名古屋とは結局ホームゲームに続いてスコアレスドロー。でも前回は内容的に負けに等しかったのに対し今回は若干優勢。天皇杯へ向けての準備的な色彩が強い面子&選手交代だったにも関わらず、手強い相手にこの内容なら収穫大でしょう。
《スタメン》
・浦和は前節清水戦から江坂→ユンカー、大久保→汰木、達也→小泉、敦樹→柴戸、平野→金子、山中→明本とスタメンを一挙6人も入れ替え。このところ出ずっぱりだった敦樹・平野・山中は完全休養、かつ江坂はベンチスタート。さらに故障明けのユンカー、明本、柴戸は揃って試運転と思った以上に、リカはこの試合を「天皇杯準決勝へ向けての準備」と割り切った様子。
・この試合が浦和でのリーグ戦ラストゲームとなる阿部・槙野・宇賀神がベンチ入り。ポジションが被る宇賀神と西が共にベンチスタートなのはかなり不自然でどう見ても功労者への花道を設けた格好。そのあおりで興梠がベンチ外に。
・名古屋のスタメンは前節C大阪戦からシュヴィルツォク→マテウスと一人入れ替えたのみ。しかもシュヴィルツォクはなんとベンチ外。その理由はDAZN解説でもよく判らなかった模様。
・なお名古屋はCH長澤が出場停止な上に、CB丸山、CH米本が故障離脱中。
《試合展開》
・浦和は既にリーグ戦でのACL圏入りの可能性はなく、最終節は完全に消化試合だった一方、名古屋は鹿島の結果次第で4位に滑り込む可能性があってモチベーションを保ちやすい状況でした。
・しかし名古屋も名古屋でさして厚くもない戦力で今年は久しぶりにACLを並行して闘ったせいか終盤にけが人続出&全般にお疲れ気味だったようで、フィッカデンティ監督も試合後「私も含め、選手たちも残ったエネルギーを最後まで使い切る以外の戦い方しか選択肢がないという難しい状態で試合に入りました」と本音を思わずポロリ。そのため浦和にとっては完全な消化試合だったにも関わらず、試合は終始意外に拮抗した面白い展開になりました。
・立ち上がりから浦和が安定的にボールを支配。名古屋は立ち上がりに前プレがハマってチャンスになりかかったのがあったくらいでさほど前からは追って来ず、基本的にリトリート主体で自陣に4-4-2の守備ブロックを敷いてカウンター狙い。
・よって浦和が敵陣でボールを回している時間帯が長くなりましたが、やはり前節清水戦同様シュートが撃てない。特に最初の給水タイムまでは小泉のボールロスト&パスミスが非常に多くてチームの足を引っ張り続けました。ただ浦和がボールを失った後の切り替えが早く、往々にしてボールを敵陣で回収できていたので大過には至らず。
・唯一危なかったのは25分木本が深い位置でのボールを奪ってそのままゴリゴリとドリブルで前進→前田のパスを受けたマテウスがブレにブレまくる無回転シュートを撃った場面。何の脈絡もなく点を取るマテウスらしい場面でしたが、ここは西川が無理にキャッチに行かずに足でセーブ。
・浦和も32分にユンカーが高い位置でボールを奪取して中央へ折り返した(でも小泉がシュートを撃てず)のを契機に右サイドからクロスが入り始め、序盤インケツだった小泉もようやく稼働し始めたところで前半終了。
・ところがリカはなんと後半頭からユンカー→宇賀神、明本→江坂と2枚替え。共に怪我明けなので無理させず試運転終了という意図なのは明々白々で、試合後リカも「リスクを冒さずケガなく試合を終わらせる、そういったところを想定してこの試合に臨みました」と明言。でもユンカーは45分しか使えないのが判っているのに興梠ベンチ外とはハナから勝負度外視と言われても仕方ないような・・・
・ユンカーはともかく、前からハメる上で非常に良く効いていた明本を下げたのが良くなかったのか、後半に入ると浦和は思うようにボールを握れなくなってしまいました。それ以上に名古屋が57分前田に代えて山崎を投入し、さらに木本をCBに下げて3バック(3-3-3-1?)にシステムを変更したのが効いたのかも。
・試合後のフィッカデンティ監督の弁によれば「ピッチの中央の部分で相手に主導権を握られているところもあり、そこをまずしっかり守る」「両サイドバックもですし、両インサイドハーフにも攻撃的な選手をその位置に配置して、真ん中から行けないのであれば外から行く」というのが布陣変更の狙いなんだとか。
・しかし、試合のペースを名古屋に奪われかかっても特に決定機は与えず、それどころか66分浦和にビッグチャンス!!汰木が左サイドからアーリークロス→関根が吉田の背後を取ってGKと一対一に。胸トラップまでは完璧でしたがボレーシュートを高々と打ち上げてしまってゴールならず。
・69分名古屋はマテウス→森下、相馬→シャビエルの2枚替え。その直後に浦和は左サイドでのボールロストを契機にショートカウンターを浴び、シャビエルのシュートでヒヤリ。なおシャビエルも今季限りで名古屋との契約満了が決まっており、こちらも餞コース。
・71分汰木CK→酒井ヘッドが豪快に決まってついに浦和先制!!と思われましたが、VARとの交信の結果オフサイドポジションにいた小泉がGKの視界を遮っていたと見做されたのか、まさかのノーゴールに。酒井のゴールっていつもVARが付きまとうような・・・
・続く74分酒井の縦ポンで裏抜けに成功した江坂がGKを交わしたところまでは良かったのですが、既に角度がなくてシュートは枠外。
・やや浦和優勢になったところでリカは80分に槙野&阿部を投入。「宇賀神、槙野、阿部に関してですけど、この試合に関しては彼らが今までやってきてくれたこと、貢献してきてくれた選手たちに対して、ピッチで3人一緒に立って戦ってもらう、そういったところをみなさんに見てもらいたかったです。」ともう浪花節全開の選手交代。最終節が完全無欠の消化試合になったのをこんな形で前向きに昇華させるとは!!
・87分汰木CKからの流れでショルツのシュートが決まったものの、これは明らかに小泉がオフサイド。さらに終了間際に敵陣深い位置での槙野のボール奪取など見せ場は作ったものの決定機には至らず、スコアレスドローで試合終了。
《総評》
・完膚なきまでの消化試合と化した最終節を、唯一残った目標である天皇杯へ向けての準備に充てるのは至極当然。その辺の割り切りは天皇杯奪還に成功したオリヴェイラ監督に相通じるものがあります。もっともオリヴェイラ監督はリーグ戦を丸々捨てて天皇杯へ全力投球で、その後浦和はより一層泥沼の深みに嵌まる羽目になりましたが(苦笑)。
・そして疲労が目立った山中・敦樹・平野を休ませ、故障明けのユンカー&明本を時間限定で試運転し、面子はベストにほど遠い状態だったにも関わらず手強い相手にやや優勢な内容でのスコアレスドローと「天皇杯へ向けての準備試合」としてはほぼ満点といってもいいくらい。おまけに消化試合であることを良いことに功労者の出番を設けてファン・サポーターも大満足。
・あえて難を挙げれば「今日の試合で最も休ませないといけないのは酒井じゃないのか?」という点。悪いことに最後は微妙に足を痛めてた様子でしたし。
・これで浦和はリーグ戦6位でフィニッシュ。残念ながら今年の目標だった「リーグ戦でのACL圏入り」はなりませんでしたが、そもそも事実上チーム再建初年であることを考えればその目標自体が高すぎ。開幕時にその目標が現実味を帯びるなんて考えた方はほとんどいないと思います。せいぜいトップハーフ入りが現実的な目標。それどころか鳥栖に不覚を喫し、横浜Mや川崎にボロ負けした頃には「J1残留で御の字」と思った方が大半ではなかったでしょうか。
・ところが資金も戦力も潤沢とは言い難いい徳島をJ2優勝に導いたリカの手腕は伊達ではなく、それ以上に西野TDがJ2から拾い集めた新戦力がハマリにハマり、さらに金をかけるべきところでは金をかけて戦力を刷新したのが見事に奏功。6位フィニッシュは当初予想の最上限レベルで、ルヴァン杯ベスト4、さらに天皇杯も準決勝進出という結果を合わせて考えれば今季は万々歳だと思います。
・今季の浦和は得点・失点ともリーグ8位。アプローチは正反対ですが、結果は「ウノゼロの権化」フィッカデンティ監督の名古屋と同じ感じに。リカはボールを大事にしますが、ミシャと違って全然攻撃的じゃなくて基本的に攻撃で無理はしませんし、むしろボールを失った後の奪回に力を割いている様子。この試合もそんな感じで、それゆえ「失点は少ないが得点も少ない」という判りやすい結果に。
・「前からガツンを当たってピッチにカオスが生じたら、あとはサイコロの言う通り・・・」みたいな昨年のサッカーとは真逆のロジカルな緻密なサッカーが持ち味で、それをピッチ上に具現化するところまではリカは成功しましたが、現状では如何せん決定機が少ない上に決定力もない。ユンカー不在のゼロトップ時にそれが顕著でした。
・この試合でも絶好機で関根が宇宙開発。後半のゼロトップ化はそこそこ奏功していましたが、やっぱり最後は浦和2列目のあんまりな得点力の無さに泣いた格好に。強い相手にはほんのちょっとしかない決定機を決めないと勝てません。来年目標をリーグ優勝とするならこの辺の補強が最優先でしょう。
《選手評等》
・岩波からバシバシ縦パスが入るようになるとは、ショルツが来るまでの惨状からすれば破格の進歩。今季一番成長したのは柴戸と思いますが、後半だけ取ってみれば岩波かも。次点が大久保。
・小泉はボコボコにやられた神戸戦から深い闇へ落ちてしまったかも。興梠も案じていましたが、相手の当たりを怖がって無難なプレーに終始するようになると本当に選手として終わってしまいます。今日も序盤はミス連発でしたが、ボールを受けようという姿勢があるだけまだマシなのかも。
・金子ってBox to BOXっぽい動きが一番持ち味が出る様子。それでも敦樹の下位互換でしかなさげですが、今年の新戦力で唯一ハズレっぽい立ち位置から来年はどこまで持ち直せるかな?
・村上主審はこの試合で国内のトップリーグから勇退。試合後はともかく、試合前から主審へセレモニーなんて浦和がやった日には清水あたりから「コウヘイセイガー!!」とか公式にクレームを付けてくるような予感しかしませんが・・・
・そして残念ながら前半は判定がプレまくり。罵声の中でピッチを後にする予感しかしませんでしたが、後半はラフプレーの柿谷にちゃんとイエローを出すなどそんなに変な笛もなく、VARでの得点取り消しも(意見が分かれそうですが)不当とはいえず、無事試合終了。
・でも同じく今年限りとなった家本主審が判定について選手とめっちゃコミュニケーションをとり、傍目には疑問に思えても選手は渋々納得してた風だったのに対し、村上主審はそこまで選手に信頼されてなかったと思うけどなあ・・・単にキャリアが長いだけで。でもお疲れさまでした。
-----ユンカー-----
汰木---小泉---関根
---柴戸--金子---
明本-ショルツ--岩波-酒井
-----西川-----
(交代)
HT ユンカー→江坂
HT 明本→宇賀神
80分 岩波→槙野
80分 柴戸→阿部
90+1分 関根→西
-----前田-----
相馬---柿谷---マテウス
---木本--稲垣---
吉田-ミンテ---中谷-宮原
-----ランゲラック----
(交代)
57分 前田→山﨑
69分 マテウス→森下
69分 相馬→シャビエル(柿谷が左SH、シャビエルがトップ下へ)
84分 柿谷→齋藤
84分 宮原→藤井
※写真は試合と全く関係ありません。