まで引いてこざるを得ないレオナルドとの併用は止めて欲しいと思います。幸い次節湘南戦はレオナルドが出場停止でいませんし、湘南相手なら1点は取れるかもしれませんし。
《試合前の定例会見に対する感想》
・ふり返るのも馬鹿らしく、ふり返ってところで何も残りそうにない試合だったので、鹿島戦前の定例会見で感じたことをこの場に書き留めておきます。
・大槻監督は「ACLがあった際にはACLに合わせたような編成をしなければならなかったり、ここ数年、僕も含めてですが、ミシャさんの後に監督が変わることが多かった。そのたびにクラブがオーダーを聞いて選手を補強したりすることがあった中で、編成も含めて少しバランスが悪いところが出てきたと思っています。」とここ数年の浦和の問題点を非常に的確に把握&表現し、それを踏まえて今年のタスクは「都度、やるサッカーが変わっていますから、そのたびにとってくる選手の質が変わってくるようなことがありましたので、3年計画の最初のところでベースに戻すというか、針をしっかりとゼロに近づける作業は必要」だったと語ったのが衝撃的でした。
・「針をしっかりとゼロに近づける作業」を具体的に言うと「サッカーのベースとなる強度や走ることだけではなく、しっかり判断するということをベースの部分で共有するという作業」「選手の目線を揃えてサッカーをするというところ」とのこと。サッカー脳皆無の私にはこれでも表現が抽象的すぎてピンと来ませんが、今後どんなサッカーをやるとしても必要となるベースを1年かけて整えたと理解しています。
・例えて言えば、土田SDが掲げた3年計画のもとで建物を建てる基礎工事を今年一年かけて取り組んでいるものと思っていたら、なんと数年にもわたって吹き荒れたディープインパクトのために溜まりに溜まった瓦礫を撤去して更地にするのに一年かけていただけで、建物の基礎工事はこれからだった!!という話。いわば今年は「3年計画の0年目だった」という衝撃的な告白でした。
・弊ブログ「大槻監督、契約満了決定 ~ 2020年シーズンとは何だったのか」の稿で、「3年計画非実在論」をぶち上げましたが、それはどうやらそんなに的外れではなかったという話でもあったので笑うに笑えず。
・大槻監督は瓦礫の撤去だけでも手一杯なのに、「サッカーのスタイルの目標設定とそれ以外に数字的な定量化された目標が設定されています。その両方を求めるのは難しいところがあると思っていましたが、クラブと話をしながら進めてきました」と過重としか思えない目標をクラブから課されて呻吟していたことも告白。これでは他に監督のなり手なんてあろうはずがなく(特に外国人監督なら即座に席を蹴ってしまうでしょう)、やむなく大槻監督続投のやむなきに至ったのも頷けます。
・大槻監督はこの一年苦労に苦労を重ねてきたことがよく判る記者会見でしたが、それはそれとして出来上がったチームはまたしても大量失点で惨敗。大槻監督が1年かけて瓦礫を撤去し、なんとか更地にはなったかもしれませんが、その更地は軟弱地盤のままなので次の監督も大変でしょうなぁ。その新監督にフロントが「ACL圏入り」みたいな非現実的な目標を課さないことを祈ります。
・また大槻監督はここ数年の浦和のダメっぷりを鮮やかに総括し、それを改善する道筋も(ぼんやりと)見えており、かつ「浦和の責任」とは何かをよく判っている方っぽいので、病気療養中とされる土田SDに代わってそういう立場に就いていただくと嬉しいのですが・・・
---レオナルド-興梠---
汰木--------マル
---青木--長澤---
山中-槙野--デン-橋岡
-----西川-----
(交代)
57分 汰木→武藤
57分 長澤→エヴェルトン
66分 青木→伊藤(故障による交代)
78分 興梠→杉本
78分 マルティノス→宇賀神(宇賀神が右WB、山中が左WB、武藤トップ下の3-5-2)
--エヴェラウド-上田---
土居--------アラーノ
---レオシルバ-三竿---
山本-町田--犬飼-小泉
-----沖------
(得点)
11分 上田
50分 上田
64分 エヴェラウド
81分 レオ・シルバ
(交代)
72分 上田→遠藤
83分 ファン・アラーノ→永木
83分 土居→松村
83分 小泉→広瀬
83分 エヴェラウド→伊藤
※写真は試合とは一切関係がありません