川崎が強くて負けたのではなく、大ベテランの二度のミスが引き金となって負けたというのが腹立たしいのなんの。
《スタメン》
浦和は第1戦から長沼・マリウス・松本以外のスタメン8名を入れ替え。
第1戦はリーグ戦新潟戦から中二日であり、かつそもそも「スタメン固定」が災いしてレギュラー組が著しく消耗しているので大胆なターンオーバーを施し、第2戦は「いつものスタメン」に戻して勝負に出るのはルヴァン杯に臨む前からのスコルジャの算段通りでしょう。少なくとも第2戦を普段のベンチ組や浦和に復帰したばかりの藤原のテストの場にする気はさらさら無かったようです。
なお第1戦でマルシーニョと交錯して傷んで前半途中で交代を余儀なくされただマリウスが何事もなかったかのようにスタメン復帰したのが朗報だった一方、グスタフソンはなぜか第1戦に続いてベンチ外。試合後の監督会見によれば「メディカル的な理由から」で欠場とのこと。
また待望の新戦力CFイサクがベンチ入りしたためか、サンタナはあっさりベンチ外に。
一方川崎は神田→エリソン、宮城→伊藤、ジェジエウ→ファンウェルメスケルケン、橘田→山本とスタメン4名入れ替え。

《試合展開》
第1戦とは対照的に川崎の前プレはきつくて、浦和はグスタフソン不在が祟ってビルドアップに苦労してロングボール攻撃に活路を見出すだけ。だが浦和の前プレもそれなりに効いているのか川崎もロングボールを多用しがちで、どちらも何事も起こせそうにないまま序盤は徒過。
しかし15分西川の横パスがずれたのが祟って、ボザがボックス内まで突入してプレスをかけに来た脇坂を交わしきれずにPK献上。18分エリソンがPKを決めて川崎先制。
これでゲームの流れは一気に川崎に傾き、20分エリソンが右サイドで長沼に競り勝ってそのままシュートまで持って行くもわずかに外。浦和は全く何もできず、33分安居ロングスローをあっさり弾き返され、そこからマルシーニョ単騎によるロングカウンターを食らうコントみたいな一幕も。
ただなんだかんだと川崎の前プレ強度が落ちてきたためか、その直後くらいから浦和がボールを支配して川崎を自陣に押し込む時間帯が増え始め、45+4分にはサヴィオ浮き玉縦パス→ボックス内で松尾ヘッドの良い形も。
そこで浦和は後半頭からサヴィオ→中島、松本→柴戸といきなり2枚替え。サヴィオを早めに下げたのは試合後会見では「少し体調不良があった」とのこと。そしてこの交代は結構効いて川崎を自陣に押し込み続けましたが、55分中島ミドルが惜しかったくらいで、攻めきれずに川崎DF陣に簡単に弾き返されてしまう、可能性が感じられないハイクロスで終わってしまう場面が目立ちました。
川崎は58分マルシーニョに代えて宮城を投入したのに対し、浦和は依然攻めれずに60分にはカウンターからエリソンの一発を食らいかかってヒヤリ。さらに71分好位置からの脇坂FKがポスト直撃と川崎が再び試合のペースを掴みかかったように見えたところで、浦和は72分松尾→イサク、長沼→荻原と2枚替え。
そしてその直後の74分金子の左足でのクロスをファーでイサクがCBウレモヴィッチの前に長い足を伸ばして押し込み、ファーストタッチでいきなりゴール!!
小森&イサクの2トップはかなり効く!!と思ったのですが、80分になぜか小森に代えて関根を投入し、4-2-3-1へ逆戻り。試合後会見によると「2トップはできるだけ長くやろうと思っていましたが、前半から素晴らしい闘いを見せてくれていた(小森)飛絢の疲労が見え始めていました」とのこと。しかもこの交代からどういうわけかシンプルにイサクにクロスを入れる回数がトンと減ってしまい、なぜかイサクの使い方に迷ったような流れになる始末。
しかも悪いことに83分後半途中投入の大関と柴戸が競り合った際に柴戸が傷み、柴戸はその後プレーを続けましたが、やはり無理があったのか88分寄せ切れずにバイタルエリアから伊藤に豪快な一発を食らってしまいました。この場面試合後会見では柴戸だけでなく、安居も少し体力的に問題を抱えるようになってしまったとのこと。
この一発で万事休すと思われましたが、90分中島が直接FKを決めて試合は延長戦へ。
延長に入って柴戸は脳震盪の疑いで代えざるを得なくなりましたが、代わって投入されたのはなんと大久保で関根がCHへ。この交代はやはり無理があって、93分大関のボックス内突入から決定機を作られてしまいましたが、幸いにもシュートはバーの上。
しかし94分西川が相手の前プレを交わしきれずにボールを失ったことを契機に、関根がボックス内で伊藤の足を掃った格好になってPK。96分宮城がPKを決めて再び川崎リード。
浦和は100分金子に代えて早川を投入。延長後半は早々とボザを最前線へ上げてパワープレーを仕掛け、次々と守備的な選手を入れて5-4-1で守る川崎相手に116分右サイドから関根クロス→ファーで荻原ヘッドで折り返して大久保ボレーシュート、120分中島ボックス右隅からふんわりクロス→ファーで関根ヘッドと一応見せ場は作りましたが、さすがにこの日3度目の同点ゴールは生まれずに試合終了。
《総評》
ほぼ「いつものスタメン」で始まったにも関わらず、後半「代えれば代えるほど悪くなる」という今季お決まりのコースには嵌らずに2度同点に追いついて延長戦にもつれこませたのですから内容はそんなに悪くはなく、むしろ残り少ないリーグ戦に向けて好材料が結構あったと評価しても良いくらい。
しかしカップ戦なので内容が良かろうが悪かろうが負けたら終わり。しかも相手が強くてどうにもならなかった、相手が一枚も二枚も上手だったという負けではなく、大ベテランのミスが引き金となって負けたというのが腹立たしいのなんの。
試合後会見で「シンプルなミス」「ひどいミス」とスコルジャには珍しく敗因を選手になすりつけるような言い回しを連発していますから、西川のミスには相当怒っているのでしょうなぁ・・・しかも最初のPKはボザもやや軽率な気がしますが、2度目のPKはほぼ西川の責任。
西川はビルドアップに難があり、また守備範囲の狭さも再三指摘されながらもロングフィードの精度や時折見せるスーパーセーブを評価されて長年浦和の正GKであり続けましたが、とうとう西川を使うデメリットのほうが大きくなってきたような気がしてなりません。
試合後会見のニュアンスからすれば次の試合からGKは牲川に代わってもなんら不思議はありませんが、スコルジャが依然西川を使い続けるのなら牲川へのスコルジャの評価は非常に低く、正GK交代は来季加入の佐藤(筑波大在学中)まで先送りされることになるのでしょう。
西川の残念さ以外に敗因を求めるとすれば、やはりレギュラー組の疲弊でしょう。グスタフソンはそもそもベンチにも入れられず、サヴィオは前半限りで諦めざるを得なくなり、小森や安居の疲労も顕著だった様子。ゆえに2戦目はフレッシュなはずの「いつものスタメン」で臨んだにも関わらず、前半はスコルジャの期待にはほど遠い内容になってしまいました。
この試合の最大の「良かった探し」は中島が第1戦を含めてついに本領を発揮し始めたこと。練習に部分合流したと報じられた渡邊がなかなか戻ってこないのが気がかりですが、中島の活躍により渡邊不在を感じずに済むようになりました。
また柴戸の復調も収穫でしょう。試合後会見だと「柴戸海は本日45分から最長で60分くらいだという想定のもと、後半の大事な時間で起用しようとしました」とのことで、これまで代えが効かずに使い詰めで既に疲労困憊の安居の替え駒として柴戸が活躍してくれることでしょう。それだけにこの試合は脳震盪で交代を余儀なくされたのは残念でした。
さらに新加入のCFイサクがいきなり点を取ったのも収穫。もっとも来たばかりでコンディションは万全には程遠いでしょうし、それ以前に他の選手がイサクの正しい使い方に慣れてなかったような・・・結局高精度のクロスは金子のだけだったからなぁ・・・荻原のワロスには頭を抱えました。
天皇杯も負け、ルヴァン杯も負けて浦和の今季残り試合はとうとうリーグ戦10試合だけに。4年ぶりに浦和に戻ってきた藤原をテストする機会が潰えたと思われるのが残念でなりません。
《選手評等》
・ルヴァン杯にアウェーゴール制があった時代なら浦和が勝ち抜けでしたが、残念ながら2023年大会からアウェーゴール制は廃止されたので延長戦に突入しての敗戦。2006年ルヴァン杯にアウェーゴール制が導入され、最初にアウェーゴール制が適用されて敗退したのが浦和で、その時の相手も川崎だったというのがいやはやなんとも・・・もっとも今回は「アウェーゴール制廃止」が初めて適用された訳ではありませんが。
・脳震盪で柴戸の交代を余儀なくされた際、代わって投入されたのは早川ではなく大久保で、関根をCHにした件については案の定試合後記者に突っ込まれていました。スコルジャは「タカの経験を考慮してのことでした。難しい試合でしたので、隼平にとって少し難しい部分があるのかなと思ってのことです。そして決定的な時間帯でしたが、隼平よりタカのほうが、ゲーム勘があると判断しました。」と答えていましたが、関根はCHとしても経験なんて無いも同然じゃないかなぁ・・・そして最後に投入された早川が後方からのボール配球役としてそれなりに仕事をしていたのを見ると、この交代も敗因の一つに上げられても仕方ないかと。
・松本を前に出して4-1-4-1気味にするのが松本の正しい使い方と思いますが、そのアンカーが出来るのが柴戸だけなんでしょうなぁ。松本を安居やグスタフソンと組み合わせて2CHの一角で使うのはめっちゃ気の毒。そしていつも真っ先に代えられる。
・民放のバラエティー番組でしか通用しそうにない鄭大世のテキトーな解説としゃべりすぎる上に薄っぺらいフレーズを連発する実況にはホトホト参りました。しかも120分も!!
-----小森-----
松尾---サヴィオ---金子
---安居--松本---
長沼-マリウス--ボザ-石原
-----西川-----
(得点)
74分 イサーク
90分 中島
(交代)
HT サヴィオ→中島
HT 松本→柴戸
72分 松尾→イサーク(小森&イサク2トップの4-4-2へ)
72分 長沼→荻原
80分 小森→関根(関根左SH、中島トップ下の4-2-3-1へ)
延長前 柴戸→大久保(大久保左SH、関根CHへ)
100分 金子→早川(早川CHへ、関根右SHへ)
-----エリソン-----
マルシ-ニョ--脇坂---宮城
---山本--河原---
三浦-佐々木-ウレモヴ-ファン
-----山口-----
(得点)
18分 エリソン(PK)
88分 伊藤
96分 宮城(PK)
(交代)
58分 マルシーニョ→宮城
75分 エリソン→ロマニッチ
75分 脇坂→大関
85分 河原→橘田
延長後 伊藤→田邉
107分 宮城→神橋
119分 大関→小林